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16 ビジネスパートナーとして
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一週間前まで実際に船で商品を運んでいたエルドワードが会話に加わったことで、私と店主の雲をつかむような話に、ある程度の結論を出すことができた。
要約すると、結論はこの三点である。
一、貿易の流れは変わっていない。ウインスターズからアフィルケーンへ武器を輸出し、アフィルケーンからの脱出希望者をイースティアに輸出し、イースティアで買い取った砂糖をウインスターズに輸入するのが基本ルートであり、それで充分に利益が出ている。
二、確かに、アフィルケーンからの脱出希望者は減っている感じはした。しかし、エルドワードの船は脱出希望者に船内で充分なスペースと食事を与えている関係上、非人道的な詰め込みかたをする船より影響は少ない。
三、そもそも、エルドワードから直接イースティアに砂糖を買い付けに向かっても利益は出る。
この話を踏まえ、私はアフィルケーンを経由せずにイースティアへ向かうルートで貿易を行うことに決めた。利益は下がるが、そのほうが私の精神的に健全だと考えたからだ。
そこまで決めた後、後日またこのカフェで集まろうということをエルドワードと約束し、今日はお開きとなった。具体的な計画まで話しておきたい気持ちもあったが、これ以上アリシアを無視して話を続けられるほど、私の心は商人魂に染まり切ってはいなかった。
「こんなに長い時間付き合わせて悪かったね」
「別に平気です。元々、付いていくって言ったのは私のほうですし」
カフェから出たアリシアは、どうにも不機嫌そうだった。顔や態度には出ていないが、まとっている雰囲気がトゲトゲしい。
「そういえば、お昼をまだ食べてないけど、何か食べたいものある?」
「朝たくさん食べたので、まだそこまでお腹は空いていません」
食べ物で機嫌を取る作戦、失敗。
「じゃあ、宝石でも観に行こうか。海外産の宝石は、色んな色や形があって綺麗なんだよ」
「別に私、宝石に興味ありません」
金目の物で機嫌を取る作戦、失敗。
「……なら、お酒でも飲みに行こう。近くに昔よく通っていたパブがあるんだ」
「どうせ、お酒は夜にヴァヴィリアたちと飲むことになるから、今はいい」
酒で機嫌を取る作戦、失敗。
万策尽きたので、素直に尋ねることにする。
「君を忘れて話し込んでしまって悪かった。償いをさせてほしい。何か望みはないかな?」
私の質問に対し、アリシアは軽く息を吐いてから、
「私に遠慮して、やるべきことを妥協するのはやめて」
と、切り出した。
「私はあなたのビジネスパートナーとして、あなたの隣に堂々と立っていたいの。あなたが仕事に必要だと感じているのなら、私は何時間でも付き合えるから。無理を言ってるのはわかってる。私がいなければドラゴンの力を使えないのだから、私のご機嫌伺いも、あなたの重要な仕事だと理解しているつもり。でも、私があなたの仕事の邪魔になりたいとは思っていないことを、覚えていてほしい」
そう言って、アリシアは儚げに笑った。
私は何かフォローするための言葉を探したが、何を言っても今の彼女に響くとは思えなかった。
「先に、宿へ戻ってるね」
要約すると、結論はこの三点である。
一、貿易の流れは変わっていない。ウインスターズからアフィルケーンへ武器を輸出し、アフィルケーンからの脱出希望者をイースティアに輸出し、イースティアで買い取った砂糖をウインスターズに輸入するのが基本ルートであり、それで充分に利益が出ている。
二、確かに、アフィルケーンからの脱出希望者は減っている感じはした。しかし、エルドワードの船は脱出希望者に船内で充分なスペースと食事を与えている関係上、非人道的な詰め込みかたをする船より影響は少ない。
三、そもそも、エルドワードから直接イースティアに砂糖を買い付けに向かっても利益は出る。
この話を踏まえ、私はアフィルケーンを経由せずにイースティアへ向かうルートで貿易を行うことに決めた。利益は下がるが、そのほうが私の精神的に健全だと考えたからだ。
そこまで決めた後、後日またこのカフェで集まろうということをエルドワードと約束し、今日はお開きとなった。具体的な計画まで話しておきたい気持ちもあったが、これ以上アリシアを無視して話を続けられるほど、私の心は商人魂に染まり切ってはいなかった。
「こんなに長い時間付き合わせて悪かったね」
「別に平気です。元々、付いていくって言ったのは私のほうですし」
カフェから出たアリシアは、どうにも不機嫌そうだった。顔や態度には出ていないが、まとっている雰囲気がトゲトゲしい。
「そういえば、お昼をまだ食べてないけど、何か食べたいものある?」
「朝たくさん食べたので、まだそこまでお腹は空いていません」
食べ物で機嫌を取る作戦、失敗。
「じゃあ、宝石でも観に行こうか。海外産の宝石は、色んな色や形があって綺麗なんだよ」
「別に私、宝石に興味ありません」
金目の物で機嫌を取る作戦、失敗。
「……なら、お酒でも飲みに行こう。近くに昔よく通っていたパブがあるんだ」
「どうせ、お酒は夜にヴァヴィリアたちと飲むことになるから、今はいい」
酒で機嫌を取る作戦、失敗。
万策尽きたので、素直に尋ねることにする。
「君を忘れて話し込んでしまって悪かった。償いをさせてほしい。何か望みはないかな?」
私の質問に対し、アリシアは軽く息を吐いてから、
「私に遠慮して、やるべきことを妥協するのはやめて」
と、切り出した。
「私はあなたのビジネスパートナーとして、あなたの隣に堂々と立っていたいの。あなたが仕事に必要だと感じているのなら、私は何時間でも付き合えるから。無理を言ってるのはわかってる。私がいなければドラゴンの力を使えないのだから、私のご機嫌伺いも、あなたの重要な仕事だと理解しているつもり。でも、私があなたの仕事の邪魔になりたいとは思っていないことを、覚えていてほしい」
そう言って、アリシアは儚げに笑った。
私は何かフォローするための言葉を探したが、何を言っても今の彼女に響くとは思えなかった。
「先に、宿へ戻ってるね」
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