この見合いなんとしてでも阻止します

hayama_25

文字の大きさ
上 下
36 / 78

第36話

しおりを挟む
「顔色悪いけど大丈夫か?」

 蓮が心配そうに私の顔を覗き込む。

「あ、うん。怖い夢見て、」

 私は目をそらしながら答える。
 悪夢がまだ頭にこびりついている。

「は?また?」

 蓮の声が少し驚いたように響く。

「うん、」

 私は小さくうなずく。 

 最近、毎晩のように悪夢にうなされている。

 それも、毎日同じ夢。

「ここ最近ずっと悪夢見てるだろ」

 蓮が眉をひそめる。

「そうなんだよね」

 私はため息をつく。
 心の中の不安が消えない。

「寺とか行った方がいいんじゃねぇの?」

 蓮が心配そうに言う。

 幽霊の仕業とでも思ってるんだろう。
 そういうんじゃないのに。

 ただ、あの日のことがトラウマになってるだけなのに。

「もう少し様子みて見る、」

 警察官が家に来て二週間がたった。

 "まだ"何も起きてない。

 でも、いつ何が起きるか分からない。
 私の勘違いであって欲しいけど…。

「今日、何も無かったら帰りに飯でもどう?」

「ごめん、今日は用事があって」

 私は申し訳なさそうに断る。

 本当は用事なんてないけど。

「そっか」

 蓮の声が少し寂しそうに聞こえる。

 あれから蓮とは少し距離を置いている。

 蓮の気持ちを知ってるのに知らないふりは、これ以上出来ないから。

 会社からの帰り道、私はいつもより早歩きで家に向かって歩いていた。

 心の中には不安が渦巻いている。

 いつどこで襲われるか分からない。
 毎日恐怖に怯えながら過ごしてる。

 家に着くと、玄関で璦とばったり会ってしまった。

「璦…」

 私は驚いて立ち止まる。

「最近早く帰ってくるんだね」 

 常に監視されてるんだ。
 どこで何をしようと、もうほっといて欲しい。

「璦には関係ないでしょ」

 疲れてるから休みたいのに、玄関からどこうとしない。

「蓮くんと喧嘩でもした?」

 璦が嬉しそうに尋ねてきた。

「別にそんなんじゃない」 

 璦の頭の中には蓮しかいないのか。

「あ、分かった。変な人が家の近くでウロウロしてるからだ」

「そんなんじゃ」

 私は言葉を濁す。

「何かされないように気をつけてねぇ」

 璦が不気味な笑みを浮かべる。
 不吉な予感がした。

 気をつけないといけないのはあんたも同じでしょ…。

 その夜、非通知から電話がかかってきた。

 いつもなら知らない電話番号は、取らないようにしてるのに…

 あまりにしつこくかかってくるから、知り合いかと思って電話を取ってしまった。

「…もしもし、」

 私は緊張しながら応答する。

「由莉」

 電話の向こうから聞こえてきた声があまりにも聞き覚えのある声だった。

 私はすぐに電話を切った。

 心臓がドキドキして痛い。



 忘れたくても忘れることの出来ない、あの日のことを鮮明に思い出してしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

下げ渡された婚約者

相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。 しかしある日、第一王子である兄が言った。 「ルイーザとの婚約を破棄する」 愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。 「あのルイーザが受け入れたのか?」 「代わりの婿を用意するならという条件付きで」 「代わり?」 「お前だ、アルフレッド!」 おさがりの婚約者なんて聞いてない! しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。 アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。 「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」 「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

元妻からの手紙

きんのたまご
恋愛
家族との幸せな日常を過ごす私にある日別れた元妻から一通の手紙が届く。

処理中です...