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9 沿岸都市ウインスターズ①
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亀のような速さでしか進まない行列から解放され、ウインスターズの中に入ることができたのは、列に並び始めた時には真上にあった太陽が沈みかけた頃だった。
「うわぁ、人がいっぱい」
初めてこの地に来たアリシアからすれば、人々と建物の圧倒的な密度がなすこの都市の光景は壮観だろう。
「とりあえず、今日の宿を決めよう」
二頭引きの荷馬車が三台以上すれ違えるほどの道幅がある大通りを進む。
石畳の道の両側には、多種多様な商品を売る露店が並んでいる。美味しそうな食べ物を売る店もあれば、海外産であろう面妖な装飾品を売る店もある。
石畳を踏み鳴らす人と馬の足音に負けないよう、店主が大声で客引きをしている。そんな店主がほとんどの店にいるせいで、それぞれは意味を持っていたはずの声が混ざり合って混沌となり、一種の秩序だった騒音として私の耳に届く。まるで都市全体が、これが繁栄だ、と大声で主張しているかのようだ。
まず向かった馴染みの宿屋には、ぴったり二部屋分の空きがあった。疲れていたので、店側の言い値で一週間分の滞在費を支払う。
本当なら、すぐにでも部屋に行き、ベッドに飛び込みたい気分なのだが、商品を放置して眠るわけにはいかない。
宿を確保してすぐに、荷馬車の商品を卸すべく、卸売市場へと向かう。
知り合いの卸売商に商品を確認してもらい、価格交渉をする。何度も取引した間柄なので、ぼったくられることはないと思ってはいるが、宿代のような小さな金額ではない以上、注意深く相手の言葉や表情を観察する。そうして数人の卸売商と取引を行い、なんとかすべての商品を市場が締まるまでにさばききった。
二頭の馬を宿の近くにある厩舎に入れ、宿に戻る。
この宿の一階は食事処となっており、私と同じような職業であろう人々が、すでに酒盛りを始めていた。
荷物を部屋に置いた後、空いているテーブル席に座り、とりあえず人数分のビールと魚料理を頼む。
「とりあえず、お疲れ」
「「「お疲れー」」」
乾いた喉にビールを流し込み、大きく息を吐くと、長時間の移動と二度の野宿で溜まっていた疲労が一気に出てきた。
「せっかくウインスターズに来たんだし、明日は一日オフにしよう。ここの自警団は優秀だから、護衛がいなくても私の危険は少ないし、皆もここでなら羽を伸ばしやすいだろう」
船乗りになる者には、ヒト族以外の種族も多い。
船上で長い時間を共にするからなのか、異なる種族同士であっても、同じ船の船員の間に差別意識はほとんどない。この都市はそんな船乗りたちが中心となって発展したので、周辺国と比べてヒト族以外への差別が少なく、アリシアたちが比較的安心して出歩ける。
私がそう提案すると、真っ先にヴァヴィリアが「そうこなくっちゃ!」と喜びをあらわにした。
「流石、新進気鋭の天才商人であらせられるヨルム様。私たちの気持ちがよくわかっていらっしゃる。せっかく良い給料貰ってるんだから、こういう散財できそうな場所でお休みがないと困るのよね」
まったく、調子のいい奴である。
明日の朝市に繰り出したいというヴァヴィリアの考えから、この夕食を兼ねた酒の席は早めにお開きとなった。
「うわぁ、人がいっぱい」
初めてこの地に来たアリシアからすれば、人々と建物の圧倒的な密度がなすこの都市の光景は壮観だろう。
「とりあえず、今日の宿を決めよう」
二頭引きの荷馬車が三台以上すれ違えるほどの道幅がある大通りを進む。
石畳の道の両側には、多種多様な商品を売る露店が並んでいる。美味しそうな食べ物を売る店もあれば、海外産であろう面妖な装飾品を売る店もある。
石畳を踏み鳴らす人と馬の足音に負けないよう、店主が大声で客引きをしている。そんな店主がほとんどの店にいるせいで、それぞれは意味を持っていたはずの声が混ざり合って混沌となり、一種の秩序だった騒音として私の耳に届く。まるで都市全体が、これが繁栄だ、と大声で主張しているかのようだ。
まず向かった馴染みの宿屋には、ぴったり二部屋分の空きがあった。疲れていたので、店側の言い値で一週間分の滞在費を支払う。
本当なら、すぐにでも部屋に行き、ベッドに飛び込みたい気分なのだが、商品を放置して眠るわけにはいかない。
宿を確保してすぐに、荷馬車の商品を卸すべく、卸売市場へと向かう。
知り合いの卸売商に商品を確認してもらい、価格交渉をする。何度も取引した間柄なので、ぼったくられることはないと思ってはいるが、宿代のような小さな金額ではない以上、注意深く相手の言葉や表情を観察する。そうして数人の卸売商と取引を行い、なんとかすべての商品を市場が締まるまでにさばききった。
二頭の馬を宿の近くにある厩舎に入れ、宿に戻る。
この宿の一階は食事処となっており、私と同じような職業であろう人々が、すでに酒盛りを始めていた。
荷物を部屋に置いた後、空いているテーブル席に座り、とりあえず人数分のビールと魚料理を頼む。
「とりあえず、お疲れ」
「「「お疲れー」」」
乾いた喉にビールを流し込み、大きく息を吐くと、長時間の移動と二度の野宿で溜まっていた疲労が一気に出てきた。
「せっかくウインスターズに来たんだし、明日は一日オフにしよう。ここの自警団は優秀だから、護衛がいなくても私の危険は少ないし、皆もここでなら羽を伸ばしやすいだろう」
船乗りになる者には、ヒト族以外の種族も多い。
船上で長い時間を共にするからなのか、異なる種族同士であっても、同じ船の船員の間に差別意識はほとんどない。この都市はそんな船乗りたちが中心となって発展したので、周辺国と比べてヒト族以外への差別が少なく、アリシアたちが比較的安心して出歩ける。
私がそう提案すると、真っ先にヴァヴィリアが「そうこなくっちゃ!」と喜びをあらわにした。
「流石、新進気鋭の天才商人であらせられるヨルム様。私たちの気持ちがよくわかっていらっしゃる。せっかく良い給料貰ってるんだから、こういう散財できそうな場所でお休みがないと困るのよね」
まったく、調子のいい奴である。
明日の朝市に繰り出したいというヴァヴィリアの考えから、この夕食を兼ねた酒の席は早めにお開きとなった。
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