11 / 15
11
しおりを挟む
「いや、本当に…奇跡でしたよ」
翌朝、目を覚ました私に、担当の先生や看護師達は皆口々にそう言った。
あの状態で、母子ともに命が無事だったのは本当に奇跡だと。
私にはあまり実感はないが、一時は生死の境を彷徨うほど危険な状態だったらしく、夫と父には、かなり心配をかけてしまったようだった。
「…本当に、生きた心地がしなかったんだよ」
「ごめんね。心配かけて」
生まれた赤ちゃんは、男の子と女の子の双子だった。
保育器の中で懸命に呼吸をし、時折元気な声で泣く二人は、どことなく私に似ていて、そして夫に似ている。
もう少し大きくなるまで様子を見て、問題がなければ退院できるそうだ。
「…とにかく、今日はゆっくり休んで。仕事…しばらく休み貰ったから、また明日来るよ」
「うん。ありがとう」
帰っていく夫の背中には、さすがに疲れが見えた。
ベッドに横になると、私も、どっと疲れが押し寄せる感覚がする。
長く、深い一日だった。
二人の名前を、早く考えてあげなくては。
でも今は…もう少し眠りたい。
そう言えば、あの桜並木で最後に見た人影…
きっと、その人物が救急車を呼び、私たち三人の命を助けてくれたのだろう。
一体…どんな人だったのだろう。
もし、どこの誰だかわかるなら、心からお礼を言いたい。
その人がいなければ私は…今、こんな穏やかな気持ちで眠りにつくことなど出来なかったのだから。
明日、誰かに聞いてみよう。
後は、そうだ…名前…
夫とも、話し合わなければ。
男の子と、女の子。
名前は、一生背負っていく大事なものだ。
ちゃんと、考えてあげなければ…
そんなことを、ぐるぐると考えているうちに、私は眠りについていた。
穏やかで、幸せな眠りだった。
翌朝、目を覚ました私に、担当の先生や看護師達は皆口々にそう言った。
あの状態で、母子ともに命が無事だったのは本当に奇跡だと。
私にはあまり実感はないが、一時は生死の境を彷徨うほど危険な状態だったらしく、夫と父には、かなり心配をかけてしまったようだった。
「…本当に、生きた心地がしなかったんだよ」
「ごめんね。心配かけて」
生まれた赤ちゃんは、男の子と女の子の双子だった。
保育器の中で懸命に呼吸をし、時折元気な声で泣く二人は、どことなく私に似ていて、そして夫に似ている。
もう少し大きくなるまで様子を見て、問題がなければ退院できるそうだ。
「…とにかく、今日はゆっくり休んで。仕事…しばらく休み貰ったから、また明日来るよ」
「うん。ありがとう」
帰っていく夫の背中には、さすがに疲れが見えた。
ベッドに横になると、私も、どっと疲れが押し寄せる感覚がする。
長く、深い一日だった。
二人の名前を、早く考えてあげなくては。
でも今は…もう少し眠りたい。
そう言えば、あの桜並木で最後に見た人影…
きっと、その人物が救急車を呼び、私たち三人の命を助けてくれたのだろう。
一体…どんな人だったのだろう。
もし、どこの誰だかわかるなら、心からお礼を言いたい。
その人がいなければ私は…今、こんな穏やかな気持ちで眠りにつくことなど出来なかったのだから。
明日、誰かに聞いてみよう。
後は、そうだ…名前…
夫とも、話し合わなければ。
男の子と、女の子。
名前は、一生背負っていく大事なものだ。
ちゃんと、考えてあげなければ…
そんなことを、ぐるぐると考えているうちに、私は眠りについていた。
穏やかで、幸せな眠りだった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
琥珀のセカイ
越智文比古
ライト文芸
旧家の私生児である柏森千里は、中学校卒業と同時になかば捨てられるように本宅から出され、独りで暮らしていた。
ある晩、アルバイトの帰り道で、千里はゴミ捨て場に捨てられていたサービスノイド(クローン人間)の琥珀と出会う。
西暦2048年、関東地方蓬ヶ洞市を舞台に、男子高校生とサービスノイドの少女との出会いから始まる物語――。
(全三話)
セイレーンII
門松一里
ライト文芸
“SeirenesII”
真夏のある夜、千年つづく芦屋の御曹司が略取された。犯人から何の連絡もなく、七十二時間後ロイズも手をひいた案件に、事情を知らない関係者はただただ時間を過ごすしかなかった。
身分のちがう恋人の小山田由子にそんなことは知らされるわけもない。レイ・クックマンの紹介で、フランス国籍のマイケル(マイク)・コンチネンタルに、弘行ともう一度会いたいと依頼した。平橋家を支援するベルギーのサックス財団の関連もあり、英語とフランス語の話せる探偵が必要だったからだ。
簡単すぎる案件にマイクは一度は断るが、真摯な由子にほだされて引き受けてしまう。
御曹司とサックス財団の孫娘との婚約話もある中、マイクは平橋家を盗聴するが、あっさりとランドマーク兵庫警備会社につかまってしまった。
マイクの責任者である長藻秋詠の計らいで、釈放されたが納得できるはずもない。とりあえず甘いものを食べて落ち着いたマイクに、秋詠から自殺を止めた少女の謎の画像が送られてきた。
知人のレイ・クックマンの紹介だからと簡単に考えていた秋詠だが、マイクが拘束され、逃げるようにして入ったビルで、少女を助けて両手と肋骨を折ってしまう。どうにか恋人の赤木南々子のマンションに帰るが、南々子は全裸で殺されていた。
現場にいた、真犯人を知っているベルギー軍のフランボワーズ少佐に死んでくれと脅され、秋詠は女装をして〈セイレーン〉という恐怖の呼び声から、犯人を追うはめになってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる