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第16話
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「おはよー。ちょっと待って、由莉その顔どうしたの」
私の顔を見るなり、驚いて目を丸くした。
「顔?」
「目腫れてない?いや、腫れすきなんだけど」
「そう?気の所為じゃない?」
気の所為なんかじゃない。
社長に別れを告げてから、私には泣く権利なんてないって分かってるのに、涙が止まらなかった。
この2日間泣き続けて、気づいたらこの顔になってた。
「この前、用事あるって言ってたけど、それと何か関連してる?」
「え?」
バレる。変なとこ鋭いから。
下手なことはいえない。
「やっぱりか」
「違うよ。違う」
「ほんとに?」
何とかして話題を変えないと
「うん。ごめんね、この前は誘い断っちゃって」
「いや、それはいいんだけど、」
「今週の金曜日は?」
「金曜日?」
「飲みに行かない?」
蓮には、あと一ヶ月したら会社を辞めること言っておきたいし。
「いいけど…なにか話でもあるの」
「何で?」
ここまで来ると蓮が鋭いのか、私が顔に出やすいのか分からなくなってきた
「深刻な顔してたから」
「あぁ、えっと、その時に話すよ」
「…分かった」
きっとびっくりするだろうな。
___
「何で急に!?」
ほら、やっぱり。
「ごめんね、」
「いや、ごめんじゃなくてどうして、」
理由は言えない。
「ちょっとね」
「…璦のせい?」
まぁ、璦のせいっちゃそうなんだけど。
この決断を決めたのは私だ。
「違うよ」
「でもさ、会社辞めてどうするつもり?転職でもするわけ?」
何にも計画立ててないって言ったらどんな反応するかな。
「いやぁ、まだ何も決めてない」
「はぁ?何それ」
驚きを通り越して呆れてる。
「まあ、そうなるよね」
暫くはゆっくりしようかな。
お金を自分のために使ったりしなかったから、貯金はそこそこある。
数年何もせずに暮らせるぐらいには。
「せめて、何するか決めるまで会社にいれば?」
「上司に辞表出したよ」
「それもまた、いつの間に…」
私の意思が揺らぐ前に出しておこうとこうと思った。
やっぱりそばにいたいって思わないはずがないから。
「相談せずに決めてごめんね」
「それはいいんだけど…ほんとに、何かあったわけではないんだよね」
「ないよ何も」
蓮にはまだ家を出ることは言えない。
言ってしまえば家で何かあったことがバレる。
璦のフリをして社長とお見合いしたことは絶対に言えない。
父が全責任を私に押し付けようとしてることを知ったら、家に怒鳴り込んできそうだから。
「会社で誰かに虐められてる?」
「虐められてないよ」
上司も部下もみんないい人ばっかりだ。
家にいるよりも会社にいる方が居心地がいい。
だから、会社に早く出勤してた。
送別会しようかって言われたけど断った。
別れが辛くなるだけだから。
「だよな。まぁ、分かってたけど。だったら尚更、会社を辞める理由は?」
蓮は私が会社もこの仕事も好きなの知ってるから不思議に思っても仕方がない。
「父の会社を継ぐの」
「会社を…?」
まぁ、嘘だけど。
「とにかく!今日はとことん呑もう!」
「いや、まだ聞きたいこと山ほどあるんだけど。てか、由莉そんなにお酒強くないじゃん」
「強いよ!普段飲まないだけ!」
久しぶりにお酒を飲むから、自分がどれだけ飲めないのか忘れてた。
そして、気づいたら…出来上がってた。
「二次会行こー!」
「ちょっ、飲みすぎ、家帰るよ」
「帰りませぇーん」
「ちょっと、道端で暴れないで」
「家には帰りたくない!!」
「じゃあどうするの」
「蓮の家にお邪魔しまぁす」
「はぁ?無理無理」
「なんでぇ」
「なんでって、」
「蓮の意地悪、ケチ、」
「おま、重いから離れろって」
「いや!いいって言うまで離れないから」
「まじで、離れろって!」
「いーやーだー!っ、わっ、」
誰かに腕引っ張られて、バランスを崩した。
この匂い…
どこかで…
私の顔を見るなり、驚いて目を丸くした。
「顔?」
「目腫れてない?いや、腫れすきなんだけど」
「そう?気の所為じゃない?」
気の所為なんかじゃない。
社長に別れを告げてから、私には泣く権利なんてないって分かってるのに、涙が止まらなかった。
この2日間泣き続けて、気づいたらこの顔になってた。
「この前、用事あるって言ってたけど、それと何か関連してる?」
「え?」
バレる。変なとこ鋭いから。
下手なことはいえない。
「やっぱりか」
「違うよ。違う」
「ほんとに?」
何とかして話題を変えないと
「うん。ごめんね、この前は誘い断っちゃって」
「いや、それはいいんだけど、」
「今週の金曜日は?」
「金曜日?」
「飲みに行かない?」
蓮には、あと一ヶ月したら会社を辞めること言っておきたいし。
「いいけど…なにか話でもあるの」
「何で?」
ここまで来ると蓮が鋭いのか、私が顔に出やすいのか分からなくなってきた
「深刻な顔してたから」
「あぁ、えっと、その時に話すよ」
「…分かった」
きっとびっくりするだろうな。
___
「何で急に!?」
ほら、やっぱり。
「ごめんね、」
「いや、ごめんじゃなくてどうして、」
理由は言えない。
「ちょっとね」
「…璦のせい?」
まぁ、璦のせいっちゃそうなんだけど。
この決断を決めたのは私だ。
「違うよ」
「でもさ、会社辞めてどうするつもり?転職でもするわけ?」
何にも計画立ててないって言ったらどんな反応するかな。
「いやぁ、まだ何も決めてない」
「はぁ?何それ」
驚きを通り越して呆れてる。
「まあ、そうなるよね」
暫くはゆっくりしようかな。
お金を自分のために使ったりしなかったから、貯金はそこそこある。
数年何もせずに暮らせるぐらいには。
「せめて、何するか決めるまで会社にいれば?」
「上司に辞表出したよ」
「それもまた、いつの間に…」
私の意思が揺らぐ前に出しておこうとこうと思った。
やっぱりそばにいたいって思わないはずがないから。
「相談せずに決めてごめんね」
「それはいいんだけど…ほんとに、何かあったわけではないんだよね」
「ないよ何も」
蓮にはまだ家を出ることは言えない。
言ってしまえば家で何かあったことがバレる。
璦のフリをして社長とお見合いしたことは絶対に言えない。
父が全責任を私に押し付けようとしてることを知ったら、家に怒鳴り込んできそうだから。
「会社で誰かに虐められてる?」
「虐められてないよ」
上司も部下もみんないい人ばっかりだ。
家にいるよりも会社にいる方が居心地がいい。
だから、会社に早く出勤してた。
送別会しようかって言われたけど断った。
別れが辛くなるだけだから。
「だよな。まぁ、分かってたけど。だったら尚更、会社を辞める理由は?」
蓮は私が会社もこの仕事も好きなの知ってるから不思議に思っても仕方がない。
「父の会社を継ぐの」
「会社を…?」
まぁ、嘘だけど。
「とにかく!今日はとことん呑もう!」
「いや、まだ聞きたいこと山ほどあるんだけど。てか、由莉そんなにお酒強くないじゃん」
「強いよ!普段飲まないだけ!」
久しぶりにお酒を飲むから、自分がどれだけ飲めないのか忘れてた。
そして、気づいたら…出来上がってた。
「二次会行こー!」
「ちょっ、飲みすぎ、家帰るよ」
「帰りませぇーん」
「ちょっと、道端で暴れないで」
「家には帰りたくない!!」
「じゃあどうするの」
「蓮の家にお邪魔しまぁす」
「はぁ?無理無理」
「なんでぇ」
「なんでって、」
「蓮の意地悪、ケチ、」
「おま、重いから離れろって」
「いや!いいって言うまで離れないから」
「まじで、離れろって!」
「いーやーだー!っ、わっ、」
誰かに腕引っ張られて、バランスを崩した。
この匂い…
どこかで…
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