運命の糸の先に

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第19話

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「いや、梨華はちゃんと女だから。昨日の見て肝が冷えた」

 瑞稀が真剣な表情で言う。

 別に言い直さなくてもいいのに。というか、肝冷えるようなシーンあったか?

「え、そう?ちなみにどこら辺で?」

 私は興味津々で尋ねる。

 私は、結構楽勝で倒せると思ってたんだけどなぁ。

「腕掴まれた時、反撃できなかっただろ」

 あぁ。
 あれはわざと、

「顔が近づいてきた時に、頭突きしてやろうかと思ってたから」

 私は冗談交じりに笑ってみせた。

 まぁ、本気だったけど。

「はぁ?あー、逆に安心だわ」

 瑞稀が笑いながら答えた。

「何よそれ、てかちゃんと私の事女だと思ってくれてたんだ」

 さっきは一応女~とか言ってたくせに。

「当たり前だろ。...逆にお前は俺の事なんて思ってるわけ?」

 なんて…。
 なんてって言われても難しいけど。

「んー、どちらかと言うと男?かな」

 女ではないし?
 男!でもないんだよなぁ。

 言うなれば、どちらかと言うと男だ。うん。

「あっそ...口にジャムつけてるやつにそんな事言われても別になんとも思わねぇよ」

 瑞稀が笑いながら言う。

「え、嘘!どこどこ」

 私は慌てて口元を拭く。

 どこについてるのよ。子供みたいで恥ずかしいじゃない。

 なんかものすっごく笑ってるんだけど、まさか...

「嘘ついたの、」
「ちげーよ。ほら、ここ」

 そう言って唇についていたジャムをとって

「な、なめ、舐めた」

 うまっ。なんて呑気なこと言って。
 人の気も知らな…いやいや。

 私の気ってなんだよ。別になんとも思ってないし。

「何驚いてんの。まさか、どちらかと言うと男の俺にときめいたとか?」

 私は一瞬、言葉を失った。

 瑞稀の言葉が頭の中で何度も反響する。

 ときめく…、


 ときめく……


 私が、瑞稀にときめく…?


「え、冗談のつもりだったんだけど、まさか、」

「おかしい」

 そんなのおかしい。

 瑞稀の顔を見ているだけで、心臓がバクバクしている。
  
 こんなことは今まで一度もなかったのに。

「は?何が?」

 瑞稀が不思議そうに尋ねる。

「これじゃあ、まるで…私が瑞稀のこと意識してるみたいじゃん!」

「何言って…お前、顔赤いぞ」

 瑞稀が指摘する。

「どうしよう、ドキドキしてる」

 私は自分の胸に手を当てて、心臓の鼓動を感じる。
  
「いや、知らねーよ」

 まぁ、そうなりますよね。

「ねぇ、なんでドキドキしてるのかな。今までこんなことなかったのに!」

 更年期か…?

 もうそんな歳か?

 20代後半って動悸がするようになるのか?

「知らねーって。もしかしたら、俺の事好きなんじゃないの」

 瑞稀が冗談めかして言う。

「好き…?」


 この気持ちが、瑞稀のことを好きっていうことなんだとしたら…。
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