この見合いなんとしてでも阻止します

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第1話

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「結婚しましょう」


 私のミッションはこの人とお見合いをしてこっぴどく振られること…なのに一体何がどうなってるの!?



 遡ること2週間前。突然お父様に呼び出された。

「今なんて…」

 私の聞き間違いだろうか。いや、そうに違いない。だって私が…

「見合いをしろと言ったんだ」
「見合い!?どうして私が…!あいは…!」

「璦には恋人がいるんだ。それなのに他の人とお見合いなんてさせる訳にはいかないだろう」

 そんなの理由になってない。

「だからってどうして私に」
できないなら断ればいいのに。

「お前にはいないじゃないか」

「そんなの関係ない。これは璦のお見合いでしょ?私には関係ないじゃない」

「もしも見合いを取り消すことになれば、私の会社が大ダメージを受けることになる」

 なんだよそれ。

 そんなの自業自得じゃない。璦に彼氏がいることなんてずっと前から知ってたはずでしょ?それなのに引き受けた自分が悪い。

    同情の余地なし。

「はぁ。そもそも、璦との見合いなのに私が行ってもいいんですか?それこそ約束と違うってなって、結局大ダメージ?じゃないんですか?」

「そこでだ。お前には璦のフリをして見合いに行ってもらうことにする。」
「…は、い?」

 なーにがそこでだ。ついに頭いかれ…危ない危ない。悪口を言うところだった。

「化粧は専門のものに頼んである」
「いや、そういう問題じゃ…」

 化粧どうこうの話じゃないでしょ。人を騙すというのに、ここまで落ち着いていられるなんて、極悪人…

「くれぐれもバレないようにな。会社の未来はお前にかかっている。その事を忘れないように」

 なんじゃそりゃ!全責任を私に擦り付けるつもり!?

「一方的に話して終わり?私に拒否権はないって?ふざけないでよ!どうして私が巻き込まれないと『うるさい!これはもう決まった事なんだ!』」

 いつも私ばっかり損して…お父様は璦ばっかり可愛がる。

    いつも私は二の次だった。

    もういい、お父様が私に代理を頼んだ事を後悔させてやる…会社が潰れようがどうなろうがどうでもいいわ!

 こっ酷い別れ方をして、二度とこいつと会いたくない!そう思わせてやろう。


___


「初めまして」
「…えっ、」

 どうしてここにこの人が…まさか!璦の見合い相手って…鈴木社長だったの!?

「あの、」

「は、はい…!」

 もしかしてバレた?

「写真で見た時と雰囲気が違うようで…」

 雰囲気どころか別人です。この様子じゃ、まだバレてないみたい。

 何万人いる内の1人でしかないし…これといって大した業績を収めたことも無いから名前すら知られてないかもしれない。バレる心配するだけ無駄か。

 いくら相手が社長でも怯んでなんていられない。


「あ、あら、そう?まぁ確かに、実物の方が綺麗だってよく言われるわ…」

 こんなの嘘。幼い頃から璦と比べられてきたけど、1度だって私の方が可愛いなんて言ってくれる人はいなかった。月とすっぽんだって事ぐらい、自分だって分かってる。

 血が繋がってるのに、どうしてここまでちがうんだろう。ってたまにすごく悲しくなる。化粧してるから多少は化けれてるだろうけど、

「そうみたいですね」

 社長は嘘が下手だな…はぁ、やるならとことんやってやろうじゃないの。

「ところで、あなたの年収はいくらかしら?最低でも4000万円は超えてないと話にならないわよ?」

「それなら心配しなくても大丈夫です」

 私なんかその十分の一もないですけど…

「あ、あらそう。ならいいわ。」

「他に何か質問はありますか?」
「え、えっと…どうして私とお見合いを?」

「正直なところ父に言われて」

 やっぱり社長もか、私もそうだからこのお見合いはなかったことにしましょう。そう言えば、なんの失礼もなく終われるんじゃ…

「わたし『でも、今は貴方に会えて良かったと思います』…え、」

 あれ、なんか思ってたのと違う

「出会った日にこんな事を言うのはおかしいかもしれませんが…」

「っ…」

 い、嫌な予感がする…

「結婚しましょう」

「け、結婚!?」

「はい」

 まさかの結婚…婚約でもなく付き合おうでもなく、まさかの結婚?そんなのいっちばん駄目!

「私は、別にそんなつもりでここに来たわけじゃないわ。ただ貴方がイケメンだったから。興味本位で会いに来ただけ。わ、私、イケメン好きで男好きだから。」

 イタい、イタすぎる。

 自分で男好きなんて言う人いないよ…私のメンタルが…しっかりしろ自分。ここで引下がる訳にはいかない。今日の目標はこのお見合いをぶち壊すこと。それだけ。

「はは、自分の事を一度もイケメンと思ったことは無いけど、今、生まれて初めてイケメンで良かったと思います」

 くっ、なんだその眩しい笑顔はっ、

「私っ、まだ男を1人に縛るなんて出来ないから、だからっ、」

 お願いだから、潔く諦めてよ。私なんかにこだわらなくたって相手は選び放題じゃん。

「心配しないで。俺しか見えないように夢中にさせてあげますから」

 かっこいい…なんだ?どうしてそんなかっこいいんだ?かっこいい言葉をサラッと言えるなんて、鈴木社長…恐るべし

「えっと、」

「他にも何か?」

 どうしようっ、頭が回らない。何も思いつかない。

「あ、貴方とだけは結婚しないから!」

「…」
「あっ…」

 ここまでストレートに言うつもりじゃなかったのに…捨てられた子犬みたいな顔しないで。心を鬼に…心を鬼に。

「私が、気に入りませんか、」

   そんなわけない。こんな出会いじゃなければ、絶対、100%付き合ってた。

「べつに、」
「では、他に心に決めた人が?」

「そういうわけでも、」
「ではどうして」

 お父様の言いなりになるのが気に食わないので、どうしてもこのお見合いをぶち壊したいから。なんて言えない。

「いや…」
言い訳が思い浮かばない。

「私が嫌いでないのでしたら、また、会っていただけませんか?」

「っ、…」



 会うわけ、会うわけ…ない!
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