【完結】出来損ないのオメガですが王族アルファに寵愛されてます~二度目の恋は天使と踊る~

高井うしお

文字の大きさ
上 下
67 / 82

20話 妃として

しおりを挟む
 それから数日後、朝から皆バタバタと祝賀パレードの準備に取りかかっていた。

「ママ、これみて」
「うんうん、かっこいいよ!」

 本日はルゥもおめかしをしている。レクスの白い礼服と揃いの上着に、胸元のシャツには大きなリボンがあしらってある。ルゥはそのリボンがずいぶん気に入ったらしい。

「王子様みたいだね」
「そのままずばりルゥは王子なんだけどな」
「あっ……そっか」
「それより、ランは仕度はもういいのか」
「うん」

 ランも白い上着に淡い藤色のズボンとサッシュベルトを身につけている。上着の刺繍はレクスの実家、バルトシーク家伝統のものだ。

「どう……?」
「綺麗だよ」

 レクスは美しく装った妻の額にキスをした。

「ではこれを」
「なに?」

 レクスから箱を手渡されて、ランは恐る恐るそれを開いた。

「わ……綺麗」
「今日は正式な場だから。それを身につけてくれ」

 レクスがランに手渡したものはティアラだった。

「レクスがつけてくれる?」
「いいとも」

 レクスの長く優美な指がキラキラと輝くティアラを手にして、ランの絹糸のような黒い髪を飾った。

「今日一日、よろしく妃殿下」
「こちらこそよろしくね。王太子殿下」

 二人は見つめ合いクスリと笑い会った。そこにせわしなくロランドがやってくる。

「馬車の用意ができました。三人とも、参りましょう」
「ああ」
「はい」

 こうして、ランの初めての公式公務の祝賀パレードがはじまったのである。

「ふー……」
「緊張してる?」

 馬車の座席について、深呼吸をしたランにレクスはそう聞いて来た。

「してるけど……大丈夫」
「笑顔で手をふればいい」
「そうだね」

 パレードでは馬車の中から沿道の国民に挨拶をすることになっている。みんな王太子一家がどんなかを楽しみにしているはずなのだ。

「では出発します」

 ロランドにそう声をかけられ、ランはすっと背筋を伸ばした。

「建国万歳! 王様万歳!」
「王太子殿下、万歳!」

 ガラガラと小気味よい音を立てて、馬車が出発した。広い王城の前庭に使用人達がこぞって立って手を挙げている横を通り、馬車は正門を抜ける。

「わぁぁぁっ!」

 途端に怒濤のような歓声が浴びせられる。

「うわっ、すごい……」

 ランは思わず勢いに飲み込まれそうになる。すると、レクスがきゅっとランの手を掴んだ。

「ラン」
「う、うん」

 レクスの体温を感じて、ランは少し落ち着きを取り戻した。

「ど、どーもぉ」

 ランは少し引き攣りながらも手を振り始める。

「お綺麗な方だ」
「あれがお子様ね。かわいい」

 街行く人は、初々しい妃とその子の姿を目に留めて、更に大きな喝采をあげた。
しおりを挟む
第8回BL小説大賞の投票がはじまりました。清き一票をお待ちしております。
感想 9

あなたにおすすめの小説

みにくいオメガの子

みこと
BL
オメガの由紀は高校を卒業するまでに番を見つけたい。しかし、他のオメガと違い全くモテない。お見合いも紹介もいつも散々な結果に終わっていた。 このまま誰にも必要とされずに一生を終えるかと不安になる。そんな由紀に驚きの事実が判明して…。 またもやオメガバースです。オメガバースの説明はありません。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。

美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

愛しい番の囲い方。 半端者の僕は最強の竜に愛されているようです

飛鷹
BL
獣人の国にあって、神から見放された存在とされている『後天性獣人』のティア。 獣人の特徴を全く持たずに生まれた故に獣人とは認められず、獣人と認められないから獣神を奉る神殿には入れない。神殿に入れないから婚姻も結べない『半端者』のティアだが、孤児院で共に過ごした幼馴染のアデルに大切に守られて成長していった。 しかし長く共にあったアデルは、『半端者』のティアではなく、別の人を伴侶に選んでしまう。 傷付きながらも「当然の結果」と全てを受け入れ、アデルと別れて獣人の国から出ていく事にしたティア。 蔑まれ冷遇される環境で生きるしかなかったティアが、番いと出会い獣人の姿を取り戻し幸せになるお話です。

処理中です...