上 下
60 / 82

18話 不安を消して★

しおりを挟む
「ラン、待たせた」

 しばらくして、ランを呼び止める声とともに部屋の扉が叩かれる。
 ランはノロノロと身を起こして、鍵を開けた。

「もういいの……?」
「ああ。少し早いが切り上げてきた。大丈夫か」
「うん、発情ヒートが始まっちゃったみたい」

 レクスの姿を見て、ランは体温が上がるのを感じた。

「そうか。じゃあラン、しっかり俺に掴まって」

 レクスはそういうと、ランを抱き上げて足早に控え室を後にした。

「はぁ……レクス……」

 レクスの居室に向かううちにも、ランの呼吸は荒くなっていく。その全身から湧き出すフェロモンの香りに、通りすがりの何人もが振り返る。
 その度にレクスはぎゅっとランを抱きしめた。

「……もう着くからな」
「うん」

 ランの香りに当てられて、レクスの声色も艶を増していく。レクスはもどかしくドアを開けると、自分の寝室にランを運び込み、ベッドに寝かせた。

「ラン……お前を抱きたい」
「レクス」
「まだ今なら間に合う。嫌なら言ってくれ」
「嫌じゃないよ」

 少し震えるながらランの頬を撫でるレクスの手をランは握りそっとキスをする。

「来て、レクス」

 発情ヒートによる欲望の高まりもあって、ランはレクスの体温をもっと感じたかった。強く強く抱きしめて、不安で自信のない自分を忘れさせて欲しいと思った。

「ラン……」

 そんなランに、レクスの口づけが振ってくる。軽く唇を食む、優しいキスはすぐに互いの舌を貪る激しいものに変わって行く。

「ラン、俺のものだ。俺の……」
「ふ……んっ……」

 レクスのうわごとのような囁きを耳朶に感じて、ランは軽く身をよじる。
 レクスはそんなランの体を引き戻して夜会服の前をはだけていく。

「んんっ……」

 裸の胸にキスを落とすと、ランはとろんとした顔でレクスを見つめた。

「綺麗だ」

 レクスは肩に背中にとキスを降り注ぎながら、ランの服を剥いでいく。
 そうしてランはいつの間にか、一糸まとわぬ姿に首輪チョーカーだけという格好になっていった。

「似合ってる」

 レクスはそっと首輪チョーカーを撫でる。白い肌に深紅に燃えるその首元にレクスは顔を寄せた。

「ラン……ああ、たまらない」

 深くランの香りを吸い込んで、レクスはカッと体の中心が熱くなるのを感じた。

「レクス、早く来て……」

 そうランがそっと囁くと、レクスは顔をしかめて上着を脱いだ。

「いいか? もう止められないからな」
「……うん」

 そしてその上着を乱暴に脱ぎ捨てると、ランの上に覆い被さった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者は愛を見つけたらしいので、不要になった僕は君にあげる

カシナシ
BL
「アシリス、すまない。婚約を解消してくれ」 そう告げられて、僕は固まった。5歳から13年もの間、婚約者であるキール殿下に尽くしてきた努力は一体何だったのか? 殿下の隣には、可愛らしいオメガの男爵令息がいて……。 サクッとエロ&軽めざまぁ。 全10話+番外編(別視点)数話 本編約二万文字、完結しました。 ※HOTランキング最高位6位、頂きました。たくさんの閲覧、ありがとうございます! ※本作の数年後のココルとキールを描いた、 『訳ありオメガは罪の証を愛している』 も公開始めました。読む際は注意書きを良く読んで下さると幸いです!

初恋の公爵様は僕を愛していない

上総啓
BL
伯爵令息であるセドリックはある日、帝国の英雄と呼ばれるヘルツ公爵が自身の初恋の相手であることに気が付いた。 しかし公爵は皇女との恋仲が噂されており、セドリックは初恋相手が発覚して早々失恋したと思い込んでしまう。 幼い頃に辺境の地で公爵と共に過ごした思い出を胸に、叶わぬ恋をひっそりと終わらせようとするが…そんなセドリックの元にヘルツ公爵から求婚状が届く。 もしや辺境でのことを覚えているのかと高揚するセドリックだったが、公爵は酷く冷たい態度でセドリックを覚えている様子は微塵も無い。 単なる政略結婚であることを自覚したセドリックは、恋心を伝えることなく封じることを決意した。 一方ヘルツ公爵は、初恋のセドリックをようやく手に入れたことに並々ならぬ喜びを抱いていて――? 愛の重い口下手攻め×病弱美人受け ※二人がただただすれ違っているだけの話 前中後編+攻め視点の四話完結です

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 ハッピーエンド保証! 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります) 11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。 ※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。 自衛お願いします。

【完結】王子の婚約者をやめて厄介者同士で婚約するんで、そっちはそっちでやってくれ

天冨七緒
BL
頭に強い衝撃を受けた瞬間、前世の記憶が甦ったのか転生したのか今現在異世界にいる。 俺が王子の婚約者? 隣に他の男の肩を抱きながら宣言されても、俺お前の事覚えてねぇし。 てか、俺よりデカイ男抱く気はねぇし抱かれるなんて考えたことねぇから。 婚約は解消の方向で。 あっ、好みの奴みぃっけた。 えっ?俺とは犬猿の仲? そんなもんは過去の話だろ? 俺と王子の仲の悪さに付け入って、王子の婚約者の座を狙ってた? あんな浮気野郎はほっといて俺にしろよ。 BL大賞に応募したく急いでしまった為に荒い部分がありますが、ちょこちょこ直しながら公開していきます。 そういうシーンも早い段階でありますのでご注意ください。 同時に「王子を追いかけていた人に転生?ごめんなさい僕は違う人が気になってます」も公開してます、そちらもよろしくお願いします。

【完結】お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません

八神紫音
BL
 やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。  そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。

傾国の美青年

春山ひろ
BL
僕は、ガブリエル・ローミオ二世・グランフォルド、グランフォルド公爵の嫡男7歳です。オメガの母(元王子)とアルファで公爵の父との政略結婚で生まれました。周りは「運命の番」ではないからと、美貌の父上に姦しくオメガの令嬢令息がうるさいです。僕は両親が大好きなので守って見せます!なんちゃって中世風の異世界です。設定はゆるふわ、本文中にオメガバースの説明はありません。明るい母と美貌だけど感情表現が劣化した父を持つ息子の健気な奮闘記?です。他のサイトにも掲載しています。

処理中です...