上 下
11 / 14
第1章

1-9

しおりを挟む
俺達は三人で役所へと行く事になった。
話を聞いていないイザナミはルンルンでお散歩気分だ。
羨ましい。
そんな事はさておき、俺達は境内を出て歩いていた。
すれ違う人々に、俺は怖くてビクビクしてしまった。
多分、皆同じことになると思う。
あの話を聞けば誰だって怖いわ!
本当は一歩だって外に出たくなかったわ!
と俺の悲鳴は誰にも届くこともなく、出発した。
ちなみに、天照は何時ものように、朝早くからでかけていた。
まぁ役所には何事もなく着いた。
途中で、月詠から
「人と神の違いなんて、そうそうないんだよ~。
能力か神の力かってだけなんだよね。
見た目の違いなんてないんだから、堂々としときゃあいいの。
イザナギは逆に怪しいからw。もっとちゃんと歩こw。」
と笑われた。wの後に。を付けるのも違和感があるが、そこを言っていると、また長くなりそうなのでやめておこう。
そして役所の人はなぜか、またもや喋る動物だった。

「それではイザナミ様、イザナギ様。
仕事申請書は承りました。後日、お知らせをさせて頂きます。
その際、もう一度こちらに足を運んで下さい。」
と丁寧に説明を受けた。
ハイラとは違い、怖さは全くなかった。
しかし、この異様な光景は全く慣れない。
象に道案内をしてもらい、兎に説明してもらい、ペンギンに手を振って帰った。
これが全て人ならば普通なのだが…
まぁ今日の報酬は、仕事申請ができたという事でいいとしよう。
そしてまた、怖い怖い恐怖の帰り道を帰ることになった。
家?廃虚?廃屋?お寺?まぁそんな所に帰った。
すると、賽銭箱付近に見知らぬ女の子が立っていた。
「どうしたの?」
俺は話しかけた。そこにずっと居られては、困るからだ。
「お願いしていたの。」
女の子は高い声と少し涙目の顔で答えた。
「お願いごと?」
「うん!母神様が早く帰ってきますようにって。」
その言葉に俺は血の気が引いた。
「君のお母さんは…」
「仕事に行ってるの!今回はちょっと遠出なんだって!」
と明るい声とは裏腹に女の子の涙が痛かった。
「じゃあ、お父さんは?」
「…私が生まれる前に、父神様は居なくなったの。
母神様は『どれいになった』って言ってたけど、私良く分かんない。」
「…そうか。」
俺は女の子の頭に手を置いた。
頭を撫でるなんて久しぶりすぎて、ぎこちなかった。
「君は今、どうしてるの?」
そこで月詠が女の子に話しかけた。
「大名様の所にお世話になってます。」
「あぁ、専属契約したの。」
「はい。そこそこ名のある大名様なので、今まで捕まらずにすみました。」
「偉いね。」
とイザナミは女の子と目線が合うようにしゃがみこんで、話した。
「偉いね。」
もう一度同じ言葉を繰り返し、女の子を抱き寄せた。
今度はイザナミの方が泣いていた。
抱き合っている二人は、なんだか小さく見えた。
この小さなものだけでも守りたいなと、思った。
しかしそれは、何も知らない頃に俺が思ったことだ。
人の考えなんて、すぐに変わってしまう。
俺もまだ人だ。考えも思いも変わってしまう。
それを誰が責められるだろうか。みんな一緒なのだ。
自分のことに精一杯で、人のことを気にしている暇なんてない。
俺だって、例外じゃないんだ。
俺は小さな二人が泣き止むのを、ただただ待っていた。
青すぎる晴天の下。俺達に新たな出会いが訪れる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

僕のおつかい

麻竹
ファンタジー
魔女が世界を統べる世界。 東の大地ウェストブレイ。赤の魔女のお膝元であるこの森に、足早に森を抜けようとする一人の少年の姿があった。 少年の名はマクレーンといって黒い髪に黒い瞳、腰まである髪を後ろで一つに束ねた少年は、真っ赤なマントのフードを目深に被り、明るいこの森を早く抜けようと必死だった。 彼は、母親から頼まれた『おつかい』を無事にやり遂げるべく、今まさに旅に出たばかりであった。 そして、その旅の途中で森で倒れていた人を助けたのだが・・・・・・。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※一話約1000文字前後に修正しました。 他サイト様にも投稿しています。

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界のおっさんフリー冒険者は固有スキル「傘を刺す」で最強無双だった

中七七三
ファンタジー
なんの恥ずかしげもないテンプレ展開。 超ブラック企業に務めるおっさん、サラリーマンはトッラク(以下略 んで、異世界に転生。 転生したのは、異世界有数の名門貴族。 そして、5歳になると「固有スキル」を与えられるのだ。 降臨の儀式で、天より魔具を授かり、それと一体となるこで「固有スキル」を発揮できる。 異世界に転生したおっさんも、儀式で魔具を授かる。 それは、彼を「異世界最強・無双」にするものだった。 余りに希少な能力に、周囲は騒然、盛り上がる。 しかし―― 「いらねーよこんな魔具(もん)!」 転生した元おっさんは、そんなものは要らなかった。 魔具も「異世界最強・無双」の固有スキルもいらない。 めざすのは、まったりゆっくりのスローライフだ。 しかし、付与された魔具と固有スキルはもう切り離せない。 「なにが、高貴なる物の義務だ。クソか! アホウか!」 彼は家を飛び出し気ままな冒険者生活に入った。 それも、楽ちんな採取専門のフリー冒険者。 冒険者ギルドにすら所属していない。 「Sランク? なにそれ。いいよ適当で……」 しかし、彼の「異世界最強・無双」の力は魅力的すぎた。 実家からは、彼の「すご腕の婚約者」たちが、追手として放たれた。 3人の美少女達―― 「もうね、彼の子をなせば、名門貴族の正妻確約なのよぉ!」 「あら、そう簡単にいくかしら?」 「愛してます…… 愛しています…… 愛しているのです……」 元おっさん、逃げ切れるのか? 気楽に、ゆったり生活できればそれで十分―― 元おっさんサラリーマンにして、転生フリー冒険者に安息の日はやってくるのか? (表紙は「英雄キャラクタージェネレータ|サクセス」様で作成したものです)

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...