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絆の花
第30話:逆境を乗り越えて
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驚いて顔を上げると、蒼大の背中が見えた。
蒼大はそのまま二人の方に向かって歩み寄り、怒りを抑えた声で言った。
「ねぇ、それ本気で言ってる?」
後ろ姿だけで怒りに満ちていることが分かった。
蒼大が私のために怒ってくれていることに、少しだけ救われる気がした。
「そ、蒼大くん、」
私は小さな声で呼びかけたけど、蒼大は振り返らずに続けた。
「質問に答えて。美月がしたって本気で思ってる?」
蒼大の声が冷たく響く。
私は彼の背中を見つめながら、心臓がドキドキしていた。
「だって、文化祭台無しにして得するのって美月ちゃんぐらいだから」
得するなんて思われてたんだ。
胸が痛み、涙がこぼれそうになる。
「美月がどんな気持ちで劇に参加してると思ってるの」
蒼大の言葉に、私は少し驚いた。
「どんなって…」
二人は言葉に詰まる。
「自分のせいで文化祭を台無しにするわけにはいかないって。毎日毎日練習して、監督からも演技を褒められることが増えた」
蒼大にはそのこと話してなかったのに、ちゃんと分かってくれてたんだ。
「知らなかった、」
「知らなかった…?じゃあ、あんたらはなんも知らずに美月が犯人だって陰口叩いてたんだ」
あれ、蒼大の口調が…なんだか別人みたい。
「別に陰口なんて?ね、柚沙」
「そ、そうそう。そうじゃないかなー。って推理?してただけだから」
推理か、
「あんたらって人の気持ち考えられないんだな」
こんな蒼大初めて見た。
「そんなこと」
「もしその話を本人が聞いてたらどうすんの?それに他の人が聞いて勘違いして変な噂が立ったらあんたら責任取れんの?」
「それは、」
「取れんのかって聞いてんだけど」
私のためにこんなに怒ってくれるなんて。
「取れないです…で、でも!勘違いされる方も悪いんじゃないの?私たちばっかり責められてるけど」
「あ…?」
蒼大の声がさらに冷たく響く。
「ひぃ」
「何もう一回言って」
「なんでもないです。すみませんでした」
まだ納得してないみたいだけど…
「次、理由もなく美月のこと傷つけようとしたら…な?分かってるよな?」
蒼大の言葉に、私は胸が熱くなる。
「も、もちろんです…」
二人の返事に、私は少しだけ安心する。
「じゃあもう目の前から消えてくれる?目障りだから」
消えてくれるとか目障りとか、普段の蒼大は絶対に言わないのに。
相当怒ってるんだろな、
「はい!失礼します!」
二人がだんだん近づいてくる。
その瞬間、目が合った。
そこまで言われて、私もなにか一言ぐらい言った方がいいのかな。
ふざけるんじゃないわよ!とか、それとも…
いや、ほんとに言いたいことはそんなんじゃない。
「二人に認められるように、もっと演技頑張るね」
私が本当に伝えたいことは、
私は、文化祭をこの劇をほんとに成功させたいと思ってるってこと。
二人は気まずそうに頭を下げて通り過ぎて行った。
蒼大はそのまま二人の方に向かって歩み寄り、怒りを抑えた声で言った。
「ねぇ、それ本気で言ってる?」
後ろ姿だけで怒りに満ちていることが分かった。
蒼大が私のために怒ってくれていることに、少しだけ救われる気がした。
「そ、蒼大くん、」
私は小さな声で呼びかけたけど、蒼大は振り返らずに続けた。
「質問に答えて。美月がしたって本気で思ってる?」
蒼大の声が冷たく響く。
私は彼の背中を見つめながら、心臓がドキドキしていた。
「だって、文化祭台無しにして得するのって美月ちゃんぐらいだから」
得するなんて思われてたんだ。
胸が痛み、涙がこぼれそうになる。
「美月がどんな気持ちで劇に参加してると思ってるの」
蒼大の言葉に、私は少し驚いた。
「どんなって…」
二人は言葉に詰まる。
「自分のせいで文化祭を台無しにするわけにはいかないって。毎日毎日練習して、監督からも演技を褒められることが増えた」
蒼大にはそのこと話してなかったのに、ちゃんと分かってくれてたんだ。
「知らなかった、」
「知らなかった…?じゃあ、あんたらはなんも知らずに美月が犯人だって陰口叩いてたんだ」
あれ、蒼大の口調が…なんだか別人みたい。
「別に陰口なんて?ね、柚沙」
「そ、そうそう。そうじゃないかなー。って推理?してただけだから」
推理か、
「あんたらって人の気持ち考えられないんだな」
こんな蒼大初めて見た。
「そんなこと」
「もしその話を本人が聞いてたらどうすんの?それに他の人が聞いて勘違いして変な噂が立ったらあんたら責任取れんの?」
「それは、」
「取れんのかって聞いてんだけど」
私のためにこんなに怒ってくれるなんて。
「取れないです…で、でも!勘違いされる方も悪いんじゃないの?私たちばっかり責められてるけど」
「あ…?」
蒼大の声がさらに冷たく響く。
「ひぃ」
「何もう一回言って」
「なんでもないです。すみませんでした」
まだ納得してないみたいだけど…
「次、理由もなく美月のこと傷つけようとしたら…な?分かってるよな?」
蒼大の言葉に、私は胸が熱くなる。
「も、もちろんです…」
二人の返事に、私は少しだけ安心する。
「じゃあもう目の前から消えてくれる?目障りだから」
消えてくれるとか目障りとか、普段の蒼大は絶対に言わないのに。
相当怒ってるんだろな、
「はい!失礼します!」
二人がだんだん近づいてくる。
その瞬間、目が合った。
そこまで言われて、私もなにか一言ぐらい言った方がいいのかな。
ふざけるんじゃないわよ!とか、それとも…
いや、ほんとに言いたいことはそんなんじゃない。
「二人に認められるように、もっと演技頑張るね」
私が本当に伝えたいことは、
私は、文化祭をこの劇をほんとに成功させたいと思ってるってこと。
二人は気まずそうに頭を下げて通り過ぎて行った。
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