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39 イースティア上陸

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 海賊を退けた翌日、朝靄が晴れると、船の針路方向に陸が見えた。
 毎日の計測で船の現在位置は把握していたものの、計測ミスや計算ミス、各種装置に発生する誤差などがあると、今日この瞬間に大海原で遭難していることが発覚するので、陸を視認すると一安心できる。
 とはいえ、陸が見えても気が抜けるわけではない。今度は港を探さねばならないからだ。人間の手で行った計測から船の位置を推定している以上、どうしても実際の位置との誤差は生じてしまう。そのため、陸に近づいても港が見つからず、岸に沿って何日も港を探して彷徨う羽目になることがよくある。
 しかし、幸運にも今回は、陸に近づくとすぐに港が見つかり、昼頃には入港することができた。
 イースティアで最も栄えている独立国、セントノイマ。世界各国から貿易船が集まるこの国は、ウインスターズと雰囲気が似ている。というか、大きな港のある都市の雰囲気はどこも大差ない。都市によってよく見る種属の種類が違うくらいだ。雑多な種族が商売のために集い、より多くの財産を築くために競い合う。種族間の差別はほとんどなく、地位も名誉も商才次第。良く言えば平等で、悪く言えば残酷な場所だ。

「さて、それでは荷揚げをお願いします。こちらは入港手続きと卸売業者との契約をしてくるので」

「おう」

 エルドワードに船の商品の荷揚げを任せ、私はアリシア、ザリアード、ヴァヴィリア、ハセークと共に船を下りる。

「久々の大地ですね」

 とザリアード。

「ずっと海と空しか見てなかったから、建物や人混みが新鮮だよ」

 とヴァヴィリア。
 アリシアは船酔いがまだ抜けておらず、話す気力はなさそうだ。

「船から解放されて嬉しいのはわかりますけど、あんまり気を抜かないでくださいね。まだ仕事が残っているんですから」

 と私は釘を刺しておく。
 衛兵が近づいてきたので、勅許状を渡し、こちらの船がウインスターズから来た正式な貿易船であることを証明する。その後、運んできた商品のリストを所定の用紙に記入し、関税分の商品の納入手続きを済ませる。この港を使うのは二回目で、手続きの内容自体も変わっていなかったため、特に滞りなく終わった。
 それから、卸売業者のところへ向かう。

「ザリアード、先に街まで行って、今日の夜の宿を取っておいてくれないかな。船乗りたちの分もね。一つの宿を貸し切れたらいいんだけど、無理そうだったら複数の宿でもいいから。ハセーク、ザリアードの通訳をお願い。この近くならこっちの言葉が通じないってことは少ないと思うけど、念のためにね」

「わかりました」

「了解した」

 セントノイマでは海外商人が重要視されているため、私たちの待遇はとても良い。特に良いのが、業者による価格差が小さいことだ。これは、健全な競争が働いている証拠だと言える。今回私たちが運んできたほどの量の商品を一括で買い取ってくれるような規模の卸売業者ですら、数社存在しており、相見積もりを取ることが可能なので、ぼったくられることがほとんどない。悪く言えば、相手からぼったくって暴利をむさぼれない、ということでもあるが、阿漕な商売をする気がないのなら、このデメリットはないのと同じだ。
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