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25話ハッピーバースディ
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「衛さん、私達いつも家事頑張ってますよね」
「え? ああまぁそうだな」
「お皿荒いに洗濯に掃除機かけたり、僕たち頑張ってますよね!?」
「お、おう」
藍と翡翠、付喪神の姉弟が衛に突然そんな事を言ってきたので何事かと衛は身構えた。
「お願いがあります!」
「どうしたんだ?」
「実は……来週の日曜日は私達の誕生日なんです」
「ああ、そうなんだ」
衛はなんだそんな事か、と肩の荷を降ろした。そんな衛にずいっと藍は近づいた。
「いいですか、私達が付喪神になってから一周年なんです」
「おー、なるほど」
「それでこの間、私インターネットで調べたんですけど」
「おいおい、いつの間にパソコン使えるようになってるんだ」
付喪神達は衛達と暮らすうちに現代の文明の利器にいつの間にか親しくなっていた。
「一歳の誕生を祝ってやる一升餅っている行事があるみたいじゃないですか」
藍が思い詰めた表情で切り出した。翡翠が続いて手を三つ指にして衛に懇願した。
「衛さん、居候の身で申し訳ありません、一生のお願いです。一升餅をやってくれませんか」
「一生のお願いですって……君たちご飯食べないだろ」
「ええ、ですからお餅は載っけるだけで……」
付喪神達の必死のお願いに、衛はいつも世話になっているしこれくらいやってもいいかなと思った。
「いいよ、二人の付喪神になって一周年記念やろう」
「本当ですか!」
「良かったねぇ、姉様」
衛の言葉に藍と翡翠は手を取り合って喜んだ。衛はその場で伊勢屋に餅の注文をしに行き、その場でスーパーに寄った。
「どうせだから豪勢にいこう。二人……びっくりするかな」
そして日曜の当日がやって来た。誕生日会の準備をするからと衛は早々に藍と翡翠を家から追い出して準備に取りかかった。
「瑞葉、お手伝いしてくれるか」
「うん、ご馳走作るんだね」
「まあ材料費は大した事ないけどね」
衛は人参とタマネギを細かくみじん切りにする。それをビニール手袋をはめた瑞葉が鶏のお腹に詰めていく。作ろうとしているのは丸鶏のローストチキンだ。実は毎年クリスマスのローストチキンは衛のお手製なのだ。仕事でいつも一緒にいられない代わりに家族でこれを作るのが恒例だったのだ。
「瑞葉、上手に入れられた?」
「うん!」
衛はその間に着くっておいたハーブにんにくバターを鶏の表面全体に塗っていく。さらに塩胡椒をして付け合わせの野菜とローズマリーを散らしてアルミホイルをかけてオーブンでじっくり30分焼く。全体に火がとおったら、今度はアルミを外して皮がぱりっとするまでオーブンで再度焼く。
「熱いから、気をつけろよ」
「うーん、いい匂い」
焼きたてのローストチキンから溢れた肉汁で、ソースも作る。肉汁に白ワインと蜂蜜を入れコンソメを入れて煮立たせる。
「さて、もう一丁」
衛は台所を一旦片付けると、今度は小麦粉を計る。ボールに卵とグラニュー糖を入れてハンドミキサーで泡立てる。衛は今度はケーキを作ろうとしていた。粉をふるい入れ、スポンジを焼く。
「ほら、お手伝いのお駄賃」
「わーい」
焼きたてスポンジのはじっこを貰った瑞葉は歓声を上げた。生クリームを塗って、瑞葉と一緒にイチゴやメロンのフルーツを盛り付けた。
「さ、もういいよ。瑞葉、藍と翡翠を呼んで来てくれ」
「はーい」
瑞葉が二人を呼びに行く。瑞葉に手を引かれた藍と翡翠が目をつむりながら現れた。
「藍ちゃん、翡翠くんもういいよ」
二人が目を開けるとそこにはローストチキンと手作りケーキが並んでいた。
「すごい……これ作ったんですか?」
「もしかしてこれ僕達に載っけて貰えるの!?」
「ああそうだよ」
衛がそう答えると、二人は手を取り合って喜んだ。
「嘘、夢みたい」
藍が思わず涙ぐむ。
「おいおい泣いてちゃ、ケーキが盛れないよ。さ、お皿になってくれ」
「は、はい……」
二人はさっと皿の姿に戻った。藍の上にはケーキを、翡翠の上にはケーキを盛った。
「瑞葉、ミユキさんを呼んでおいで」
「はーい」
さて、ミユキを加えて家族で付喪神を囲う。
「はっぴバースデーあーいちゃーん、はっぴバースデーひすーいくん」
瑞葉が誕生日の歌を歌う。
『本当にありがとうございます』
「うん、二人にはお世話になってるから」
こうして付喪神はご馳走を盛ってもらって感激し、人間達はご馳走に舌鼓を打った。
「衛、これはワインに合うね」
あやかしに誕生日なんて、と愚痴っていたミユキもローストチキンを食べた途端に笑顔になった。
「さ、次は一升餅でーす」
上に載っていた食べ物を別の皿に移し、洗った後に衛は用意していた餅を二人に載っけた。
「本当は一生ごはんに困らないようにって意味らしいんだけど」
『末永くごはんを盛って貰えますように……ですかね』
コロコロと藍の笑い声が響いた。
『僕達は幸せな付喪神だね、姉様』
翡翠は感慨深げにそう言うと、人間の姿に戻った。
『今日はありがとうございます』
藍も人の姿になって人間達にお礼を述べた。
『私たち、これからも家事や育児をがんばります……!』
藍のその宣言を聞いて、衛はこんなにあやかしをこきつかっていいんだろうかと少々考えてしまったが、二人が嬉しそうなのでまあいいかと思い直した。
こうして奇妙な付喪神の誕生日会は幕を閉じたのである。
「え? ああまぁそうだな」
「お皿荒いに洗濯に掃除機かけたり、僕たち頑張ってますよね!?」
「お、おう」
藍と翡翠、付喪神の姉弟が衛に突然そんな事を言ってきたので何事かと衛は身構えた。
「お願いがあります!」
「どうしたんだ?」
「実は……来週の日曜日は私達の誕生日なんです」
「ああ、そうなんだ」
衛はなんだそんな事か、と肩の荷を降ろした。そんな衛にずいっと藍は近づいた。
「いいですか、私達が付喪神になってから一周年なんです」
「おー、なるほど」
「それでこの間、私インターネットで調べたんですけど」
「おいおい、いつの間にパソコン使えるようになってるんだ」
付喪神達は衛達と暮らすうちに現代の文明の利器にいつの間にか親しくなっていた。
「一歳の誕生を祝ってやる一升餅っている行事があるみたいじゃないですか」
藍が思い詰めた表情で切り出した。翡翠が続いて手を三つ指にして衛に懇願した。
「衛さん、居候の身で申し訳ありません、一生のお願いです。一升餅をやってくれませんか」
「一生のお願いですって……君たちご飯食べないだろ」
「ええ、ですからお餅は載っけるだけで……」
付喪神達の必死のお願いに、衛はいつも世話になっているしこれくらいやってもいいかなと思った。
「いいよ、二人の付喪神になって一周年記念やろう」
「本当ですか!」
「良かったねぇ、姉様」
衛の言葉に藍と翡翠は手を取り合って喜んだ。衛はその場で伊勢屋に餅の注文をしに行き、その場でスーパーに寄った。
「どうせだから豪勢にいこう。二人……びっくりするかな」
そして日曜の当日がやって来た。誕生日会の準備をするからと衛は早々に藍と翡翠を家から追い出して準備に取りかかった。
「瑞葉、お手伝いしてくれるか」
「うん、ご馳走作るんだね」
「まあ材料費は大した事ないけどね」
衛は人参とタマネギを細かくみじん切りにする。それをビニール手袋をはめた瑞葉が鶏のお腹に詰めていく。作ろうとしているのは丸鶏のローストチキンだ。実は毎年クリスマスのローストチキンは衛のお手製なのだ。仕事でいつも一緒にいられない代わりに家族でこれを作るのが恒例だったのだ。
「瑞葉、上手に入れられた?」
「うん!」
衛はその間に着くっておいたハーブにんにくバターを鶏の表面全体に塗っていく。さらに塩胡椒をして付け合わせの野菜とローズマリーを散らしてアルミホイルをかけてオーブンでじっくり30分焼く。全体に火がとおったら、今度はアルミを外して皮がぱりっとするまでオーブンで再度焼く。
「熱いから、気をつけろよ」
「うーん、いい匂い」
焼きたてのローストチキンから溢れた肉汁で、ソースも作る。肉汁に白ワインと蜂蜜を入れコンソメを入れて煮立たせる。
「さて、もう一丁」
衛は台所を一旦片付けると、今度は小麦粉を計る。ボールに卵とグラニュー糖を入れてハンドミキサーで泡立てる。衛は今度はケーキを作ろうとしていた。粉をふるい入れ、スポンジを焼く。
「ほら、お手伝いのお駄賃」
「わーい」
焼きたてスポンジのはじっこを貰った瑞葉は歓声を上げた。生クリームを塗って、瑞葉と一緒にイチゴやメロンのフルーツを盛り付けた。
「さ、もういいよ。瑞葉、藍と翡翠を呼んで来てくれ」
「はーい」
瑞葉が二人を呼びに行く。瑞葉に手を引かれた藍と翡翠が目をつむりながら現れた。
「藍ちゃん、翡翠くんもういいよ」
二人が目を開けるとそこにはローストチキンと手作りケーキが並んでいた。
「すごい……これ作ったんですか?」
「もしかしてこれ僕達に載っけて貰えるの!?」
「ああそうだよ」
衛がそう答えると、二人は手を取り合って喜んだ。
「嘘、夢みたい」
藍が思わず涙ぐむ。
「おいおい泣いてちゃ、ケーキが盛れないよ。さ、お皿になってくれ」
「は、はい……」
二人はさっと皿の姿に戻った。藍の上にはケーキを、翡翠の上にはケーキを盛った。
「瑞葉、ミユキさんを呼んでおいで」
「はーい」
さて、ミユキを加えて家族で付喪神を囲う。
「はっぴバースデーあーいちゃーん、はっぴバースデーひすーいくん」
瑞葉が誕生日の歌を歌う。
『本当にありがとうございます』
「うん、二人にはお世話になってるから」
こうして付喪神はご馳走を盛ってもらって感激し、人間達はご馳走に舌鼓を打った。
「衛、これはワインに合うね」
あやかしに誕生日なんて、と愚痴っていたミユキもローストチキンを食べた途端に笑顔になった。
「さ、次は一升餅でーす」
上に載っていた食べ物を別の皿に移し、洗った後に衛は用意していた餅を二人に載っけた。
「本当は一生ごはんに困らないようにって意味らしいんだけど」
『末永くごはんを盛って貰えますように……ですかね』
コロコロと藍の笑い声が響いた。
『僕達は幸せな付喪神だね、姉様』
翡翠は感慨深げにそう言うと、人間の姿に戻った。
『今日はありがとうございます』
藍も人の姿になって人間達にお礼を述べた。
『私たち、これからも家事や育児をがんばります……!』
藍のその宣言を聞いて、衛はこんなにあやかしをこきつかっていいんだろうかと少々考えてしまったが、二人が嬉しそうなのでまあいいかと思い直した。
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