この見合いなんとしてでも阻止します

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第35話

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 そのあと、蓮は何も言わずに、黙って私を家まで送ってくれた。

 彼の無言の優しさに、心が少しだけ落ち着いた。

「蓮、ありがとう」

 私は玄関の前で振り返り、感謝の気持ちを伝えた。

「今日はゆっくり休めよ」

 蓮は優しく言った。

「うん、」

 私は小さく頷いた。
 心の中ではまだ不安が渦巻いていた。

 さっきはつい言葉を遮ってしまったけど、ずっとこのままにはしておけない。

 これ以上、蓮の気持ちを

「由莉」

 蓮が私の名前を呼んだ。

「ん?」

 私は顔を上げた。

「その…俺がさっき言おうとしたこと、忘れていいから」

 蓮の声は少し震えていた。

「蓮…」

 よくないのに、私が困ると思って、自分の気持ちに蓋をしてるんだ。

 私は、蓮の気持ちに気づいていながら、それを無視していたのに。

 蓮とは良い友達でいたくて、気まずい関係になりたくなくて、友達を失いたくなくて、

 自分のことしか考えてなかった。

 最低だ。

 蓮の気持ちには応えられない。

 だけど、このままじゃ駄目だ。

 蓮だけが辛いなんて駄目に決まってる。

「じゃ、おやすみ」

 蓮は微笑んで言った。

「おやすみ、」

 私は小さな声で答えた。

 社長のことが片付いたら、蓮とちゃんと話そう。

 心の中でそう思いながら、私は家の中に入った。

 蓮の優しさに触れるたびに、自分の気持ちが揺れ動くのを感じた。

 翌朝、玄関のチャイムで目が覚めた。

 外はまだ薄暗かった。

 こんな時間に誰だろうと思いながら、私は玄関に向かった。

 ドアを開けると、そこには見知らぬ男が立っていた。

「おはようございます。こんな時間にすみません」

 男は丁寧にお辞儀をした。

「大丈夫ですけど…」

 私は警戒しながら答えた。

「実は私、こういうものなのですが」

 そう言って、男は警察のバッジを見せた。

「警察の方…?」

 警察の方がどうして家に?

「実は、あなたの家の近くで不審な人物が目撃されていまして、念のために確認に来ました」

「不審な人物…?」 

 私は驚いて尋ねた。

「はい。最近、この辺りで不審な動きがあるとの通報がありまして、注意を呼びかけています」

 警察官は真剣な表情で言った。

「そうなんですね、」
「戸締りの確認よろしくお願いします」

「わかりました。気をつけます」

 私は不安を感じながら答えた。

 警察官が去った後、私は心の中で不安が募った。

 何かが起こる予感がして、胸がざわついた。

 昔、似たような気持ちになったことを思い出した。

 その夜、私は不安な気持ちを抱えながら眠りについた。

 夢の中で、何度も不審な人物に追いかけられる夢を見た。

 

 目が覚めると、汗びっしょりになっていた。
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