【完結】出来損ないのオメガですが王族アルファに寵愛されてます~二度目の恋は天使と踊る~

高井うしお

文字の大きさ
上 下
76 / 82

23話 これから

しおりを挟む
 それからはランは絶対安静をレクスから言い渡され、ひたすら寝てすごした。
 窓辺に立つことすら嫌がるレクスの過保護ぶりにはうんざりしたが、それだけ心配をかけたのだと思ってレクスのしたいようにさせた。
 そんな日が三日ほど経った時のことだ。

「お加減はいかがかな」
「大丈夫ですか、ランさん」
「アレン様、ウォルさん……?」

 なんとアレンがウォルを伴って見舞いにやってきたのだ。

「こ、こんなところに来て大丈夫ですか?」
「ああ、レクスから許可を貰ってる」
「そうですか」

 ランはレクスがアレンにそんな許可を出すことがちょっと信じられなかったが、実際こうやって来ているということは確かにレクスが許したんだろうと思った。

「災難だったね、ラン」
「いえ、結果無事でしたから」

 アレンはそう言うランの顔をじっと見た。その顔は殴られたあざがまだ紫色に残っている。

「しかし、怪我をしたじゃないか」
「これは……見た目が派手なだけで大したことはないです」
「そうなのか……?」

 アレンはそんなランを傷ましいと思いながら、それ以上言及することをやめた。

「それより、オレ……アレン様に謝らないと」
「なんだい?」
「攫われた時、最初アレン様がやったのかと思っちゃって」
「ああ……」

 そうランに頭を下げられて、アレンは苦笑しながら顎を撫でた。

「そうだねぇ……君とレクスの仲をかき回して王位継承権を奪おうとしていたのは確かだし……」

 笑顔のままでそう言うアレンの顔をランはじっと見る。

「でも、それだけじゃないでしょ」
「ふふ、かなわんなぁ」

 アレンは参った、と両手を広げた。

「レクスにべったりだった君が私に助けを求めたことに舞い上がって手を貸したのも事実だな」
「……実際、アレン様が居なかったらオレはどうしたらいいかわかりませんでした」

 ランが改めて礼を述べると、アレンはふっとため息をついた。

「私もオメガの伴侶を探すべきかな……? 私のことだけを見てくれる……」
「アレン様は素敵な人ですから、きっといい人が居ますよ」
「ははは……君とレクスの仲が羨ましい」

 アレンはそう言うと、くしゃくしゃとランの頭を撫でて部屋を出て行った。

「それにしてもアレン様が来るなんて……びっくりした」

 何か胸騒ぎを感じながら、アレンの去って行った扉の向こうを見ていると、部屋のドアがノックされた。

「はい」
「ラン、ちょっと話があるんだ」

 それはレクスだった。

「話……?」
「ああ、大事な話だ。こっちに来て聞いて欲しい」
「わかった」

 ランはベッドから起き上がり、居間に向かうと真剣な表情をしたレクスがソファに座っていた。
しおりを挟む
第8回BL小説大賞の投票がはじまりました。清き一票をお待ちしております。
感想 9

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき(藤吉めぐみ)
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

最強で美人なお飾り嫁(♂)は無自覚に無双する

竜鳴躍
BL
ミリオン=フィッシュ(旧姓:バード)はフィッシュ伯爵家のお飾り嫁で、オメガだけど冴えない男の子。と、いうことになっている。だが実家の義母さえ知らない。夫も知らない。彼が陛下から信頼も厚い美貌の勇者であることを。 幼い頃に死別した両親。乗っ取られた家。幼馴染の王子様と彼を狙う従妹。 白い結婚で離縁を狙いながら、実は転生者の主人公は今日も勇者稼業で自分のお財布を豊かにしています。

【完結済み】準ヒロインに転生したビッチだけど出番終わったから好きにします。

mamaマリナ
BL
【完結済み、番外編投稿予定】  別れ話の途中で転生したこと思い出した。でも、シナリオの最後のシーンだからこれから好きにしていいよね。ビッチの本領発揮します。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

死に戻り騎士は、今こそ駆け落ち王子を護ります!

時雨
BL
「駆け落ちの供をしてほしい」 すべては真面目な王子エリアスの、この一言から始まった。 王子に”国を捨てても一緒になりたい人がいる”と打ち明けられた、護衛騎士ランベルト。 発表されたばかりの公爵家令嬢との婚約はなんだったのか!?混乱する騎士の気持ちなど関係ない。 国境へ向かう二人を追う影……騎士ランベルトは追手の剣に倒れた。 後悔と共に途切れた騎士の意識は、死亡した時から三年も前の騎士団の寮で目覚める。 ――二人に追手を放った犯人は、一体誰だったのか? 容疑者が浮かんでは消える。そもそも犯人が三年先まで何もしてこない保証はない。 怪しいのは、王位を争う第一王子?裏切られた公爵令嬢?…正体不明の駆け落ち相手? 今度こそ王子エリアスを護るため、過去の記憶よりも積極的に王子に関わるランベルト。 急に距離を縮める騎士を、はじめは警戒するエリアス。ランベルトの昔と変わらぬ態度に、徐々にその警戒も解けていって…? 過去にない行動で変わっていく事象。動き出す影。 ランベルトは今度こそエリアスを護りきれるのか!? 負けず嫌いで頑固で堅実、第二王子(年下) × 面倒見の良い、気の長い一途騎士(年上)のお話です。 ------------------------------------------------------------------- 主人公は頑な、王子も頑固なので、ゆるい気持ちで見守っていただけると幸いです。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

処理中です...