上 下
17 / 46
絆の花

第16話:揺れる心と新たな一歩

しおりを挟む
「美月おめでとう!」
 歩乃華が笑顔で駆け寄ってきた。

「ありがとう。歩乃華のおかげだよ。あの後大丈夫だった?」

「うん。まぁ、暴れてはいたけどね」
 歩乃華は肩をすくめた。

「大変だったよね」

 ほんとに、申し訳ない。
 お兄ちゃんがどんなに面倒臭いか、私が1番よく分かってるから。

「いいんだよ。てか、美月の方こそ大丈夫だった?付き合うこと納得してくれたの?」

 歩乃華は優しく問いかけた。

「それが…」
 私は視線を落とし、言葉を濁した。


 ___




「お、お兄ちゃんおかえり」
 玄関でお兄ちゃんを迎えた。

 内心はドキドキだった。

「ただいま」
 お兄ちゃんは靴を脱ぎながら答えた。

「あの、」
 私は少し緊張しながら口を開いた。

「蒼大くんと付き合ったんでしょ?」
 私の緊張を他所に、お兄ちゃんは何気なく言った。

「うん、」

 バレてるとは思ったけど、
 なんて言われるのか、怖い。

 認めない?
 許さない?
 今すぐ別れろ?

 それとも…

「良かったね」
 そう言ってお兄ちゃんは微笑んだ。

 ヨカッタ?

「…え?」
 私の、聞き間違い、だよね、

「ん?」
 お兄ちゃんは首をかしげた。

「い、今良かったねって、」
「うん。そう言ったよ」

 聞き間違いじゃない…、?

「それだけ…?」
 もっと他に何か、言われると思ってたのに、

「それだけだけど?…あ、」
「な、何、」

「おめでとう」
 お兄ちゃんは再び微笑んだ。

「あ、ありがとう…」

 私は少し戸惑いながらも感謝の言葉を返した。


 ___




「ビックリするぐらい何も無かったんだよ?あのお兄ちゃんがだよ?おかしくない?」

 今までのお兄ちゃんの行動を見てる限り、

 止めるどころか応援するなんて。

 未だに信じられない。

「まぁ、蒼大くんだし?非の打ち所がないからじゃない?」

「そうなのかな」

 ほんとにそれだけなのかな。

 なんか、いつもより口数が少ない気もするし、

 嫌々認めてくれてるような気もする。
 嫌々認めるって柄でもないか…

 でも、何か、とにかくおかしい。

「美月おはよう」
「あ、蒼大。おはよう」

 なんか、蒼大の顔みてたら悩み事も全部吹っ飛んじゃった。

「ヒューヒュー!朝からお熱いですね!」
「もう、からかわないでよ」

「歩乃華ちゃん、昨日はありがとう」
「いいってことよ!」

 私達の会話を聞いていたのか、クラスメイトの一人が声をかけてきた。

「美月、蒼大くんと付き合ってるって本当?」

「うん、そうだよ」
 私は少し照れながら答えた。

「そ、うなんだ」

 その瞬間、クラスメイトが一斉に集まって来た。

「すごい!おめでとう!」
「ありがとう」

「どっちから告白したの?」
「俺からだよ」

「キャー!」

 その後も質問は続き…



 私は笑顔で答えたけど、心の中ではまだお兄ちゃんの反応が気になっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。

あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。 夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中) 笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。 え。この人、こんな人だったの(愕然) やだやだ、気持ち悪い。離婚一択! ※全15話。完結保証。 ※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。 今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。 第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』 第二弾『そういうとこだぞ』 第三弾『妻の死で思い知らされました。』 それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。 ※この話は小説家になろうにも投稿しています。 ※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。

最低な俺は、妹が寝ている間にいたずらする

布施鉱平
恋愛
 タイトルにすべてが込められています。  R18作品です。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜

k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」 そう婚約者のグレイに言われたエミリア。 はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。 「恋より友情よね!」 そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。 本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。

殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。 真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。 そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが… 7万文字くらいのお話です。 よろしくお願いいたしますm(__)m

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く

ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。 逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。 「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」 誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。 「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」 だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。 妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。 ご都合主義満載です!

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

処理中です...