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第46話

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 田中さんが変わろうとしているのは分かるけど、一体何が彼をそうさせたのだろう?

「どうして、急に変わろうと思ったんですか?」

 私は思い切って尋ねてみた。

 田中さんは一瞬驚いたようだったが、やがて静かに答えた。

「ある人に言われたんだ。俺がしているのはひとりよがりの愛だって」

「ひとりよがりの愛…」

 私はその言葉を繰り返した。

 田中さんはしばらく黙っていたが、やがて重い口を開いた。

「最初は信じられなかった。認めたくなかった。でも、考えれば考えるほど、確かにそうかもしれないって思うようになったんだ」

 彼の目には深い悔恨の色が浮かんでいた。

「田中さんも変わったんですね」

 以前の田中さんとは違う。
 何が変わったのか分からなかったけど、

 今ならわかる気がする。

「遅いぐらいだよ。本当に今までの自分が恥ずかしい」

 田中さんは深く頷き、苦笑しながら目を伏せた。

 田中さんの言葉には、過去の自分への後悔と反省が込められていた。

「今の田中さんならきっと大丈夫です」

 私は優しく微笑みながら答えた。

 人を思いやる気持ちを持ってる今の田中さんなら、きっとやり直せるはずだから。

「ありがとう。もう二度と会うことはないだろうけど、由莉の幸せを願っているよ」

 田中さんの真摯な気持ちが伝わってきた。

「田中さんもお元気で」

 田中さんは静かに頷き、ゆっくりとその場を去っていった。

 私はその背中を最後まで見送った。

 これで私も、少しは…。

「蓮、社長、本当にありがとうございました」

 私は深く頭を下げた。

「由莉が無事で良かったよ」

 社長は優しく微笑んだ。

「俺は別に、大したことしてねぇよ」
「そんなことないよ」

 あの時、蓮の姿が見えた時、どれだけ安心したか。

「こんなことがあった後だし、ひとりじゃ心細いだろ。俺の家来るか?」

 蓮の言葉に、私は一瞬驚いた。

 多分、璦が家にいることも考慮して言ってくれてるんだと思うけど。

「ありがとう。でも大丈夫」

「わかった。じゃあ、とりあえず家まで送る」

「大丈夫だよ。一人で帰れる」

 蓮の優しさに甘えるわけにはいかない。

 彼の気持ちに答えられないのに、これ以上頼るのは間違ってると思うから。

「俺が大丈夫じゃないの」

 蓮の真剣な表情に、私は胸が締め付けられる思いだった。

 心配が伝わってきて、嬉しい反面、申し訳なさが募った。

「…分かった。ありがとう」

 これ以上は何を言っても無駄だろうな。

「それじゃあ俺はここで」

 社長がそう言うと、私は深く頭を下げた。

「社長、本当にありがとうございました」

 社長が車に乗りこみ、車が見えなくなるまで見送った。
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