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第10話
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「ひーん、月曜日だ」
あれから、結局何も聞き出せず二日が過ぎた。
瑞稀の言葉が頭の中でぐるぐると回り続けている。
何を隠しているのか、どうして話してくれないのか。
今もまだ何も分かっていない。
「朝から変な声出すなよ」
瑞稀の声が聞こえてきて、私は少しだけ笑顔を浮かべた。
彼の無邪気な言葉に少しだけ救われる気がした。
「休日はあっという間なのに…。仕事に行きたくないなぁ」
私はため息をつきながら、朝食の準備を始めた。瑞稀はそんな私を見て、心配そうな顔をしている。
「なんでだよ、前まで楽しいって言ってたのに」
「いや、そういう訳じゃないんだけど」
そうか、瑞稀は出勤の恐ろしさを知らないんだった。
「もしかして、誰かに虐められてるのか?」
彼の心配そうな顔を見て、自分の疲れが顔に出ていたことに気づいて恥ずかしくなった。
まさか、そんな心配されるなんて。
虐められたぐらいで会社に行きたくないなんて、私、そんなにか弱くないのに。
「違う違う、ただ単純に疲れただけ」
私は笑顔を作りながら答えた。
「休み取れよ」
瑞稀の真剣な表情に、私は少しだけ驚いた。
「心配症なのは今も昔も変わらないね」
私は軽く笑いながら言ったけど、瑞稀の心配が嬉しくて、胸が温かくなった。
「梨華だからだよ」
瑞稀の言葉に、私は一瞬固まった。
彼の視線が私を捉えたまま、何かを言いたそうにしているのが分かった。
「え?」
私は思わず聞き返した。
「いや、なんでもない」
瑞稀はすぐに視線をそらし、口を閉ざしてしまった。
無理に聞き出すのはやめた。どうせ教えてくれないし。
「幼なじみだから心配してくれてるだよね、ありがとう」
私は微笑みながら言った。
「そういう事じゃねーよ」
じゃあどういう事よ、
「照れなくていいのにぃ」
「別に照れてないし、それより時間大丈夫か?」
瑞稀の言葉に、私は時計を見てハッとした。
いつもならこの時間の五分前には家を出ているのに、今日は話に夢中になってしまっていた。
「だめだめ!遅刻しちゃう!もう行かないと…!」
私は急いでバッグを掴み、玄関に向かった。
「気をつけろよ」
「はーい!」
始業時刻の三分前、何とか間に合った。
トイレに行く途中、会議室を通ったんだけど、怒鳴り声が聞こえてきた。
私は一瞬立ち止まり、何が起こっているのか気になって覗いてみた。
そこには、上司に怒られている先輩の姿があった。
お前は声が小さいんだとか、もっとシャキッとしろだとか。
上司の言葉が耳に入るたびに、私は胸が痛くなった。
言い方ってもんがあるでしょうに。
先輩はただ黙って頭を下げているだけで、反論することもできない様子だった。
しまいには服がダサいだの、笑顔が気持ち悪いだの…
もうそれはただの悪口じゃん…
その言葉を聞いた瞬間、私は我慢できなくなっ
た。
先輩の表情がどんどん暗くなっていくのを見て、私は心の中で怒りが沸き上がってきた。
これ以上、聞いていられなかったから口を出してしまった。
私は一歩前に出て、上司に向かって声を上げた。
「さすがにそれは言い過ぎです!先輩は一生懸命やっているのに、そんな言い方はないと思います!」
余計なことをしてしまったか…だけも、もう止められなかった。
先輩のために、そして自分のためにも、ここで黙っているわけにはいかなかった。
あれから、結局何も聞き出せず二日が過ぎた。
瑞稀の言葉が頭の中でぐるぐると回り続けている。
何を隠しているのか、どうして話してくれないのか。
今もまだ何も分かっていない。
「朝から変な声出すなよ」
瑞稀の声が聞こえてきて、私は少しだけ笑顔を浮かべた。
彼の無邪気な言葉に少しだけ救われる気がした。
「休日はあっという間なのに…。仕事に行きたくないなぁ」
私はため息をつきながら、朝食の準備を始めた。瑞稀はそんな私を見て、心配そうな顔をしている。
「なんでだよ、前まで楽しいって言ってたのに」
「いや、そういう訳じゃないんだけど」
そうか、瑞稀は出勤の恐ろしさを知らないんだった。
「もしかして、誰かに虐められてるのか?」
彼の心配そうな顔を見て、自分の疲れが顔に出ていたことに気づいて恥ずかしくなった。
まさか、そんな心配されるなんて。
虐められたぐらいで会社に行きたくないなんて、私、そんなにか弱くないのに。
「違う違う、ただ単純に疲れただけ」
私は笑顔を作りながら答えた。
「休み取れよ」
瑞稀の真剣な表情に、私は少しだけ驚いた。
「心配症なのは今も昔も変わらないね」
私は軽く笑いながら言ったけど、瑞稀の心配が嬉しくて、胸が温かくなった。
「梨華だからだよ」
瑞稀の言葉に、私は一瞬固まった。
彼の視線が私を捉えたまま、何かを言いたそうにしているのが分かった。
「え?」
私は思わず聞き返した。
「いや、なんでもない」
瑞稀はすぐに視線をそらし、口を閉ざしてしまった。
無理に聞き出すのはやめた。どうせ教えてくれないし。
「幼なじみだから心配してくれてるだよね、ありがとう」
私は微笑みながら言った。
「そういう事じゃねーよ」
じゃあどういう事よ、
「照れなくていいのにぃ」
「別に照れてないし、それより時間大丈夫か?」
瑞稀の言葉に、私は時計を見てハッとした。
いつもならこの時間の五分前には家を出ているのに、今日は話に夢中になってしまっていた。
「だめだめ!遅刻しちゃう!もう行かないと…!」
私は急いでバッグを掴み、玄関に向かった。
「気をつけろよ」
「はーい!」
始業時刻の三分前、何とか間に合った。
トイレに行く途中、会議室を通ったんだけど、怒鳴り声が聞こえてきた。
私は一瞬立ち止まり、何が起こっているのか気になって覗いてみた。
そこには、上司に怒られている先輩の姿があった。
お前は声が小さいんだとか、もっとシャキッとしろだとか。
上司の言葉が耳に入るたびに、私は胸が痛くなった。
言い方ってもんがあるでしょうに。
先輩はただ黙って頭を下げているだけで、反論することもできない様子だった。
しまいには服がダサいだの、笑顔が気持ち悪いだの…
もうそれはただの悪口じゃん…
その言葉を聞いた瞬間、私は我慢できなくなっ
た。
先輩の表情がどんどん暗くなっていくのを見て、私は心の中で怒りが沸き上がってきた。
これ以上、聞いていられなかったから口を出してしまった。
私は一歩前に出て、上司に向かって声を上げた。
「さすがにそれは言い過ぎです!先輩は一生懸命やっているのに、そんな言い方はないと思います!」
余計なことをしてしまったか…だけも、もう止められなかった。
先輩のために、そして自分のためにも、ここで黙っているわけにはいかなかった。
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