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蒼乃の過去①
2、意外な素顔 その①
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香川は事務所で昼食を取る事が多いが週に一度だけ新鮮な空気を
味わうべく外出していた。この日は、GW前で人通りが少なかった
が赤レンガ風の建物へと向かっていた。新年会で酔っぱらっていた
蒼乃さんが体を預けながら耳元で情報をくれていた事を昨日、思い
出したのだ。何でも学生時代から通っている喫茶店との事。定休日
は知らないので今日、営業しているかは分からないが鉄面皮しか知
らなかった蒼乃さんが通い続けている店の中でなら素顔が見られる
気がして期待半分で向かっていた。
店前に付くとOPENの看板が出てたので軽快に店内へと入る香川。
「カランカラン……」
ドアに仕掛けられた呼び鈴が鳴り響くとマスターと思われる白髪
でオールバックの老人がパイプを咥えながら近づいてくる。
「お客さん。一人ですかい?」
「はい。そうですけど知人が通ってるって聞いたもんですから足を
運ばせて貰いました」
「へぇー。そうだったんですか。常連の顔と名前を全部覚えている
記憶力はありませんが念の為、聞いてみますが誰ですか?」
老人は、まるで値踏みするような視線で爪先からテッペンまでを
観察している。
「蒼乃って人です」
「あーぁ、あんた蒼ちゃんの知り合いかい。一番奥にあるトイレ側
のテーブル席が定位置だよ。お勧めのメニューは蒼ちゃんに直接聞
いておくれ」
そういうとマスターは奥へと消えて行った。
蒼乃さんが今日来てるかどうかも分からない状況の中、一人残さ
れた香川は唯一の手掛かりである定位置を目指す事にした。そこに
は紛れもない蒼乃が居た。しかも何かに夢中になっている事が分か
る。至近距離に居るにも関わらず、気付かれてない事に不思議に、
思う香川だった。事務所なら背後に立つ前に背中に目があるかの如
く俺の領域に入って来るなと叱られているからだった。服装を見る
と花柄が入った夏をイメージするアロハシャツに短パンの格好で、
首元にサングラスをブラ提げていた。私服なのかラフな格好を殆ど
観た事がない香川にとっては貴重な体験の始まりだった。
味わうべく外出していた。この日は、GW前で人通りが少なかった
が赤レンガ風の建物へと向かっていた。新年会で酔っぱらっていた
蒼乃さんが体を預けながら耳元で情報をくれていた事を昨日、思い
出したのだ。何でも学生時代から通っている喫茶店との事。定休日
は知らないので今日、営業しているかは分からないが鉄面皮しか知
らなかった蒼乃さんが通い続けている店の中でなら素顔が見られる
気がして期待半分で向かっていた。
店前に付くとOPENの看板が出てたので軽快に店内へと入る香川。
「カランカラン……」
ドアに仕掛けられた呼び鈴が鳴り響くとマスターと思われる白髪
でオールバックの老人がパイプを咥えながら近づいてくる。
「お客さん。一人ですかい?」
「はい。そうですけど知人が通ってるって聞いたもんですから足を
運ばせて貰いました」
「へぇー。そうだったんですか。常連の顔と名前を全部覚えている
記憶力はありませんが念の為、聞いてみますが誰ですか?」
老人は、まるで値踏みするような視線で爪先からテッペンまでを
観察している。
「蒼乃って人です」
「あーぁ、あんた蒼ちゃんの知り合いかい。一番奥にあるトイレ側
のテーブル席が定位置だよ。お勧めのメニューは蒼ちゃんに直接聞
いておくれ」
そういうとマスターは奥へと消えて行った。
蒼乃さんが今日来てるかどうかも分からない状況の中、一人残さ
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る。至近距離に居るにも関わらず、気付かれてない事に不思議に、
思う香川だった。事務所なら背後に立つ前に背中に目があるかの如
く俺の領域に入って来るなと叱られているからだった。服装を見る
と花柄が入った夏をイメージするアロハシャツに短パンの格好で、
首元にサングラスをブラ提げていた。私服なのかラフな格好を殆ど
観た事がない香川にとっては貴重な体験の始まりだった。
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