私の大好きな彼氏はみんなに優しい

hayama_25

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第77話

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 先輩が電話を切った後、私は意を決して先輩に問い詰めることにした。

 心臓がドキドキと速く打ち、手が少し震える。

 何かを知りたいという思いと、その答えが怖いという不安が混じり合う。

「沙紀先輩。今の話、どういうことですか?」

 震える声で尋ねた。

 沙紀先輩は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷静を取り戻し、微笑んだ。

 初めてだった。
 沙紀先輩の笑顔が怖いと思ったのは。

「心桜ちゃんいたの?全然気づかなかったよ」

 沙紀先輩の声は穏やかだったが、その裏に何かを隠しているように感じた。

「答えてください。誰と電話してたんですか」

 どうか、どうか私の勘違いであって欲しかった。

「これは文化祭の劇の練習だよ。ちょっとリアルに演じてみたの」

 沙紀先輩は笑顔で答えた。

 疑念は完全には消えなかった。

「劇の練習…?」

 劇の練習だと言われても、何か引っかかるものがあった。

「うん。あ、台本を見せてあげる」

 先輩はバッグから台本を取り出し、私に見せた。

 私は台本を手に取り、確認した。

 確かに先ほどのセリフが書かれていた。
 一言一句正確に。

「ごめんなさい、先輩。勘違いしてしまって…」

 ほんとに良かった。
 私の早とちりだったみたいだ。

 そう思いながらも、心の奥底にはまだ何か引っかかるものが残っていた。

「いいよ。気にしないで」

 沙紀先輩は優しく微笑んだ。

 心にはまだ疑念が残っていた。

 沙紀先輩の言葉が本当に劇の練習だったのか、それとも何か裏があるのか。

 台本を見せてもらったけど、あまりに境遇が私と似ていたせいか、すぐに納得出来なかった。

「ところで、どうして一人でいるんですか?」

 私はもう一つの疑問をぶつけた。

 その問いかけに、沙紀先輩は一瞬戸惑った表情を見せた。

「どうしてって、私が友達いないの知ってるでしょ?」

 誤解を招くような言い方をしてしまったみたいだ。

「私が言いたいのは、どうして一人で帰ろうとしてるのかってことです」

 柊先輩は一体どこにいるの?

「友達いないんだから、一緒に帰る人もいないじゃん」

 一緒に帰る人がいない?

「え?柊先輩は?」

 私は疑問を抱いたまま問いかけた。

「柊…?」

 沙紀先輩は驚いた表情を見せた。

 その反応に、私はますます疑念が深まった。

「いつも柊先輩と一緒に帰ってるんですよね」

 あの時、そう約束したのに。

 柊先輩が沙紀先輩を蔑ろにするなんてありえないのに。

「…あなたが取ったんじゃない」

 沙紀先輩は険しい表情で言った。

「え?」

 今、なんて。

 その言葉に、心がざわつく。


「あなたが私から柊を奪ったんじゃない…!」


 沙紀先輩の言葉に、私は一瞬息を呑んだ。

 その言葉の重さが胸に響く。


 心が締め付けられるような痛みを感じた。
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