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「初めまして、レクス殿下。ラン妃殿下」
「はっ……はじめまして」
ランは動物園に着くなり現われた園長の挨拶に面食らった。
「殿下自ら視察とは光栄なことでございます」
にこにこと微笑んで案内しようと先頭に立って歩き始めた園長の後ろで、ランはレクスの袖を思い切り引っ張った。
「どーゆーことだよ?」
「ん、動物園を見に行くと知らせを入れたらいつの間にか視察ということになってしまったらしい……」
「そうじゃなくて……」
ランは辺りを見渡して声をひそめた。
「――殿下ってなんだ。ひ、妃殿下って」
「ああ」
レクスはなんだそっちかと呟いて、ランの耳元に囁いた。
「ランとの婚姻とルゥが俺の子だと認められて、俺は皇太子になった」
「なっ?」
ランの知る限り、レクスの王位継承権は第三位だったはずだ。
「王弟殿下は高齢だし、アレンには子がない。後継を得たということで俺の継承権が一位になったんだ」
「なんだよそれ……大事なことじゃんか」
「そのうち言おうと思ってた」
だとしてもこんな所で知るのは無しだろう、とランはレクスを睨んだ。
「ルゥがアルファだとは限らないだろ……時期尚早なんじゃないか」
「それでも、王家に一人も後継がいない今の状態では、ルゥは貴重な王家の血を引く子なんだ」
「なんか……可哀想だ」
ランはポツリと呟いた。まだルゥは小さいのに勝手に回りに重たいものを背負わされている。
「レクスはそれでオレ逹を探してたの?」
「それもなくはないが……」
レクスはランの手を握った。
「二人に会いたいって気持ちが一番だった」
「本当……?」
「ああ」
信じてくれと言わんばかりにぎゅっと握られた手をランは強く握り返した。
「せっかくの外出だ。楽しもう。ほら、まずは象だ」
「ぞう?」
「ルゥ、見たらびっくりするぞ」
レクスはルゥを抱きかかえて、ランの手を引く。
「よし、行こう」
それから三人は色々な動物を見て回った。象にキリンにライオン……。様々な動物にルゥは大興奮だ。
「ライオン、かっこいい」
「ああ」
「パパみたい」
そう言われてレクスはきょとんとした顔をした後、真っ赤になった。
「……そ、そうか」
「よかったねレクス」
「あ、うん……」
その様子がおかしくて、ランはついからかってしまった。
「パパ、もっかいやって」
「わかった」
レクスはルゥを肩車する。背の高いレクスに背負われたルゥは新鮮な景色に目をきらきらさせている。
「パパ、ママたのしいねぇ!」
その笑い声に、ランもレクスも思わず頬を緩めた。
「はっ……はじめまして」
ランは動物園に着くなり現われた園長の挨拶に面食らった。
「殿下自ら視察とは光栄なことでございます」
にこにこと微笑んで案内しようと先頭に立って歩き始めた園長の後ろで、ランはレクスの袖を思い切り引っ張った。
「どーゆーことだよ?」
「ん、動物園を見に行くと知らせを入れたらいつの間にか視察ということになってしまったらしい……」
「そうじゃなくて……」
ランは辺りを見渡して声をひそめた。
「――殿下ってなんだ。ひ、妃殿下って」
「ああ」
レクスはなんだそっちかと呟いて、ランの耳元に囁いた。
「ランとの婚姻とルゥが俺の子だと認められて、俺は皇太子になった」
「なっ?」
ランの知る限り、レクスの王位継承権は第三位だったはずだ。
「王弟殿下は高齢だし、アレンには子がない。後継を得たということで俺の継承権が一位になったんだ」
「なんだよそれ……大事なことじゃんか」
「そのうち言おうと思ってた」
だとしてもこんな所で知るのは無しだろう、とランはレクスを睨んだ。
「ルゥがアルファだとは限らないだろ……時期尚早なんじゃないか」
「それでも、王家に一人も後継がいない今の状態では、ルゥは貴重な王家の血を引く子なんだ」
「なんか……可哀想だ」
ランはポツリと呟いた。まだルゥは小さいのに勝手に回りに重たいものを背負わされている。
「レクスはそれでオレ逹を探してたの?」
「それもなくはないが……」
レクスはランの手を握った。
「二人に会いたいって気持ちが一番だった」
「本当……?」
「ああ」
信じてくれと言わんばかりにぎゅっと握られた手をランは強く握り返した。
「せっかくの外出だ。楽しもう。ほら、まずは象だ」
「ぞう?」
「ルゥ、見たらびっくりするぞ」
レクスはルゥを抱きかかえて、ランの手を引く。
「よし、行こう」
それから三人は色々な動物を見て回った。象にキリンにライオン……。様々な動物にルゥは大興奮だ。
「ライオン、かっこいい」
「ああ」
「パパみたい」
そう言われてレクスはきょとんとした顔をした後、真っ赤になった。
「……そ、そうか」
「よかったねレクス」
「あ、うん……」
その様子がおかしくて、ランはついからかってしまった。
「パパ、もっかいやって」
「わかった」
レクスはルゥを肩車する。背の高いレクスに背負われたルゥは新鮮な景色に目をきらきらさせている。
「パパ、ママたのしいねぇ!」
その笑い声に、ランもレクスも思わず頬を緩めた。
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