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「それじゃあなるべく早く帰ってくるから」
「いってらっしゃい……」
顔色の悪いビィがルゥを抱いて手を振ってくれた。
「ビィ、具合悪そうだったな……」
ランは後ろ髪を引かれる思いで仕事に出た。どちらかが発情期真っ只中でも育児は待ってはくれない。ランもビィも何とか抑制剤で症状を抑えてルゥを育てて来た。
「寂しい思い……させてるかな」
抑制剤だって金がかかる。それでも使わない訳にはいかない。
「はー……オメガって面倒くさい」
ランはぐちぐちと呟きながら職場にたどり着いた。
「ラン」
「はいなんでしょう」
「お前帰れ」
「……へ?」
昼のピークが過ぎた頃、店長に腕を引っ張られてランは店の裏につれていかれた。
「お前ひどい発情の匂いだぞ。俺はベータだけど、それでもわかる」
「ほ、本当ですか? おかしいなもうちょっと先の予定だったんですが」
「これじゃ仕事にならん。帰れ」
「……はい」
間の悪いことに、ランも発情期に入ってしまったようだ。眩暈と頭痛を抱えて結局ランは来た道を引き返すことになった。
「ただいまぁ」
部屋はシンとしている。見ると、ルゥが居間で昼寝をしていた。
「ビィは……?」
ランはビィの姿を探した。
「居ない……?」
その時だった。微かな声がランの耳に届く。
「……あっ、ああ……あん」
それはビィの自室からだった。
「ビィ……」
自分を慰めるビィの喘ぐ声が部屋から漏れていた。
「まずい」
ランはいつの間にか自分の下半身が張り詰めていることに気付いた。ビィの色っぽい声に当てられたみたいだ。
「あ……ちょっとだけ」
ランは服の上から下腹部を撫でる。痺れるような快感が背筋を走る。
「ううんっ……は……」
いつまでも慣れないな、とランは思った。長らく発情を知らずに生きてきたランにとって、オメガの発情は苛烈だった。
むしろ性欲自体薄かったランにとって、それは恐ろしいほどだった。
初めての発情でルゥを孕んで、出産後に発情が再開して一年ほどになるがランはまだこの感覚に慣れない。
「何してんの」
「――ヒッ!?」
急に声をかけられて、ランは飛び上がりそうになった。
「あ、ビィ……いやオレも発情期きちゃったみたいで……」
「こんなとこで盛るなよ。ルゥの教育に悪いだろ」
「ご、ごめん……」
ランはハッとしてルゥを見た。ルゥはすやすやと眠っている。
「ランまで発情期か……よし、ちょっとこっちきなよ」
ビィはランの手をひいて自分の部屋に招き入れた。
「どうしたの……」
「いや、先輩がいいもの貸してあげようと思って。はい」
ビィが何かをランに投げてきた。ランはそれを受け取ってまじまじと見つめてギョッとした。
「ビィ……! こ、これって」
それは張り型だった。太く反り上がったその形はずっしりとしている。
「入れてるだけでも結構落ち着くよ」
「そう、そうかもしれないけどっ」
ランは恥ずかしくて耳まで赤くなった。一方でビィはけろっとした顔をしている。
「……ラン、僕が使い方教えてあげようか」
「え……」
ランが顔をあげると、ビィは笑いながらこっちを見ていた。
「いってらっしゃい……」
顔色の悪いビィがルゥを抱いて手を振ってくれた。
「ビィ、具合悪そうだったな……」
ランは後ろ髪を引かれる思いで仕事に出た。どちらかが発情期真っ只中でも育児は待ってはくれない。ランもビィも何とか抑制剤で症状を抑えてルゥを育てて来た。
「寂しい思い……させてるかな」
抑制剤だって金がかかる。それでも使わない訳にはいかない。
「はー……オメガって面倒くさい」
ランはぐちぐちと呟きながら職場にたどり着いた。
「ラン」
「はいなんでしょう」
「お前帰れ」
「……へ?」
昼のピークが過ぎた頃、店長に腕を引っ張られてランは店の裏につれていかれた。
「お前ひどい発情の匂いだぞ。俺はベータだけど、それでもわかる」
「ほ、本当ですか? おかしいなもうちょっと先の予定だったんですが」
「これじゃ仕事にならん。帰れ」
「……はい」
間の悪いことに、ランも発情期に入ってしまったようだ。眩暈と頭痛を抱えて結局ランは来た道を引き返すことになった。
「ただいまぁ」
部屋はシンとしている。見ると、ルゥが居間で昼寝をしていた。
「ビィは……?」
ランはビィの姿を探した。
「居ない……?」
その時だった。微かな声がランの耳に届く。
「……あっ、ああ……あん」
それはビィの自室からだった。
「ビィ……」
自分を慰めるビィの喘ぐ声が部屋から漏れていた。
「まずい」
ランはいつの間にか自分の下半身が張り詰めていることに気付いた。ビィの色っぽい声に当てられたみたいだ。
「あ……ちょっとだけ」
ランは服の上から下腹部を撫でる。痺れるような快感が背筋を走る。
「ううんっ……は……」
いつまでも慣れないな、とランは思った。長らく発情を知らずに生きてきたランにとって、オメガの発情は苛烈だった。
むしろ性欲自体薄かったランにとって、それは恐ろしいほどだった。
初めての発情でルゥを孕んで、出産後に発情が再開して一年ほどになるがランはまだこの感覚に慣れない。
「何してんの」
「――ヒッ!?」
急に声をかけられて、ランは飛び上がりそうになった。
「あ、ビィ……いやオレも発情期きちゃったみたいで……」
「こんなとこで盛るなよ。ルゥの教育に悪いだろ」
「ご、ごめん……」
ランはハッとしてルゥを見た。ルゥはすやすやと眠っている。
「ランまで発情期か……よし、ちょっとこっちきなよ」
ビィはランの手をひいて自分の部屋に招き入れた。
「どうしたの……」
「いや、先輩がいいもの貸してあげようと思って。はい」
ビィが何かをランに投げてきた。ランはそれを受け取ってまじまじと見つめてギョッとした。
「ビィ……! こ、これって」
それは張り型だった。太く反り上がったその形はずっしりとしている。
「入れてるだけでも結構落ち着くよ」
「そう、そうかもしれないけどっ」
ランは恥ずかしくて耳まで赤くなった。一方でビィはけろっとした顔をしている。
「……ラン、僕が使い方教えてあげようか」
「え……」
ランが顔をあげると、ビィは笑いながらこっちを見ていた。
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