9 / 15
9
しおりを挟む
その日は、心地よい風の吹く快晴で、絶好の散歩日和だった。
ほんの少し、寄り道をして帰ろう。
ちょうど、そろそろ桜の咲く頃だし、運河沿いの桜並木を通って帰ろう。
ちょうど担当の先生にも、少しの運動ならしてもいいと言われたばかりだし、この道なら、家まで遠回りというほどの距離でもない。
軽い気持ちで、私は買い物帰りにいつもと違うルートへ足を踏み入れた。
五分ほど歩いて、もう家の外観が見えるほどのところまで来た時、腹部に、違和感を感じた。
一歩踏み出すごとに、その違和感は、痛みへと変わっていく。
「………っ……!」
あぁ、駄目だ。
早く家に帰らないと。
でも、もう足を踏み出せない。
「はぁっ………あぁっ…!」
地面に倒れ込んだ私のそばを、こんな時に限って誰も通る人はいない。
誰か…誰か助けて。
この子達を助けて。
お母さん…
意識を失う直前、私の目には、舞い落ちてくる桜の花びらと、しゃがみこむ誰かの影が見えた。
ほんの少し、寄り道をして帰ろう。
ちょうど、そろそろ桜の咲く頃だし、運河沿いの桜並木を通って帰ろう。
ちょうど担当の先生にも、少しの運動ならしてもいいと言われたばかりだし、この道なら、家まで遠回りというほどの距離でもない。
軽い気持ちで、私は買い物帰りにいつもと違うルートへ足を踏み入れた。
五分ほど歩いて、もう家の外観が見えるほどのところまで来た時、腹部に、違和感を感じた。
一歩踏み出すごとに、その違和感は、痛みへと変わっていく。
「………っ……!」
あぁ、駄目だ。
早く家に帰らないと。
でも、もう足を踏み出せない。
「はぁっ………あぁっ…!」
地面に倒れ込んだ私のそばを、こんな時に限って誰も通る人はいない。
誰か…誰か助けて。
この子達を助けて。
お母さん…
意識を失う直前、私の目には、舞い落ちてくる桜の花びらと、しゃがみこむ誰かの影が見えた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
琥珀のセカイ
越智文比古
ライト文芸
旧家の私生児である柏森千里は、中学校卒業と同時になかば捨てられるように本宅から出され、独りで暮らしていた。
ある晩、アルバイトの帰り道で、千里はゴミ捨て場に捨てられていたサービスノイド(クローン人間)の琥珀と出会う。
西暦2048年、関東地方蓬ヶ洞市を舞台に、男子高校生とサービスノイドの少女との出会いから始まる物語――。
(全三話)
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
クロネコノダンザイ
はじめアキラ
ライト文芸
「最近、猫が死ぬ事件が続いてるらしいんだよ。片方は野良だったらしいけど、もう片方は散歩中の飼い猫だったって」
黒猫のクロコの飼い主は、心配そうにこちらを見た。
望月町で続く猫の変死。どこか人ごとだと思っていたその危機は、クロコのすぐ傍にも迫っていた――。
大事な仲間を殺した犯人は誰なのか。そして、猫と人間は共生することができるのか。
フリーダムなボス猫、クロコの冒険が始まる。
サハラ砂漠でお茶を
あおみなみ
ライト文芸
「失恋した 恋した 引っ越した」▼つき合っていた同僚の男性の浮気がきっかけで退職と引っ越しを決意した市議会勤めの速記士・美由は、物件探しの最中、休憩のために入った喫茶店「Sahara」で、こわもてでバツイチのマスター・創に一目ぼれする
▼▼▼
古いノートに書き殴ったものの、完成していなかったどころか、最初の数ページしか書いていなかった小説の(サルベージの必要があるかどうか微妙な)サルベージ小説です▼日付は25年ほど前のものでしたので、それ(90年代中期)がそのまま小説の時代背景になっています▼当時大好きだったThe Policeの曲からタイトルを拝借しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる