4 / 44
第4話
しおりを挟む「彩花ちゃん起きて。もう朝だよ」
「んん…」
誰…
落ち着く声…
「おはよう。よく眠れたみたいだね」
カーテンを開けられて、眩しくて目が開けられない。
「まだ寝る…」
「もう起きないといけない時間だよ。それより、昨日俺より先に寝てたの知ってた?」
誰かがずっと私に話しかけてる。夢…
「知らない…ん、…」
私の抱き枕どこ…?あ、あった。
「ふふ、まだ寝ぼけてるの?それとも起きたばっかりだと甘えん坊になっちゃうの?」
なんかいつもと違う…なんか硬い…
「んん、っん~、ん?え、み、湊さん!?どうしてここに」
どうして湊さんに抱きついてるの?
「ふふ、彩花ちゃんがそんなに甘えん坊だって知らなかったな~」
「す、すみません抱き枕だと思って…!」
ちょっと待って、何がどうなってこうなった?頭が回らない。
えっと、昨日、湊さんと一緒に寝て…あ、そっか。
ここは私の部屋じゃないんだ。そして、昨日のことも夢じゃなかったんだ。
「さ、朝ごはん食べよ」
「朝ごはん…?っ、ごめんなさい、私、ご飯用意するのすっかり忘れてて、作ってなくて…今からすぐ用意するので、少し待っていてもらえますか、、」
昨日のことで気が動転して、アラームもセットし忘れて、起こしてもらうまでぐっすり寝てた。何やってるんだ。
私としたことが、どうしよう、怒られ…
「大丈夫だよ。もう俺が作ったから」
「湊さんが、朝ごはんを…?」
怒るどころか私の分まで朝ごはんを作ってくれた…?
「簡単なものだから申し訳ないけど」
怒るどころか謝るなんて。ただでさえ、昨日目覚めたばっかりでしんどいはずだから、私が…私がしっかりしないといけないのに。
「そ、そんな、ありがとうございます」
「朝ごはん作ったぐらいで大袈裟だよ」
なんて言って笑ってくれるから、実感する。湊さんは湊さんじゃないんだって。
この優しさに甘えてしまうと、湊さんが元に戻った時きっと耐えられなくなってしまうから。
「…ごめんなさい、」
「え?何が?」
「朝ごはんを作るのは私の仕事なのに、湊さんにさせてしまって、」
「いいってば。そんなの、できる方がすればいいんだから。さ、そんな顔しないで。顔洗っておいで」
できる方が…か、
前の湊さんは、家事全般私の仕事だと思っていた。もちろん、私もそれは私に与えられた役割だと思って、私なりに努力した。
熱が出ようが、どうしても外せない用事が出来た時も、湊さんは一度だって…
「酷い顔、」
鏡に映った私の顔はあまりにも酷かった。昔のことを思い出すだけでこんな顔になるなんて。
大丈夫…今の湊さんはそんな人じゃない。
10
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。

誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。

騎士の妻ではいられない
Rj
恋愛
騎士の娘として育ったリンダは騎士とは結婚しないと決めていた。しかし幼馴染みで騎士のイーサンと結婚したリンダ。結婚した日に新郎は非常召集され、新婦のリンダは結婚を祝う宴に一人残された。二年目の結婚記念日に戻らない夫を待つリンダはもう騎士の妻ではいられないと心を決める。
全23話。
2024/1/29 全体的な加筆修正をしました。話の内容に変わりはありません。
イーサンが主人公の続編『騎士の妻でいてほしい 』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/96163257/36727666)があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる