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第1話
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「シェフと付き合えたらな~、その前に、告白する勇気があればな...の前に、仲良くなれたらな....」
自分で言っておきながら悲しくなってきた。
「さっきからたらたら言ってるけど大丈夫?」
「たらたら...?」
「~たらな、~たらなって」
私の独り言を律が勝手に聞いていたみたいだ。
「ちょっと、勝手に聞かないでよ」
「シェフのことまだ好きなの」
「まだって私、好きになってそんなに経ってないけど?」
まだ3週間ぐらいだ。
「どこが好きなの?仕事の時以外で話したことあったっけ?」
どこがって…全部?
「話したことはそんなにないけど...一生懸命だし、かっこいいじゃん!」
「かっこいいけどさぁ、」
律が何を言おうとしてるのか分かる
「怒られてばっかりなのに、それが好きになる程の理由なのかって?」
「そこまでは言ってないよ」
言われなくたって顔見てたら分かるよ
「サボってないでさっさと掃除しろ」
「すみません、シェフ」
シェフはすごく厳しい。だけどそれだけじゃない。
「おい、女に重いもん持たせるなって言っただろ!」
違う。
律は持つって言ってくれたけど、私が断ったんだ。
「私が勝手にしたことで、」
「勝手なことすんな。割れたりしたらどうすんだ」
「すみません...」
このお店には女の子が私しかいない。だから、何かと気にかけてくれている。
この前だって、
「お前まだ帰ってなかったの」
「これだけ終わったら帰ります」
「今日の皿洗いの担当って律じゃなかったか?」
「そうなんですけど、急用ができたそうで私が代わりに...」
いつも助けて貰ってるから、何かしてあげたかった。
「この量をお前が1人で?」
「戸締りはしておくので心配しなくて大丈夫です」
「そんな心配してねーよ」
「え?」
「ただ、..お前が明日寝不足で仕事に支障をきたすんじゃないかなって思っただけ。俺が代わりにやるから、お前はもう帰って寝ろ」
シェフが皿洗いを…?そんなの駄目だ。
「いえ、シェフにそんなことさせる訳には」
「いいから。何かしでかされるよりはマシだから」
「...すみません。じゃあ、、失礼します。」
「あぁ」
ってことがあった。これは私が睡眠不足にならないように気にかけてくれたってことだよね。
...うん。自分でも違うことぐらい分かってる。
シェフの頭には店のことしかない。私はそこで働く従業員としか見られてない。
私がどう思っていようと。
「注文いい?」
「はい」
「君、可愛いね。電話番号教えてよ」
「す、すみません。それはちょっと...」
仕事中だし、なんだかチャラい…
「えぇーなんでよー。交換しよ..あれ、さっきまでポケットに入れてたはずなんだけどどこいったんだろ、」
なんて棒読みで言われても…
「どうしましたか」
「ポケットにスマホ入れてたはずなんだけど、どっかに行っちゃって、電話鳴らしたいから君の借りてもいいかな」
カバンの中からスマホ見えてるのに。
「分かり『そのカバンから見えてるのじゃないですか?』シェフ...」
「あ、あったわ...はは」
「人の店でナンパなんてしてんじゃねーよ」
しぇ、シェフ?
「な、なんだよ!お客様に向かってその言い方は!責任者を呼べ!」
やっぱり逆ギレすると思った。
「もう二度とこの店に来んな。責任者の俺が言ってんだ。」
っ、、そんなこと言ったら
「んだよそれ!頼まれても来ねーわ!」
お客さんが減っちゃうのに
「莉乃、ちょっとこっち来い」
そう言うと私の腕を強く引っ張り、倉庫に連れて行った。
調理器具や調味料など、色々なものが置いてある倉庫。この倉庫には必要なものを取りに来る以外、使われていない。
普通の人の場合には。
だけど、私の場合は、シェフに怒られる場所として多々使われている。
「お前なぁ、ちゃんと断れよ」
「迷惑かけてすみません。」
断ることも出来なくて、呆れてる。
「そうじゃな...はぁ、店の雰囲気を乱すな。携帯なくしたって口実で電話番号知ろうとしてたことぐらい分かってただろ」
もちろん気づいてた。だけど知らないふりをした。
「指摘なんてしたら、怒ってもう二度と店に来てくれないと思って、私のせいで迷惑かけたくなかったから」
「お前なんかがそんな心配するな。俺の店は人気店なんだ。客ぐらいいくらでも『ごめんなさい..ほ、んとに、すみませんでしたっ』…ちょっと頭冷やせ。涙拭いてから来いよ。」
「はい、」
シェフは私のことを思って、私のために言ってくれてるんだって思ってた。
いや、そう思うしかなかった。
そう思わないとやっていけないから。少なくとも、私をこの店の従業員として、仲間として思ってくれてるんだって。だけどさっきの言葉を聞いて...
お前なんかがって言葉を聞いて、これ以上働けないと思った。たくさん迷惑かけたし、私がいない方が返っていいんだ。
ここにいて怒られたことはなんどもあるけど、ありがとうって言われたことは1度もなかった。謝ってばっかりだった。
"本来ならば直接挨拶をすべきなのですが、手紙にて失礼します。この度一身上の都合により退職いたします。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。"
こういうのはあって直接言うべきなんだろうけど、他に方法がない。
やっぱり私なんていらなかったんだって思いたくないから。
自分で言っておきながら悲しくなってきた。
「さっきからたらたら言ってるけど大丈夫?」
「たらたら...?」
「~たらな、~たらなって」
私の独り言を律が勝手に聞いていたみたいだ。
「ちょっと、勝手に聞かないでよ」
「シェフのことまだ好きなの」
「まだって私、好きになってそんなに経ってないけど?」
まだ3週間ぐらいだ。
「どこが好きなの?仕事の時以外で話したことあったっけ?」
どこがって…全部?
「話したことはそんなにないけど...一生懸命だし、かっこいいじゃん!」
「かっこいいけどさぁ、」
律が何を言おうとしてるのか分かる
「怒られてばっかりなのに、それが好きになる程の理由なのかって?」
「そこまでは言ってないよ」
言われなくたって顔見てたら分かるよ
「サボってないでさっさと掃除しろ」
「すみません、シェフ」
シェフはすごく厳しい。だけどそれだけじゃない。
「おい、女に重いもん持たせるなって言っただろ!」
違う。
律は持つって言ってくれたけど、私が断ったんだ。
「私が勝手にしたことで、」
「勝手なことすんな。割れたりしたらどうすんだ」
「すみません...」
このお店には女の子が私しかいない。だから、何かと気にかけてくれている。
この前だって、
「お前まだ帰ってなかったの」
「これだけ終わったら帰ります」
「今日の皿洗いの担当って律じゃなかったか?」
「そうなんですけど、急用ができたそうで私が代わりに...」
いつも助けて貰ってるから、何かしてあげたかった。
「この量をお前が1人で?」
「戸締りはしておくので心配しなくて大丈夫です」
「そんな心配してねーよ」
「え?」
「ただ、..お前が明日寝不足で仕事に支障をきたすんじゃないかなって思っただけ。俺が代わりにやるから、お前はもう帰って寝ろ」
シェフが皿洗いを…?そんなの駄目だ。
「いえ、シェフにそんなことさせる訳には」
「いいから。何かしでかされるよりはマシだから」
「...すみません。じゃあ、、失礼します。」
「あぁ」
ってことがあった。これは私が睡眠不足にならないように気にかけてくれたってことだよね。
...うん。自分でも違うことぐらい分かってる。
シェフの頭には店のことしかない。私はそこで働く従業員としか見られてない。
私がどう思っていようと。
「注文いい?」
「はい」
「君、可愛いね。電話番号教えてよ」
「す、すみません。それはちょっと...」
仕事中だし、なんだかチャラい…
「えぇーなんでよー。交換しよ..あれ、さっきまでポケットに入れてたはずなんだけどどこいったんだろ、」
なんて棒読みで言われても…
「どうしましたか」
「ポケットにスマホ入れてたはずなんだけど、どっかに行っちゃって、電話鳴らしたいから君の借りてもいいかな」
カバンの中からスマホ見えてるのに。
「分かり『そのカバンから見えてるのじゃないですか?』シェフ...」
「あ、あったわ...はは」
「人の店でナンパなんてしてんじゃねーよ」
しぇ、シェフ?
「な、なんだよ!お客様に向かってその言い方は!責任者を呼べ!」
やっぱり逆ギレすると思った。
「もう二度とこの店に来んな。責任者の俺が言ってんだ。」
っ、、そんなこと言ったら
「んだよそれ!頼まれても来ねーわ!」
お客さんが減っちゃうのに
「莉乃、ちょっとこっち来い」
そう言うと私の腕を強く引っ張り、倉庫に連れて行った。
調理器具や調味料など、色々なものが置いてある倉庫。この倉庫には必要なものを取りに来る以外、使われていない。
普通の人の場合には。
だけど、私の場合は、シェフに怒られる場所として多々使われている。
「お前なぁ、ちゃんと断れよ」
「迷惑かけてすみません。」
断ることも出来なくて、呆れてる。
「そうじゃな...はぁ、店の雰囲気を乱すな。携帯なくしたって口実で電話番号知ろうとしてたことぐらい分かってただろ」
もちろん気づいてた。だけど知らないふりをした。
「指摘なんてしたら、怒ってもう二度と店に来てくれないと思って、私のせいで迷惑かけたくなかったから」
「お前なんかがそんな心配するな。俺の店は人気店なんだ。客ぐらいいくらでも『ごめんなさい..ほ、んとに、すみませんでしたっ』…ちょっと頭冷やせ。涙拭いてから来いよ。」
「はい、」
シェフは私のことを思って、私のために言ってくれてるんだって思ってた。
いや、そう思うしかなかった。
そう思わないとやっていけないから。少なくとも、私をこの店の従業員として、仲間として思ってくれてるんだって。だけどさっきの言葉を聞いて...
お前なんかがって言葉を聞いて、これ以上働けないと思った。たくさん迷惑かけたし、私がいない方が返っていいんだ。
ここにいて怒られたことはなんどもあるけど、ありがとうって言われたことは1度もなかった。謝ってばっかりだった。
"本来ならば直接挨拶をすべきなのですが、手紙にて失礼します。この度一身上の都合により退職いたします。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。"
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