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絆の花
第52話:夕陽の教室
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歩乃華と放課後、教室に残ってお喋りをしていた。
窓から差し込む夕陽が教室を暖かく照らしている。
「いやぁ、今日は大変だったね」
歩乃華は机に肘をつきながら、今日の出来事を振り返っていた。
「本当に保健室に行かなくて大丈夫?」
私は歩乃華の顔を見つめた。
あれから何度も聞いて、歩乃華は何度も否定していたけど、それでも心配だった。
私を気遣って、痛いのに痛くないふりをしているとか。気づいていないだけで本当は切り傷があるとか。
「大丈夫だって。どこも怪我してないよ」
歩乃華は微笑みながら答えた。
「髪の毛で隠れて見えてないだけで、本当はどこかに傷があるかも」
私はまだ不安が拭えず、彼女の髪の毛を見つめながら言った。
「ないない。痛いところなんてないんだから。心配しなくて大丈夫だよ」
歩乃華は優しく言い返した。
その言葉に、私は少しだけほっとした。
「分かった…。あの子と、一回も話せなかったな、」
私は教室の外を見ながら呟いた。
「あんな奴の心配なんかしなくていいよ」
歩乃華は強い口調で言った。
「だって…、」
私はまだ心配が拭えず、歩乃華の顔を見つめた。
「ほんっと、どんだけお人好しなんだか」
昼休み、話しかけようと思っていたのにチャイムが鳴るなり飛び出して行った。
昼休みだけじゃなくて。
「休み時間になる度に飛び出して行くなんて」
彼女の行動が理解できなかった。
「私に髪の毛引っ張られて怖気付いたんじゃない?まぁ、そんな小心者だとは思えないけど。あれじゃない?悔しくて血眼で証拠探しでもしてるとか。一生やっとけ。証拠なんて一生出てこないんだから」
あの目は…。
あの表情は、悔しいという感情では無い気がする。
「そんな感じには思えなかったけど…」
私は彼女の行動を思い返しながら言った。
何かに怯えてるような…
私の思い過ごしかな。
「あ、分かった!私が怖くて、ビビって逃げてるんだよ!」
歩乃華は自信満々に言った。
歩乃華を怖がって…
うん。そうかもしれない。
「そうかもね、」
私は歩乃華の言葉に同意した。
「私の勝ちだ!」
歩乃華は誇らしそうに言った。
「もう、勝ち負けじゃないんだよ」
「懲りて大人しくしてくれればいいんだけど」
歩乃華は少しだけ不安そうに言った。
「犯人探しか…」
私は呟くように言った。
犯人を探すことが必要だったのかな。
「ん?美月も犯人探しする気になった?」
歩乃華は驚いたように言った。
「私は、犯人探しをしないことがみんなの為になると思ってた」
みんなの仲が壊れないように。
誰か傷つく人がいないように。
「うん。犯人探しをしていたら、今頃…みんな疑心暗鬼だっただろうね」
歩乃華は同意してくれた。
「だけど…本当は自分の為だったのかも。なんて思っちゃった」
犯人探しを避けたのは、自分が傷つくのを恐れていたからかもしれない。
みんなを理由にして、ただ自分が犯人を知るのが怖かった。
だけなのかもしれない。
窓から差し込む夕陽が教室を暖かく照らしている。
「いやぁ、今日は大変だったね」
歩乃華は机に肘をつきながら、今日の出来事を振り返っていた。
「本当に保健室に行かなくて大丈夫?」
私は歩乃華の顔を見つめた。
あれから何度も聞いて、歩乃華は何度も否定していたけど、それでも心配だった。
私を気遣って、痛いのに痛くないふりをしているとか。気づいていないだけで本当は切り傷があるとか。
「大丈夫だって。どこも怪我してないよ」
歩乃華は微笑みながら答えた。
「髪の毛で隠れて見えてないだけで、本当はどこかに傷があるかも」
私はまだ不安が拭えず、彼女の髪の毛を見つめながら言った。
「ないない。痛いところなんてないんだから。心配しなくて大丈夫だよ」
歩乃華は優しく言い返した。
その言葉に、私は少しだけほっとした。
「分かった…。あの子と、一回も話せなかったな、」
私は教室の外を見ながら呟いた。
「あんな奴の心配なんかしなくていいよ」
歩乃華は強い口調で言った。
「だって…、」
私はまだ心配が拭えず、歩乃華の顔を見つめた。
「ほんっと、どんだけお人好しなんだか」
昼休み、話しかけようと思っていたのにチャイムが鳴るなり飛び出して行った。
昼休みだけじゃなくて。
「休み時間になる度に飛び出して行くなんて」
彼女の行動が理解できなかった。
「私に髪の毛引っ張られて怖気付いたんじゃない?まぁ、そんな小心者だとは思えないけど。あれじゃない?悔しくて血眼で証拠探しでもしてるとか。一生やっとけ。証拠なんて一生出てこないんだから」
あの目は…。
あの表情は、悔しいという感情では無い気がする。
「そんな感じには思えなかったけど…」
私は彼女の行動を思い返しながら言った。
何かに怯えてるような…
私の思い過ごしかな。
「あ、分かった!私が怖くて、ビビって逃げてるんだよ!」
歩乃華は自信満々に言った。
歩乃華を怖がって…
うん。そうかもしれない。
「そうかもね、」
私は歩乃華の言葉に同意した。
「私の勝ちだ!」
歩乃華は誇らしそうに言った。
「もう、勝ち負けじゃないんだよ」
「懲りて大人しくしてくれればいいんだけど」
歩乃華は少しだけ不安そうに言った。
「犯人探しか…」
私は呟くように言った。
犯人を探すことが必要だったのかな。
「ん?美月も犯人探しする気になった?」
歩乃華は驚いたように言った。
「私は、犯人探しをしないことがみんなの為になると思ってた」
みんなの仲が壊れないように。
誰か傷つく人がいないように。
「うん。犯人探しをしていたら、今頃…みんな疑心暗鬼だっただろうね」
歩乃華は同意してくれた。
「だけど…本当は自分の為だったのかも。なんて思っちゃった」
犯人探しを避けたのは、自分が傷つくのを恐れていたからかもしれない。
みんなを理由にして、ただ自分が犯人を知るのが怖かった。
だけなのかもしれない。
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