75 / 136
捜査最終日
75. 十一日目(謹慎三日)、サユリ宅にて⑩ 恩田の願望2 (改)
しおりを挟む
深夜2時を15分過ぎた所で恩田は胸の谷間から顔を上げて唐突
に口を開いた。
「サユリの自慰行為が見たいっ」
「嘘でしょ!? 彼氏にしか見せないって決めてるんだけど……」
「そこを何とか頼む。人助けだと思って」
顔の正面で手を合わせ、お願いポーズを取って説得に掛かる恩田。
「必死に頼まれても困るよ。何でもお願いを叶えるとは約束してな
いし……」
「どうしてもダメか?」
「うん。気乗りしない」
「分かった。じゃぁ、今からビアンカに頼むよ」
「普通。今、それを言うかな~」
サユリが勤めるキャバクラ店でNo1を争うライバルの名が恩田
の口から出たので機嫌が悪くなって鋭い目付きになる。
「売上げを争ってるのは聞いてるから俺が大量にボトル入れるって
言ったら喜んで見せてくれるだろうな!」
「流石に、その発言はデリカシー無さ過ぎでしょう」
「デリカシーがあったら、極道の世界に入ってないよ。お前が見せ
てくれないんだから他の人に頼むしかないだろ?」
「どうして、よりに寄ってビアンカを指名するの? 酷いじゃん」
瞳から涙が溢れて頬を伝って鎖骨にポタポタと零れ落ちる。
「嫉妬心を煽る行為は本人の決心を鈍らせるからな。俺の十八番で
もあるが、このタイミングでの発動は混乱させただけだったな」
「……」
返事も出来ない位に気持ちが沈んでいるサユリを目の前にして、
やり過ぎた事を反省したのも束の間、恩田は次の一手に出た。
「本当に見たいから頼んでいるんだが無理なら、お前の担当は蒼乃
さんに代わって貰う。No2でキッチリと仕事をする人だ」
「蒼乃さんだけには担当になって欲しくない」
「どうして?」
「冗談が通じないし、鞭しかない人でしょ!?」
「あぁ、俺は飴と鞭を上手く使い分けるし冗談も通じるし女性には
優しい面もある」
「融通が利かないって話も聞いた事あるの」
「確かに時間厳守、約束は破らない、返済期限は一日も遅れないを
モットーに生きて来た人だから柔軟な対応というのは一切ないし、
ウチの組は金貸し、ケツ持ちで収入を得てる訳だが直系の巨大派閥
の組でさえ、蒼乃さんがケツ持ちの店でのトラブルは起こさないし
関わらないようにお達しが出てるそうだ」
「それは単純に強いって事だよね?」
「ハンパなく強いよ。まともに闘える奴は現存する組には居ない。
引き分けレベルなら西新宿の怪物と呼ばれてる元刑事がいる」
「蒼乃さんって女性に暴力を振るうタイプですか?」
不安げな表情で敬語になるサユリ。
「本当の事は分からないが顔を狙う事は無いと思う」
「顔以外の目立たない部分には暴力も厭わないって事なの!?」
「あくまでも女性に対しての俺の推測の範囲内だ」
「返済が滞りなく終える人が闇金に手を出す訳ないのに……」
「確かに正論だな。利息で儲けてるのは間違いない。元金が一切減
らない債権者も沢山見てきた」
「具体的にどういう回収をするか知ってるの?」
「回収作業に同行した事は一度も無いから、どういうやり方なのか
は又聞きになるんだが”待って下さい”は禁句らしい。本人が払えな
い場合は両親や親戚、昔の恋人までも訪問して当日回収するのが、
やり方らしい」
「そんな事されたら、恥ずかしくて生きて行かれないよ、私」
「普通は、そうだろうな。悪い事は言わない。俺の気が変わらない
内に決断しろ」
「ビアンカに売り上げが入るのは嫌だし、蒼乃さんに担当になって
貰うのは最悪だから……」
「だから?」
「いつもしてるバージョンだけの条件なら見せても良い」
「そうか。それは嬉しいな。本当は実際に見てから判断したい所だ
が、さっき泣かせた負い目もあるし、まぁ良しとするかっ。個人的
な意見だが蒼乃さんは回収作業には向いてないと思う。人手が足り
ない時、もしくは払う気の無い人が対象だから3人を超えない程度
と本人から言われているんだ」
「回収率100%を誇る恩田さんが向いてない人を紹介するって、
ヒドクない?」
「自己の欲求を満たす為なら手段は選ばない。”時に非常であれ”と
いう言葉も好きでね」
「それじゃあ、完全に嵌められてるじゃん」
恩田の肩の辺りにグーに握られた手でポカポカと叩く動作を繰り
返すサユリがいた。
に口を開いた。
「サユリの自慰行為が見たいっ」
「嘘でしょ!? 彼氏にしか見せないって決めてるんだけど……」
「そこを何とか頼む。人助けだと思って」
顔の正面で手を合わせ、お願いポーズを取って説得に掛かる恩田。
「必死に頼まれても困るよ。何でもお願いを叶えるとは約束してな
いし……」
「どうしてもダメか?」
「うん。気乗りしない」
「分かった。じゃぁ、今からビアンカに頼むよ」
「普通。今、それを言うかな~」
サユリが勤めるキャバクラ店でNo1を争うライバルの名が恩田
の口から出たので機嫌が悪くなって鋭い目付きになる。
「売上げを争ってるのは聞いてるから俺が大量にボトル入れるって
言ったら喜んで見せてくれるだろうな!」
「流石に、その発言はデリカシー無さ過ぎでしょう」
「デリカシーがあったら、極道の世界に入ってないよ。お前が見せ
てくれないんだから他の人に頼むしかないだろ?」
「どうして、よりに寄ってビアンカを指名するの? 酷いじゃん」
瞳から涙が溢れて頬を伝って鎖骨にポタポタと零れ落ちる。
「嫉妬心を煽る行為は本人の決心を鈍らせるからな。俺の十八番で
もあるが、このタイミングでの発動は混乱させただけだったな」
「……」
返事も出来ない位に気持ちが沈んでいるサユリを目の前にして、
やり過ぎた事を反省したのも束の間、恩田は次の一手に出た。
「本当に見たいから頼んでいるんだが無理なら、お前の担当は蒼乃
さんに代わって貰う。No2でキッチリと仕事をする人だ」
「蒼乃さんだけには担当になって欲しくない」
「どうして?」
「冗談が通じないし、鞭しかない人でしょ!?」
「あぁ、俺は飴と鞭を上手く使い分けるし冗談も通じるし女性には
優しい面もある」
「融通が利かないって話も聞いた事あるの」
「確かに時間厳守、約束は破らない、返済期限は一日も遅れないを
モットーに生きて来た人だから柔軟な対応というのは一切ないし、
ウチの組は金貸し、ケツ持ちで収入を得てる訳だが直系の巨大派閥
の組でさえ、蒼乃さんがケツ持ちの店でのトラブルは起こさないし
関わらないようにお達しが出てるそうだ」
「それは単純に強いって事だよね?」
「ハンパなく強いよ。まともに闘える奴は現存する組には居ない。
引き分けレベルなら西新宿の怪物と呼ばれてる元刑事がいる」
「蒼乃さんって女性に暴力を振るうタイプですか?」
不安げな表情で敬語になるサユリ。
「本当の事は分からないが顔を狙う事は無いと思う」
「顔以外の目立たない部分には暴力も厭わないって事なの!?」
「あくまでも女性に対しての俺の推測の範囲内だ」
「返済が滞りなく終える人が闇金に手を出す訳ないのに……」
「確かに正論だな。利息で儲けてるのは間違いない。元金が一切減
らない債権者も沢山見てきた」
「具体的にどういう回収をするか知ってるの?」
「回収作業に同行した事は一度も無いから、どういうやり方なのか
は又聞きになるんだが”待って下さい”は禁句らしい。本人が払えな
い場合は両親や親戚、昔の恋人までも訪問して当日回収するのが、
やり方らしい」
「そんな事されたら、恥ずかしくて生きて行かれないよ、私」
「普通は、そうだろうな。悪い事は言わない。俺の気が変わらない
内に決断しろ」
「ビアンカに売り上げが入るのは嫌だし、蒼乃さんに担当になって
貰うのは最悪だから……」
「だから?」
「いつもしてるバージョンだけの条件なら見せても良い」
「そうか。それは嬉しいな。本当は実際に見てから判断したい所だ
が、さっき泣かせた負い目もあるし、まぁ良しとするかっ。個人的
な意見だが蒼乃さんは回収作業には向いてないと思う。人手が足り
ない時、もしくは払う気の無い人が対象だから3人を超えない程度
と本人から言われているんだ」
「回収率100%を誇る恩田さんが向いてない人を紹介するって、
ヒドクない?」
「自己の欲求を満たす為なら手段は選ばない。”時に非常であれ”と
いう言葉も好きでね」
「それじゃあ、完全に嵌められてるじゃん」
恩田の肩の辺りにグーに握られた手でポカポカと叩く動作を繰り
返すサユリがいた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる