この見合いなんとしてでも阻止します

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第42話

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「あの女って誰のことですか、」

 田中さんの言葉に何か引っかかるものを感じた。

「名前は知らない」

「は?そんな嘘信じるわけないだろ」

 蓮の声が冷たく響いた。

 名前を教えなかったんだとしたら、

「嘘じゃない!」

 田中さんを完全に信じたわけじゃなかったけど、一つの疑念が頭から離れない。

 まさかとは思うけど、そんのまさかをやってのけるのがあの子だから。

「その人の特徴は」

 私は冷静に問い詰めた。
 田中さんの言葉から真実を引き出そうとした。

「特徴…特徴…無駄に明るくて由莉とは正反対のタイプってことぐらいしか、」

 私と正反対って、やっぱり…

 でも、まだ確信が持てない。

「由莉もうこんなやつと話さなくていいから」

「そうじゃなくて、見た目の話。その人はどんな見た目でしたか」

 これさえ分かれば

「見た目…」

 田中さんは考え込んだ。

 写真を持ってさえいれば答えを聞くのは簡単なのに。

 あの子の写真なんて…あ、

「もしかしてこの人ですか」

 私は彼女のアイコンの写真を見せた。

「そう!そうだこの女だ!」

 田中さんの言葉に、私は驚きと確信を感じた。

 やっぱり…。

「やっぱり、」

 私は小さく呟いた。

「この女とは知り合いか」

 田中さんの問いに、私は深く頷いた。

「妹です」

 私は冷静に答えた。

「え?」

 私の妹だなんて思ってもいなかったんだろう。

「私の妹なんです」

 私は冷静に答えた。
 心の中で複雑な感情が渦巻いていた。

「は?璦が今回の件に関わってるってことか?」

 蓮の問いに、私は頷いた。

「…あいつが俺に、由莉が会いたがってるから、会いに行ってやれって言ったんだ」

 田中さんの言葉に、私は驚きと怒りを感じた。

 あの日の夜、璦に
 "次は本物だったりして"

 そう言われてずっと怖かった。

 だって、田中さんは絶対に来るって確信が璦の顔に表れていたから。

「その時のことを詳しく教えて貰ってもいいですか」


「会社の帰りにこの女に呼び止められたんだ」

 ___


「田中さん…ですか?」

 誰だこの女…。

 知り合いにこんなやついたか…?
 いけ好かないやつ。直感でそう思った。

「そうですけど、どちら様ですか」

「大したものじゃないですよ」

 彼女の微笑みが少し不気味に感じられた。

「どうして俺の名前を」

 彼女が自分の名前を知っている理由が気になった。

「由莉からあなたの話をよく聞いていて」

 由莉…?

 由莉が自分の話をしているなんて、思ってもみなかった。


「由莉が俺の話を…?」

 信じられない気持ちで問い返した。


 彼女の微笑みがさらに不気味に感じられた。

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