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「これはこっちの部屋でいいんだよねー!」
ランが箱を抱えてレクスを呼ぶと、慌ててレクスが飛んで来た。
「ラン……! 重い物を持つなって言ったろう」
「え、これくらい平気だって」
ランは心配性なレクスを見て笑った。
レクス達一家は王城から郊外に居を移して、今は引っ越し作業の真っ最中だ。
そして、ランのお腹の中には新しい命が宿っている……はずだ。
「これ、はこぶ!」
「ルゥ」
「おにいちゃんだから」
そして先日、弟が出来るよと知らさせたルゥはやる気まんまんだ。
「ああもう、全部俺が運ぶから……」
レクスは二人の間で右往左往し、ロランドはその様子を見て苦笑している。
「ここは私がやりますから、お二人の寝室を片付けてください」
王城で居室としていた空間より、この部屋は狭い。今日からは寝室も一緒だ。
「だってさ、ほらレクス行こう」
「あ、ああ」
レクスはランと一緒に寝室に入ると、荷物の仕分けをはじめた。
「これ……みんなルゥの赤ん坊の頃の物か」
「ああ、そうだよ。ほら見て、この靴下」
それはとても小さくて、レクスは親指しか入らないんじゃないかと思ったくらいだ。
「小さい」
「とっといて良かった。下の子に使える」
「それは新しいの買おうよ」
「えー、でもレクスもオレも今、無職じゃない。節約しないと」
「仕事は来月に勤めが決まってるって言ったろ。せっかくだから買ってやりたいんだ。ルゥの時にはできなかったし」
「……そっか」
それを言われるとランは弱い。今だってルゥは滅茶苦茶に可愛いけれどやっぱり赤ん坊の頃は格別だとランも思っているからだ。
「ごめん、ちょっと言い過ぎた」
「そんなことない」
「でも……」
レクスはランが無口になってしまったので慌てて立ち上がった。その拍子に箱のひとつをぶちまける。
「あーあー」
「ごめん……ん?」
「どうした?」
「これ、なに?」
その箱から転がり出た物を見て、レクスは目を丸くした。
それは……ランが昔使った張り型だったからだ。
「こんなの使ってたのか?」
「ちょっと!」
「意外だな」
「ビィから貰ったんだよ! 使ったのも一回だけ!」
ランはレクスの手から張り型を奪い返した。
「貰った物捨てるのも悪いだろう……」
「そっか……今度使って見ようか」
「バカ!」
ランはレクスの頭をはたいた。
「冗談なのに……」
怒られたレクスは今度は真面目に荷解きをはじめ、それから二人は黙々と作業に没頭した。
「ふう、こんなもんかな」
「休憩にしよう」
ある程度片付いたところで、レクスはランに声をかける。
「無理は禁物だよ」
レクスは愛おしげにまだ膨らんでもいないランのお腹を撫でる。
そのくすぐったい感触に、ランはケラケラと声をあげて笑った。
「そっか、じゃあルゥの面倒みててくれる? ちょっとやりたいことがあるんだ」
「何?」
「……手紙を書こうと思う」
「手紙?」
「うん、ビィに会いたいって手紙と……オレの家族にも」
「ああ」
ランは机の上に真っ白な便せんを広げる。
「きっと喜んでくれるよ」
「そうだね。さぁ……何から書こうか」
ランは、ペンを手にすると少し迷ったあとに文字を綴りはじめた。
時々迷いながらもそこに印すのは、レクスと出会った日からの色々……。
そして最愛の我が子のこと。
――それから今とても、幸せだということ。
それらを書き連ねて、ランは手紙を大切に封をした。
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最後までお読み戴きありがとうございました。
BL小説大賞エントリー中です。
お気に召しましたら、是非投票をお願いいたします。
ランが箱を抱えてレクスを呼ぶと、慌ててレクスが飛んで来た。
「ラン……! 重い物を持つなって言ったろう」
「え、これくらい平気だって」
ランは心配性なレクスを見て笑った。
レクス達一家は王城から郊外に居を移して、今は引っ越し作業の真っ最中だ。
そして、ランのお腹の中には新しい命が宿っている……はずだ。
「これ、はこぶ!」
「ルゥ」
「おにいちゃんだから」
そして先日、弟が出来るよと知らさせたルゥはやる気まんまんだ。
「ああもう、全部俺が運ぶから……」
レクスは二人の間で右往左往し、ロランドはその様子を見て苦笑している。
「ここは私がやりますから、お二人の寝室を片付けてください」
王城で居室としていた空間より、この部屋は狭い。今日からは寝室も一緒だ。
「だってさ、ほらレクス行こう」
「あ、ああ」
レクスはランと一緒に寝室に入ると、荷物の仕分けをはじめた。
「これ……みんなルゥの赤ん坊の頃の物か」
「ああ、そうだよ。ほら見て、この靴下」
それはとても小さくて、レクスは親指しか入らないんじゃないかと思ったくらいだ。
「小さい」
「とっといて良かった。下の子に使える」
「それは新しいの買おうよ」
「えー、でもレクスもオレも今、無職じゃない。節約しないと」
「仕事は来月に勤めが決まってるって言ったろ。せっかくだから買ってやりたいんだ。ルゥの時にはできなかったし」
「……そっか」
それを言われるとランは弱い。今だってルゥは滅茶苦茶に可愛いけれどやっぱり赤ん坊の頃は格別だとランも思っているからだ。
「ごめん、ちょっと言い過ぎた」
「そんなことない」
「でも……」
レクスはランが無口になってしまったので慌てて立ち上がった。その拍子に箱のひとつをぶちまける。
「あーあー」
「ごめん……ん?」
「どうした?」
「これ、なに?」
その箱から転がり出た物を見て、レクスは目を丸くした。
それは……ランが昔使った張り型だったからだ。
「こんなの使ってたのか?」
「ちょっと!」
「意外だな」
「ビィから貰ったんだよ! 使ったのも一回だけ!」
ランはレクスの手から張り型を奪い返した。
「貰った物捨てるのも悪いだろう……」
「そっか……今度使って見ようか」
「バカ!」
ランはレクスの頭をはたいた。
「冗談なのに……」
怒られたレクスは今度は真面目に荷解きをはじめ、それから二人は黙々と作業に没頭した。
「ふう、こんなもんかな」
「休憩にしよう」
ある程度片付いたところで、レクスはランに声をかける。
「無理は禁物だよ」
レクスは愛おしげにまだ膨らんでもいないランのお腹を撫でる。
そのくすぐったい感触に、ランはケラケラと声をあげて笑った。
「そっか、じゃあルゥの面倒みててくれる? ちょっとやりたいことがあるんだ」
「何?」
「……手紙を書こうと思う」
「手紙?」
「うん、ビィに会いたいって手紙と……オレの家族にも」
「ああ」
ランは机の上に真っ白な便せんを広げる。
「きっと喜んでくれるよ」
「そうだね。さぁ……何から書こうか」
ランは、ペンを手にすると少し迷ったあとに文字を綴りはじめた。
時々迷いながらもそこに印すのは、レクスと出会った日からの色々……。
そして最愛の我が子のこと。
――それから今とても、幸せだということ。
それらを書き連ねて、ランは手紙を大切に封をした。
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