9 / 78
第9話
しおりを挟む
「そんな、」
「じゃあね~」
「あ、璦?そこにいるんでしょ?怖がらせてるだけだよね…?」
返事が帰ってくることも、この場に戻って来ることもなかった。
そして、お父様が探しに来ることもなかった。
昔から璦の方が大事で、璦ー筋だったから、別に期待なんてしてなかったんだけどね。
「怖いっ...」
真っ暗の中、私は空腹と暑さに耐えて一日を乗り越えた。
この日から私は暗所恐怖症になった。
そして、朝になっても助けは来ずに昼になってようやく誰かの足音が聞こえてきた。
「由莉!」
蓮の声が聞こえる。
「蓮…?」
「由莉、大丈夫か!」
「なんで、どうして蓮がここに、」
璦が自分から言うなんてことはありえないし、
「由莉が学校に来ないから、何かあったのか璦に問いつ…聞いたんだよ。そしたらここにいるって言うから」
今、問い詰めたって言いかけた。璦が口を割るほど、蓮が怖かったってことだよね。
「助けてくれてありがとう、」
「あいつ、なかなか言わないから助けに来るの遅くなってごめんな、」
「そんな、、」
来てくれただけでどれだけ嬉しかったか。
「いつから閉じ込められてたんだよ」
いつから…返事によっては、璦の命が危険にさらされる事になる。
「きょ、うの朝」
「ほんとに?」
「うグルルルル…あっ、」
タイミング…
「朝ごはんも食べてないのかよ」
朝ごはんどころか晩御飯も食べてないです。なんて言えない。
「食べる前にここに閉じ込められたから、」
「…ほんとかなぁ、」
「ほ、ほんとだよ」
やばい。疑われてる。
「璦を庇って言ってるわけじゃないよね」
「まさか…」
蓮とこれ以上目を合わせられない。目が泳ぐ。
「ま、いいや。璦に聞けばいいし。答えなかったら…今度はどうしようかな」
どうしようかなって、何するつもり、
「だ、、駄目…!」
「やっぱり今日の朝じゃないよね」
「えっと、」
バレてる。どうしよう、正直に言っても言わなくても璦が怒られる。
「由莉」
「…昨日の夜から」
「俺の目を見て言って」
目を見たら嘘つけないよ
「うぅ、本当は…昨日の昼からです。学校から帰ってきてちょっと経ったあとに、、」
私が怒らせたから。私の責任。
「という事は、丸一日ここにいたってこと…ね」
怒ってる。それも、すごく。蓮は手を挙げたりする人じゃないって分かってるけど、今の蓮なら…
「そうだけど、蓮…?ま、さか璦を殴ったりしないよね?」
「こんな汗かいて。ずっとここにいたんだよね。暑いのに水も飲めずに。ご飯も食べれずに。真っ暗なこの場所で」
どうして否定しないの、
「そ、うだけど、」
「それなのに、璦は来なかった」
「うん、そうなんだけどさ、蓮?」
駄目だ。今の蓮に何を言っても止められない。
「それなのに、由莉は璦を庇うんだね」
「可愛い妹に変わりないし」
璦が私を嫌いでも、私は嫌いになれない。
「こんな事されてもまだ可愛いなんて言えるんだ」
「だって…」
「蓮くん…!」
「ちょうどいいところに…お前、由莉に何したんだよ」
「だ、だってこいつが、」
「こいつって、まさか由莉の事か」
「そうだけど…」
蓮は璦が私のことをこいつ呼ばわりしてたことは知らなかったみたい
「お前、由莉の事こいつって呼んでんの」
「だったら何」
「前まではお姉ちゃんって呼んでただろ」
「私にお姉ちゃんはいないわ」
薄々気づいてはいたけど、はっきり言葉にされるとやっぱり悲しい。
「は…?じゃあ由莉は」
「…ただの裏切り者よ」
「…ごめん由莉」
「え?」
どうして急に謝るの。
「由莉の妹だからって手加減できそうにない」
それってつまり…
「駄目!暴力だけは駄目!お願いやめて」
私は蓮の手を掴んで必死に抵抗した。
「…はぁ、裏切り者って由莉がお前に何したんだよ。何もしてないだろ」
「こいつは…!私が蓮くんを好きなこと知ってながら、責任も取れないくせに、蓮くんを落としたんだよ!?蓮くんは何も思わないわけ!?」
私が思わせぶりな行動をしてしまったんだろうか、
「俺が勝手に好きになっただけ。由莉は何も悪くない」
「…私が蓮くんの事好きだって分かってたのに、身を引いたりしなかった。そうしなかったのは気持ちには答えられないくせに、私には取られたくなかったからだよ。蓮くん!こいつはそんなやつなんだよ!騙されないで!」
違う。蓮と璦が付き合ったらどれほどお似合いだろうって何度思ったことか。
でも、私は、璦よりもずっと前から蓮と仲良かったのに、どうしてここまで言われないといけないんだろう。
流石に自分勝手すぎる。
私は今まで、どうしてこんな奴を庇ってたんだろう。
なんかもう…
吹っ切れた。
「…黙れ。次由莉の事こいつなんて言ったらタダじゃおかないからな」
「…」
「こんな奴ほっといて行こう由莉」
「うん、」
「ま、待ってよ…!」
「…放せ」
何十年も一緒にいたけど、こんな低い声聞いたことない。
「っ…」
蓮が璦に何をしたのか分からないけど、その後から璦は私の事を"こいつ"と呼ばなくなった。
「じゃあね~」
「あ、璦?そこにいるんでしょ?怖がらせてるだけだよね…?」
返事が帰ってくることも、この場に戻って来ることもなかった。
そして、お父様が探しに来ることもなかった。
昔から璦の方が大事で、璦ー筋だったから、別に期待なんてしてなかったんだけどね。
「怖いっ...」
真っ暗の中、私は空腹と暑さに耐えて一日を乗り越えた。
この日から私は暗所恐怖症になった。
そして、朝になっても助けは来ずに昼になってようやく誰かの足音が聞こえてきた。
「由莉!」
蓮の声が聞こえる。
「蓮…?」
「由莉、大丈夫か!」
「なんで、どうして蓮がここに、」
璦が自分から言うなんてことはありえないし、
「由莉が学校に来ないから、何かあったのか璦に問いつ…聞いたんだよ。そしたらここにいるって言うから」
今、問い詰めたって言いかけた。璦が口を割るほど、蓮が怖かったってことだよね。
「助けてくれてありがとう、」
「あいつ、なかなか言わないから助けに来るの遅くなってごめんな、」
「そんな、、」
来てくれただけでどれだけ嬉しかったか。
「いつから閉じ込められてたんだよ」
いつから…返事によっては、璦の命が危険にさらされる事になる。
「きょ、うの朝」
「ほんとに?」
「うグルルルル…あっ、」
タイミング…
「朝ごはんも食べてないのかよ」
朝ごはんどころか晩御飯も食べてないです。なんて言えない。
「食べる前にここに閉じ込められたから、」
「…ほんとかなぁ、」
「ほ、ほんとだよ」
やばい。疑われてる。
「璦を庇って言ってるわけじゃないよね」
「まさか…」
蓮とこれ以上目を合わせられない。目が泳ぐ。
「ま、いいや。璦に聞けばいいし。答えなかったら…今度はどうしようかな」
どうしようかなって、何するつもり、
「だ、、駄目…!」
「やっぱり今日の朝じゃないよね」
「えっと、」
バレてる。どうしよう、正直に言っても言わなくても璦が怒られる。
「由莉」
「…昨日の夜から」
「俺の目を見て言って」
目を見たら嘘つけないよ
「うぅ、本当は…昨日の昼からです。学校から帰ってきてちょっと経ったあとに、、」
私が怒らせたから。私の責任。
「という事は、丸一日ここにいたってこと…ね」
怒ってる。それも、すごく。蓮は手を挙げたりする人じゃないって分かってるけど、今の蓮なら…
「そうだけど、蓮…?ま、さか璦を殴ったりしないよね?」
「こんな汗かいて。ずっとここにいたんだよね。暑いのに水も飲めずに。ご飯も食べれずに。真っ暗なこの場所で」
どうして否定しないの、
「そ、うだけど、」
「それなのに、璦は来なかった」
「うん、そうなんだけどさ、蓮?」
駄目だ。今の蓮に何を言っても止められない。
「それなのに、由莉は璦を庇うんだね」
「可愛い妹に変わりないし」
璦が私を嫌いでも、私は嫌いになれない。
「こんな事されてもまだ可愛いなんて言えるんだ」
「だって…」
「蓮くん…!」
「ちょうどいいところに…お前、由莉に何したんだよ」
「だ、だってこいつが、」
「こいつって、まさか由莉の事か」
「そうだけど…」
蓮は璦が私のことをこいつ呼ばわりしてたことは知らなかったみたい
「お前、由莉の事こいつって呼んでんの」
「だったら何」
「前まではお姉ちゃんって呼んでただろ」
「私にお姉ちゃんはいないわ」
薄々気づいてはいたけど、はっきり言葉にされるとやっぱり悲しい。
「は…?じゃあ由莉は」
「…ただの裏切り者よ」
「…ごめん由莉」
「え?」
どうして急に謝るの。
「由莉の妹だからって手加減できそうにない」
それってつまり…
「駄目!暴力だけは駄目!お願いやめて」
私は蓮の手を掴んで必死に抵抗した。
「…はぁ、裏切り者って由莉がお前に何したんだよ。何もしてないだろ」
「こいつは…!私が蓮くんを好きなこと知ってながら、責任も取れないくせに、蓮くんを落としたんだよ!?蓮くんは何も思わないわけ!?」
私が思わせぶりな行動をしてしまったんだろうか、
「俺が勝手に好きになっただけ。由莉は何も悪くない」
「…私が蓮くんの事好きだって分かってたのに、身を引いたりしなかった。そうしなかったのは気持ちには答えられないくせに、私には取られたくなかったからだよ。蓮くん!こいつはそんなやつなんだよ!騙されないで!」
違う。蓮と璦が付き合ったらどれほどお似合いだろうって何度思ったことか。
でも、私は、璦よりもずっと前から蓮と仲良かったのに、どうしてここまで言われないといけないんだろう。
流石に自分勝手すぎる。
私は今まで、どうしてこんな奴を庇ってたんだろう。
なんかもう…
吹っ切れた。
「…黙れ。次由莉の事こいつなんて言ったらタダじゃおかないからな」
「…」
「こんな奴ほっといて行こう由莉」
「うん、」
「ま、待ってよ…!」
「…放せ」
何十年も一緒にいたけど、こんな低い声聞いたことない。
「っ…」
蓮が璦に何をしたのか分からないけど、その後から璦は私の事を"こいつ"と呼ばなくなった。
10
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
下げ渡された婚約者
相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。
しかしある日、第一王子である兄が言った。
「ルイーザとの婚約を破棄する」
愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。
「あのルイーザが受け入れたのか?」
「代わりの婿を用意するならという条件付きで」
「代わり?」
「お前だ、アルフレッド!」
おさがりの婚約者なんて聞いてない!
しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。
アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。
「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」
「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる