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第21話
しおりを挟む蓮との電話を切った後、私は深いため息をついた。
心の中で渦巻く不安を抑えながら、部屋の窓から外を見つめた。
まだ昼過ぎで、太陽が高く輝いている。
「どうしてこんなことになっちゃったんだろう…」
自問自答しながら、私はベッドに腰を下ろした。
かなり疑われてる。
社長との関係が蓮にバレるのは時間の問題かもしれない。だけど、今はまだ話せない。
家にいると息が詰まるから、気分転換に外に出ることにした。近くのカフェでコーヒーを飲みながら、頭を整理しようと思った。
カフェに着くと、静かな雰囲気が心を落ち着かせてくれた。
「コーヒーお願いします」
注文を済ませて席に着くと、スマホを取り出してメッセージを確認した。
蓮からのメッセージが一件届いていた。
"もうこれ以上は何も聞かないから"
その言葉に、ドキッとしつつ、少しだけ心が軽くなった。
やっぱり蓮は、何かに気づいている。
私が本当のことを言うのを渋っているのを見て、気を使ってくれているのかもしれない。
蓮はいつも私のことを気にかけてくれている。だからこそ、嘘をつくのが辛い。
私は蓮に返信をした。
カフェでしばらく過ごした後、近くの公園に向かった。
ここは、昔から好きな空間だった。幼い頃から嫌なことがあったら良くここに来ていた。
公園のベンチに座り、周りの景色を眺めながら考えた。社長のこと、蓮のこと、そして自分の気持ち。
「どうすればいいんだろう…」
答えが出ないまま、
公園の木々が風に揺れる音を聞きながら、私はしばらくの間、ぼんやりと過ごした。
その夜、私は眠れずにベッドの中で悶々としていた。社長のことを考えると、胸が締め付けられるような感覚がする。
社長の優しさに触れるたびに、心が揺れ動くのを感じていた。
あと一ヶ月…
あと一ヶ月…
気を紛らわすために明日の予定を考えた。
予定…は特にない。
何かをしていないと落ち着かない性格だけど、今は自由な時間があることに、少しだけほっとしていた
どうしたら社長のことを忘れられるだろうか…
そんなこと、私に出来るのだろうか…
そう思いながら眠りについた。
翌朝、私は早くに目が覚めた。
日曜日の静かな朝、窓から差し込む柔らかな光が部屋を照らしていた。
今日は何をしようかと考えながら、ベッドから起き上がった。
どこにも行かず、家でゆっくり過ごすことにした。
朝から掃除をしたり、テレビを見たりして、気分転換を図った。
少しの間だけ、何も考えずにいられた。
そして、電話がかかってきた。
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