高嶺の花には彼氏ができない!?

hayama_25

文字の大きさ
上 下
40 / 56
絆の花

第39話:疑惑の矢

しおりを挟む
 そう言ったのは、ドレスが破られた日、犯人は私だって陰口を言っていた子だった。

 私はその言葉に驚き、立ち尽くした。

「ちょっと美月になんてこと言うのよ!」

 歩乃華が何も言えない私の代わりに怒ってくれた。

「ドレスの件の時から思ってたけど、全部あんたが仕組んだことじゃないの」

 その言葉に、私は心臓が締め付けられそうな思いだった。

「だから、私はそんなことしてないよ」

 私は必死に反論した。

 あの時、分かって貰えたと思ったのに。

「そうよ!どうして美月がそんなことするのよ!劇の練習一番頑張ってたのは美月なんだよ!?」

 歩乃華…。

 歩乃華の言葉に、私は少し救われた気がした。

「だからだよ」

 その冷たい言葉に、私は再び不安に襲われた。

「だから?」

 私は不安な気持ちで尋ねた。

「一番練習を頑張っておけば、自分は犯人だって思われないだろうって魂胆なのよ」

 そんな風に思われてたなんて。

 私は、そんなために練習を頑張ってたわけじゃないのに。

 私はただ、みんなのために…。

 涙が溢れそうになった。

「あんたどれだけひねくれてるわけ!?」

 歩乃華が再び怒りを露わにした。

「犯人探しを頑なにしようとしないのも、自分が犯人だってバレたくないから。悲劇のヒロインを演じて、その癖に犯人のことを庇えば自分の株が上がるって思ったんだよ」

 全部、全部間違ってる。

「私が犯人探しをしようとしなかったのは、せっかく文化祭のおかげで仲良くなったのに、それが台無しになる方が嫌だったから」

 どうしたら分かってもらえるだろうか。

 私だけが我慢すれば終わる話。

 犯人探しをすることで、みんなの仲が崩れる方がいやだから。

「美月は自分が犠牲になっても、他の人が喜ぶならそれでいいって思う子なのよ!そんな子がこんな悪質なことするわけないでしょ!?」

 歩乃華も説得しようとしてくれた。

「さぁ、どうだか」

 その冷たい言葉に、私は心が折れそうになった。

「あんたねぇ!」

 歩乃華がさらに声を荒げた。

「ねぇ、」

 今までずっと黙って聞いていた蒼大が口を開いた。

「な、何よ」

 彼女の声には苛立ちが滲んでいた。

「あの時、俺が言ったこともう忘れたの」

「は?あの時?なんの事だかさっぱり」

 彼女は困惑した様子だった。

「次、理由もなく美月のこと傷つけようとしたら許さない。そう言ったはずだけど」

「理由なら今言った通りだけど」

 彼女の声は冷たかった。

「美月が犯人だって証拠あんの?ないよな?美月は犯人じゃないからな」

 私の大切な人達が私のことを信じてくれる。
 それで十分だった。

「…ないけど、私は勝手に黒だと思っとく」


 その言葉に、私はもう何かを言う気力すらなくなって、ただ立ち尽くすしかなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにて先行更新中

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

偏屈な辺境伯爵のメイドに転生しましたが、前世が秋葉原ナンバーワンメイドなので問題ありません

八星 こはく
恋愛
【愛されスキルで溺愛されてみせる!伯爵×ぽんこつメイドの身分差ラブ!】 「私の可愛さで、絶対ご主人様に溺愛させてみせるんだから!」 メイドカフェ激戦区・秋葉原で人気ナンバー1を誇っていた天才メイド・長谷川 咲 しかし、ある日目が覚めると、異世界で別人になっていた! しかも、貧乏な平民の少女・アリスに生まれ変わった咲は、『使用人も怯えて逃げ出す』と噂の伯爵・ランスロットへの奉公が決まっていたのだ。 使用人としてのスキルなんて咲にはない。 でも、メイドカフェで鍛え上げた『愛され力』ならある。 そう決意し、ランスロットへ仕え始めるのだった。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...