私の大好きな彼氏はみんなに優しい

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第82話

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「いや、何も無いならいいんだけど、」

 言いたい。けど、言えない。

 私の心の中で、真実を伝えるべきか、それとも黙っているべきか、答えが見つからないまま、時間だけが過ぎていく。

 柊先輩が心配してくれるのは嬉しいけれど、それでも真実を告げる勇気が出ない。

「もしかして、あの男の人がまた現れた、とか…?」

 沙紀先輩は心配そうな顔をしていた。
 けど、その表情にどこか違和感を感じる。


 ___次はもっと強く出て、彼女を本気で怖がらせるのよ。

 あんなことを言っておきながら、心配するふり…?

 そうだったんだ。
 いつも、そんな顔をして、私のことを騙して…

 いや、あの質問をするまでは、まだ希望はあるかもしれない。

 心の中で微かな希望を抱えながらも、その希望が崩れ去る恐れに怯える。

「え、そうなの?」

 柊先輩が驚いた表情で問いかけてくる。

 私の胸が早く鼓動する。

 彼の目を見ると、彼が本当に心配してくれていることが伝わってくる。

 だけど、先輩の心配が私の心に重くのしかかる。

「違います。そんなんじゃないです。ほんとに、何も無いので気にしないでください」

 私は急いで答えた。

 心の中で不安が渦巻くのを、必死で抑え込もうとする。

 だけど、その不安が完全に消えることはない。

「そっか、」

 先輩が少しホッとした表情を見せる。

「それより…聞きたいことがあるんですけど」

 聞くのが怖い。
 だけど、真実を知らない方がもっと怖いから。

 心の中で覚悟を決める。

 この答えを聞いたら、もう言い逃れはできない。

「何?」

 先輩が優しく答える。

 その声に、少しだけ勇気をもらう。

「昨日、二人で一緒に帰ったんですよね?」

 私は心を落ち着かせるために深呼吸をしながら尋ねた。

「え?」

 先輩が驚いた表情を見せる。
 その反応に、私の胸がドキドキする。

 お願い…。

「ちゃんと二人で帰りましたよね」

 私はもう一度確認するように問いかける。

 その答えが私にとっては重要だった。

 お願いだから、そうだって言って。

「その…」

 先輩が答えるまでの瞬間が長く感じられる。

 彼の答えがどんなものであっても、私の心に影響を与えるんだと思う。

 心の中では既に沙紀先輩を疑っている自分がいる。

 真実を知るために、私は先輩の答えを待ち続ける。

「怒られると思って言わなかったんだけど、実は…昨日、一緒に帰らなかったんだ」

 先輩の言葉が私の耳に届く。

 その瞬間、私の胸が鋭く痛んだ。

 やっぱり沙紀先輩だったという事実が、頭の中で何度も反響する。

 心の中で、沙紀先輩への信頼が音を立てて崩れていく。

 沙紀先輩への疑念が一気に現実となって襲いかかる。

 彼女があの男に命令していたということが、今確信に変わった。


 信じたくない、その現実から目を背けたくても、もう逃げることはできない。




 見たもの、聞いたことすべてが真実だったんだ。
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