この見合いなんとしてでも阻止します

第56話

「あんたは一生理解できないでしょうね」

　女に大事なのは愛嬌だなんてそんなの間違ってるに決まってる。

「理解したくもないけどね」

「ひとついいこと教えてあげる。男は自分より賢い女を嫌う生き物なのよ」

　彼女の視線が私を見下すように感じられた。

　そんな理屈が通用すると思っているのだろうか。

「ふふっ。それで？」

　笑みを浮かべつつも、内心では冷笑している。

　彼女の言葉に対して、嘲笑を返さずにはいられない。

「だから、賢く生きるにはバカになることが大事なの」

　彼女の言葉があまりに馬鹿馬鹿しくて、思わず鼻で笑ってしまった。

「笑わせないで。ただ言い訳してるだけじゃないの？」

　自分が馬鹿なことを言い訳にしてる

「あなたより私がモテるのが証拠じゃない」

　彼女の自信に満ちた言葉に、苛立ちが募る。

　外見や人気だけで価値を測ることの浅はかさが、耐え難い。

「自分が好きな人に好かれないと。どうでもいい人たちに好かれたって意味ないと思うけど？」

　冷静な口調でありながら、その裏には鋭い棘が含まれている。彼女の誇りを打ち砕くために。

「私が、本命に好かれてないとでも言いたいわけ？一体…誰のことを言ってるのかしら」

　彼女の動揺が見え隠れし、私は内心で小さな勝利を感じる。

「別に、あなたの事だなんて一言も言ってないけど？ただそう思っただけよ。そんなプリプリしないで」

　軽く肩をすくめながら、さらりと受け流す。

　その姿勢が彼女をさらに苛立たせるのを感じる。

「…これ以上長話する気は無いわ。話したいことがあるなら今話すことね」

　とうとう話す時が来てしまった。

「どうすれば、もう一度私のことを姉だと認めてくれるのかしら」

　内心の葛藤とともに、私は彼女に問いかけた。

　かつての姉妹の絆を取り戻せる方法を探している。

「もう一度ねぇ…あんた、なんか勘違いしてない？」

　彼女の冷ややかな視線が私に突き刺さる。

「え？」

「私は一度でもあんたを姉だなんて思ったことはないわよ」

　彼女の冷酷な一言に、私は胸が締め付けられる。

　なんで、どうして、そんなの嘘よ。

「蓮とのことがある前までは、私をお姉ちゃんと呼んでくれてたじゃない」

　心の中で、過去の思い出が蘇り、辛い気持ちが込み上げるが、それを表に出さないように努める。

「はっ。あんなのリップサービスに決まってるじゃない。お姉ちゃんって呼んだら、あんたは喜んで犠牲になってくれたから」

　彼女の冷たい嘲笑に、私は無力感と怒りを感じる。

「本当に、私を、一度でも姉だと思ったことはないの？」

　声が震えるのを抑えながら、私は彼女に問いかける。

　内心では答えを聞くのが怖い。 


「ないわよ」
　 

　彼女の冷淡な答えに、部屋の空気が一瞬で冷え込むのを感じる。

　私の心も、凍りつくようだった。