幸せの1ページ

Pomu

文字の大きさ
上 下
5 / 21

5

しおりを挟む

ドアの隅に、蹲る何か。



それは、震えている子犬だった。



真さんの髪の色に似た、焦げ茶色の毛をした子犬。





「………」



まさか…あの時の?

いや、そんな偶然あるわけがない。

ただの、似ている犬だろう。



インターホンを押した人間が、ここに置いていったのだろうか?

一体なんのつもりだ?



文句を言って突き返してきてやろうと思ったが、どこの部屋の住人が置いていったのかも、そもそもこのマンションに住む人間の仕業かどうかもわからないし、何の関係もない人の部屋にこんな時間に尋ねるのはそれこそ失礼だろうと思い、今日のところは諦めることにした。










取り敢えず、酷く震えているその子犬をそのままそこに放置することは出来ず、家の中に入れて、毛布で包んでやった。

淡いクリーム色の毛布の中で寝息を立てているその犬は、やっぱり、見れば見るほどあの時の犬に似ている。



あの犬…そう言えば、腰の辺りに特徴的な模様があったような…





その模様を確認しようと毛布を捲った時、強い光が目に突き刺さって、思わずぎゅっと目を瞑った。





そして再び目を開いた時、俺の目に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

好きの距離感

杏西モジコ
BL
片想いの相手で仲の良いサークルの先輩が、暑い季節になった途端余所余所しくなって拗ねる後輩の話。

バラのおうち

氷魚(ひお)
BL
イギリスの片田舎で暮らすノアは、身寄りもなく、一人でバラを育てながら生活していた。 偶然訪れた都会の画廊で、一枚の人物画に目を奪われる。 それは、幼い頃にノアを育ててくれた青年の肖像画だった。 両親を亡くした後、二人の青年に育てられた幼いノア。 美男子だけど怒ると怖いオリヴァーに、よく面倒を見てくれた優しいクリス。 大好きな二人だけど、彼らには秘密があって――? 『愛してくれなくても、愛してる』 すれ違う二人の切ない恋。 三人で過ごした、ひと時の懐かしい日々の物語。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

処理中です...