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捜査最終日
100. 十一日目(謹慎三日)、予期せぬ着信
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額に濡れたハンカチが当てられた状態で目を覚ますと現状を確認するべく、
上半身を起こした。どうやら公園のベンチの上で眠っていたらしい。ランチタ
イムなのか御弁当を持っているOLやサラリーマンの姿がチラホラ見受けられ
る。自宅から歩いて3分の場所だと分かると水飲み場へと移動して渇いた喉を
潤した。
「ここに来るまでの記憶が無い。電車に乗ったまでは覚えているのだが……」
記憶が無くなる程に山城の話は過激な内容であり、肉体的にも深刻なダメー
ジを与えていた事が分かる。現時点で記憶を辿るのは賢明ではないと結論に達
した所で携帯電話の着信音が響いた。
「テロンテロン、テロン」
自分が選択した着信音だと分かると携帯電話の画面を観て相手が誰なのかを
確認する。どうやら登録されている番号ではないが非通知でも無かったので、
電話に出る事にした後藤。
「もしもし、後藤君!?」
「はい。後藤ですが、どちら様でしょうか?」
「あっ名前言うの忘れてたね! 交通課の高橋だけど近くまで来たから、お昼
を一緒に食べないかと思って……」
「わざわざ、ランチの食事の誘いをする為に携帯番号を登録してくれたの?
でも外食はマズいかもだね」
「そうだね。こっちも謹慎中なのは分かっているからファーストフード店で、
ハンバーガーを二人分、お持ち帰りしてきたから、お邪魔でなかったら後藤君
の家で食べたいなーと思って……」
急に声が小さくなって変な間があったので心配する後藤。
「ダメかな?」
間を最大限に利用して甘えた口調で答えを急かす高橋。
「いや、全然ダメじゃないよ。でも部屋が散らかってるから10分だけ片付け
させてね」
憧れのマドンナと自宅でまったりとランチなんて好条件を突き付けられて、
断る理由は見当たらなかったが玄関でバッタリ鉢合わせは避けたかったので、
公園付近にあるケーキ屋さんの苺シュークリームを買って来て欲しいと頼んだ。
「甘い物には目が無いから、お薦めの品を購入してくるね! あっそうそう、
男の人って女性に見られたら不味いモノを隠す時間も必要なんだもんねっ」
高橋が甘い物好きなのは分かったがH関連の商品を隠す時間が必要だと電話
越しで話してくる天然ぶりに笑いを堪えなければならなかった。決して悪意が
ある訳ではないので電話を切った後に小走りで自宅へと戻った。夢中で走って
いたので途中、中年男性とぶつかりそうになった時に他人の闇の部分にむやみ
に足を踏み込んではならない事を学んで今後の教訓とした。真実を知りたいと
思う事で精神的にも肉体的にもボロボロになりつつあったが憧れのマドンナが
わざわざ足を運んでくれている事実に興奮状態を隠し切れず、度々スキップも
披露していた。
上半身を起こした。どうやら公園のベンチの上で眠っていたらしい。ランチタ
イムなのか御弁当を持っているOLやサラリーマンの姿がチラホラ見受けられ
る。自宅から歩いて3分の場所だと分かると水飲み場へと移動して渇いた喉を
潤した。
「ここに来るまでの記憶が無い。電車に乗ったまでは覚えているのだが……」
記憶が無くなる程に山城の話は過激な内容であり、肉体的にも深刻なダメー
ジを与えていた事が分かる。現時点で記憶を辿るのは賢明ではないと結論に達
した所で携帯電話の着信音が響いた。
「テロンテロン、テロン」
自分が選択した着信音だと分かると携帯電話の画面を観て相手が誰なのかを
確認する。どうやら登録されている番号ではないが非通知でも無かったので、
電話に出る事にした後藤。
「もしもし、後藤君!?」
「はい。後藤ですが、どちら様でしょうか?」
「あっ名前言うの忘れてたね! 交通課の高橋だけど近くまで来たから、お昼
を一緒に食べないかと思って……」
「わざわざ、ランチの食事の誘いをする為に携帯番号を登録してくれたの?
でも外食はマズいかもだね」
「そうだね。こっちも謹慎中なのは分かっているからファーストフード店で、
ハンバーガーを二人分、お持ち帰りしてきたから、お邪魔でなかったら後藤君
の家で食べたいなーと思って……」
急に声が小さくなって変な間があったので心配する後藤。
「ダメかな?」
間を最大限に利用して甘えた口調で答えを急かす高橋。
「いや、全然ダメじゃないよ。でも部屋が散らかってるから10分だけ片付け
させてね」
憧れのマドンナと自宅でまったりとランチなんて好条件を突き付けられて、
断る理由は見当たらなかったが玄関でバッタリ鉢合わせは避けたかったので、
公園付近にあるケーキ屋さんの苺シュークリームを買って来て欲しいと頼んだ。
「甘い物には目が無いから、お薦めの品を購入してくるね! あっそうそう、
男の人って女性に見られたら不味いモノを隠す時間も必要なんだもんねっ」
高橋が甘い物好きなのは分かったがH関連の商品を隠す時間が必要だと電話
越しで話してくる天然ぶりに笑いを堪えなければならなかった。決して悪意が
ある訳ではないので電話を切った後に小走りで自宅へと戻った。夢中で走って
いたので途中、中年男性とぶつかりそうになった時に他人の闇の部分にむやみ
に足を踏み込んではならない事を学んで今後の教訓とした。真実を知りたいと
思う事で精神的にも肉体的にもボロボロになりつつあったが憧れのマドンナが
わざわざ足を運んでくれている事実に興奮状態を隠し切れず、度々スキップも
披露していた。
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