26 / 82
-3
しおりを挟む
「ランさん……ランさん!」
「うわっ」
ぼんやりと庭に立っていたランは突然ロランドに後ろから話しかけられて飛び上がりそうになった。
「どうしたんです、ぼーっとして。こんなところに突っ立っていたら今度こそ風邪を引きますよ」
「ああ、すみません」
ランはロランドにそう言われて部屋の中に入った。
「ちょっと庭の落ち葉が気になって」
「そんなのはうんと元気な時にやればいいんです。今、温かいお茶を持って来ますから」
ランは上着を脱いで、しまうと部屋の小さなソファに腰掛けた。
「はい、お茶です。これを飲んだらベッドに行ってください」
「ええ……」
「でないとランさんはじっとしてないでしょう」
ランはロランドにそう言われてベッドに入らされた。
「大人しく本でも読んでいてください」
「はぁい」
ランはこれ以上うるさく言われないように返事をした。
「ちぇ……レクスもロランドさんも子供あつかいして」
ブツブツ言いながらランは本を広げ、大人しくしていることにした。
「調子はどうだ」
「なんともないよ」
外出から帰ってきたレクスはさっそくランの部屋に様子を見にきた。
「そうか? 顔が赤い気がする」
レクスはランの前髪をかき分けると、自分の額とランの額とをくっつけた。
「ちょっと!」
まるでキスをするかのような距離に、ランの声はうわずった。
「気のせいか」
「大丈夫だって行ってるのに」
「昔はこうしてくれたじゃないか」
「熱を出していたのはレクスだけどね」
「ああ」
ちょっと無理をするとすぐに熱をだす子供だったレクスの側で、ランはそうすれば熱がさがると思い込んで何度も額をくっつけたのだった。
「そうしたらレクスの熱がオレに半分移るんだって勘違いしてたんだよ」
「そうだったのか」
レクスはそれを聞いてくすっと笑った。
「ありがとう」
「どういたしまして! 明日になったらちゃんと仕事に戻るから」
「うん、早く元気になってくれ」
レクスの手が、ランの髪をクシャクシャとかき回した。
「大丈夫だよ」
ランはそう答えた。なんにせよ、レクスにもロランドにも心配をかけた。
早く体調を戻していつもの日常に戻ろう。ランはそう思った。
だが……その日からランの熱はまた上がり下がりを繰り返すようになったのだった。
「はぁ……はぁ……」
体が熱い。熱を出してもう三日。医者は熱以外は特に症状はないと言ったが、ロランドはレクスにランの部屋に近づかないようにと言い渡した。
「……ぷは」
朦朧とした意識の中、ランは身を起こして水差しからコップに水を注いで飲み干した。
「オレ、どうしちゃったんだろう」
ランはさすがに弱気になってきた。
「医者はなんともないって言うけれど……」
その医者にも言ってないことがひとつある。ランの性別のことだ。
「まさか、な」
ランは首をふった。いままでだってこんなことは無かった。きっと何かの病気なのだ。
「うつるような病気じゃないといいんだけど」
それこそ、レクスや王城の人たちに迷惑をかけてしまう。ランはふうと重たいため息を吐いて眠りについた。
「うわっ」
ぼんやりと庭に立っていたランは突然ロランドに後ろから話しかけられて飛び上がりそうになった。
「どうしたんです、ぼーっとして。こんなところに突っ立っていたら今度こそ風邪を引きますよ」
「ああ、すみません」
ランはロランドにそう言われて部屋の中に入った。
「ちょっと庭の落ち葉が気になって」
「そんなのはうんと元気な時にやればいいんです。今、温かいお茶を持って来ますから」
ランは上着を脱いで、しまうと部屋の小さなソファに腰掛けた。
「はい、お茶です。これを飲んだらベッドに行ってください」
「ええ……」
「でないとランさんはじっとしてないでしょう」
ランはロランドにそう言われてベッドに入らされた。
「大人しく本でも読んでいてください」
「はぁい」
ランはこれ以上うるさく言われないように返事をした。
「ちぇ……レクスもロランドさんも子供あつかいして」
ブツブツ言いながらランは本を広げ、大人しくしていることにした。
「調子はどうだ」
「なんともないよ」
外出から帰ってきたレクスはさっそくランの部屋に様子を見にきた。
「そうか? 顔が赤い気がする」
レクスはランの前髪をかき分けると、自分の額とランの額とをくっつけた。
「ちょっと!」
まるでキスをするかのような距離に、ランの声はうわずった。
「気のせいか」
「大丈夫だって行ってるのに」
「昔はこうしてくれたじゃないか」
「熱を出していたのはレクスだけどね」
「ああ」
ちょっと無理をするとすぐに熱をだす子供だったレクスの側で、ランはそうすれば熱がさがると思い込んで何度も額をくっつけたのだった。
「そうしたらレクスの熱がオレに半分移るんだって勘違いしてたんだよ」
「そうだったのか」
レクスはそれを聞いてくすっと笑った。
「ありがとう」
「どういたしまして! 明日になったらちゃんと仕事に戻るから」
「うん、早く元気になってくれ」
レクスの手が、ランの髪をクシャクシャとかき回した。
「大丈夫だよ」
ランはそう答えた。なんにせよ、レクスにもロランドにも心配をかけた。
早く体調を戻していつもの日常に戻ろう。ランはそう思った。
だが……その日からランの熱はまた上がり下がりを繰り返すようになったのだった。
「はぁ……はぁ……」
体が熱い。熱を出してもう三日。医者は熱以外は特に症状はないと言ったが、ロランドはレクスにランの部屋に近づかないようにと言い渡した。
「……ぷは」
朦朧とした意識の中、ランは身を起こして水差しからコップに水を注いで飲み干した。
「オレ、どうしちゃったんだろう」
ランはさすがに弱気になってきた。
「医者はなんともないって言うけれど……」
その医者にも言ってないことがひとつある。ランの性別のことだ。
「まさか、な」
ランは首をふった。いままでだってこんなことは無かった。きっと何かの病気なのだ。
「うつるような病気じゃないといいんだけど」
それこそ、レクスや王城の人たちに迷惑をかけてしまう。ランはふうと重たいため息を吐いて眠りについた。
29
第8回BL小説大賞の投票がはじまりました。清き一票をお待ちしております。
お気に入りに追加
2,240
あなたにおすすめの小説

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

獣人王と番の寵妃
沖田弥子
BL
オメガの天は舞手として、獣人王の後宮に参内する。だがそれは妃になるためではなく、幼い頃に翡翠の欠片を授けてくれた獣人を捜すためだった。宴で粗相をした天を、エドと名乗るアルファの獣人が庇ってくれた。彼に不埒な真似をされて戸惑うが、後日川辺でふたりは再会を果たす。以来、王以外の獣人と会うことは罪と知りながらも逢瀬を重ねる。エドに灯籠流しの夜に会おうと告げられ、それを最後にしようと決めるが、逢引きが告発されてしまう。天は懲罰として刑務庭送りになり――

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!


最強で美人なお飾り嫁(♂)は無自覚に無双する
竜鳴躍
BL
ミリオン=フィッシュ(旧姓:バード)はフィッシュ伯爵家のお飾り嫁で、オメガだけど冴えない男の子。と、いうことになっている。だが実家の義母さえ知らない。夫も知らない。彼が陛下から信頼も厚い美貌の勇者であることを。
幼い頃に死別した両親。乗っ取られた家。幼馴染の王子様と彼を狙う従妹。
白い結婚で離縁を狙いながら、実は転生者の主人公は今日も勇者稼業で自分のお財布を豊かにしています。
既成事実さえあれば大丈夫
ふじの
BL
名家出身のオメガであるサミュエルは、第三王子に婚約を一方的に破棄された。名家とはいえ貧乏な家のためにも新しく誰かと番う必要がある。だがサミュエルは行き遅れなので、もはや選んでいる立場ではない。そうだ、既成事実さえあればどこかに嫁げるだろう。そう考えたサミュエルは、ヒート誘発薬を持って夜会に乗り込んだ。そこで出会った美丈夫のアルファ、ハリムと意気投合したが───。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる