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捜査最終日
73. 十一日目(謹慎三日)、ビデオ確認の結果②
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起き上がれるくらいに精神がある程度、落ち着いたと感じた後藤は喉の渇き
を覚えて立ち上がるとコップに冷蔵庫に入っている天然水を並々と注いでから
ゴクゴクと喉を鳴らしながら半分まで飲み干して行くと足元に何かを踏んでい
る感触が伝わってきたので一旦飲むのを止めて確認作業に入る。足を退けると
最後の鍵で入手した一冊の卒業アルバムである事が分かった。
「何でこんな所に在るんだ……? そうか、俺が半狂乱している時に無意識に
放り投げたり、蹴っ飛ばしたりしていたかもしれないな。あの時は普通では、
無かった気がする」
青春時代を閉じ込めた大切な卒業アルバムの中身が無事な事を確認して最後
のページを捲ると無地の白いシールの上部が剥がれており、メモ用紙が挟まれ
て居る事に気が付いた。新たな手掛かりかもしれないと思い、手に取って内容
を確認すると「リストバンドに隠された真実を暴け!」と書かれており、その
文字を見た瞬間に東病院で治療している隆を思い出した。
「確か黒のリストバンドを装着していたな」
お洒落なんかではなく、何かの痕跡を隠すために身につけられた物と考える
方が、しっくりとくるような言葉の響きだっただけに何が隠されているのか気
になって仕方がなかったが明確な答えは弱り切った後藤の頭には浮かんで来る
気配は無かった。
時刻を確認すると深夜2時を過ぎていた。約一時間位、不安定な精神状態だ
った事を確認するとある程度の睡眠を確保するべくベッドの中に入って寝よう
とするが他の事を思い出したりして中々、眠りに着く事が出来なかった。俺が
吐いた”例のビデオ”の中で黒沢警部が最後の方に放った二つの意味を持つ言葉
が頭から離れなかったのもあった。
(今日はこの位で勘弁してやるよ。次に会ったらキッチリとトドメ刺すからな。
俺様は、お前が助けを呼ぼうとした警察だよ。アイツの事は、大嫌いになった
けど大好きでもあったんだよ。死なんて望んでいなかったんだ……)
キッチリとトドメ刺す=命を奪う事も厭わない意味なのか? それは本人に
聞かなければ、はっきりとした答えとはならなかったが何と言って切り出すの
かを思い付く事は出来なかった。過去の未解決事件を引っ張り出しておいて協
力して貰っていた手前、相手の裏の顔が分かったからと言って本人の口から面
と向かって聞く勇気は持てなかった。同僚ならば話は違っていたかもしれない
が上司と部下の関係で階級が上で身分も違いすぎるし優秀な刑事としての自覚
もない劣等感の塊でもあった後藤は出口の見えない迷路に入り込んだ心境に陥
っていた。もう一度、あの台詞の続きを思い出すと、そういう思考状態に陥る
程の出来事があの日に起きてしまった事を意味している事が分かり、ベッドか
ら跳ね起き、録画映像のタイトルの隅に書かれた日付を確認すると木島課長の
命日であった事が分かった。
(成程、異常にむしゃくしゃしていた時であり暴行の相手は誰でも良かったっ
て事か……)
死なずに済んだホームレスの男(虻沼)の生命力も普通では無かった事を意
味したがホームレス時代に人望があったのかもしれない。両足を失ってもなお、
PTSD(心的外傷後ストレス障害)にならずに元凶を作った本人と堂々と接
触を図っている事に気味の悪さを覚えていた。到底真似する事が出来ない執念
に憑りつかれたバケモノにも映っていた。あのラストシーンを頭の中で再生す
る事を必死に拒んでから小林の眠れない時のアドバイスを思い出していた。
を覚えて立ち上がるとコップに冷蔵庫に入っている天然水を並々と注いでから
ゴクゴクと喉を鳴らしながら半分まで飲み干して行くと足元に何かを踏んでい
る感触が伝わってきたので一旦飲むのを止めて確認作業に入る。足を退けると
最後の鍵で入手した一冊の卒業アルバムである事が分かった。
「何でこんな所に在るんだ……? そうか、俺が半狂乱している時に無意識に
放り投げたり、蹴っ飛ばしたりしていたかもしれないな。あの時は普通では、
無かった気がする」
青春時代を閉じ込めた大切な卒業アルバムの中身が無事な事を確認して最後
のページを捲ると無地の白いシールの上部が剥がれており、メモ用紙が挟まれ
て居る事に気が付いた。新たな手掛かりかもしれないと思い、手に取って内容
を確認すると「リストバンドに隠された真実を暴け!」と書かれており、その
文字を見た瞬間に東病院で治療している隆を思い出した。
「確か黒のリストバンドを装着していたな」
お洒落なんかではなく、何かの痕跡を隠すために身につけられた物と考える
方が、しっくりとくるような言葉の響きだっただけに何が隠されているのか気
になって仕方がなかったが明確な答えは弱り切った後藤の頭には浮かんで来る
気配は無かった。
時刻を確認すると深夜2時を過ぎていた。約一時間位、不安定な精神状態だ
った事を確認するとある程度の睡眠を確保するべくベッドの中に入って寝よう
とするが他の事を思い出したりして中々、眠りに着く事が出来なかった。俺が
吐いた”例のビデオ”の中で黒沢警部が最後の方に放った二つの意味を持つ言葉
が頭から離れなかったのもあった。
(今日はこの位で勘弁してやるよ。次に会ったらキッチリとトドメ刺すからな。
俺様は、お前が助けを呼ぼうとした警察だよ。アイツの事は、大嫌いになった
けど大好きでもあったんだよ。死なんて望んでいなかったんだ……)
キッチリとトドメ刺す=命を奪う事も厭わない意味なのか? それは本人に
聞かなければ、はっきりとした答えとはならなかったが何と言って切り出すの
かを思い付く事は出来なかった。過去の未解決事件を引っ張り出しておいて協
力して貰っていた手前、相手の裏の顔が分かったからと言って本人の口から面
と向かって聞く勇気は持てなかった。同僚ならば話は違っていたかもしれない
が上司と部下の関係で階級が上で身分も違いすぎるし優秀な刑事としての自覚
もない劣等感の塊でもあった後藤は出口の見えない迷路に入り込んだ心境に陥
っていた。もう一度、あの台詞の続きを思い出すと、そういう思考状態に陥る
程の出来事があの日に起きてしまった事を意味している事が分かり、ベッドか
ら跳ね起き、録画映像のタイトルの隅に書かれた日付を確認すると木島課長の
命日であった事が分かった。
(成程、異常にむしゃくしゃしていた時であり暴行の相手は誰でも良かったっ
て事か……)
死なずに済んだホームレスの男(虻沼)の生命力も普通では無かった事を意
味したがホームレス時代に人望があったのかもしれない。両足を失ってもなお、
PTSD(心的外傷後ストレス障害)にならずに元凶を作った本人と堂々と接
触を図っている事に気味の悪さを覚えていた。到底真似する事が出来ない執念
に憑りつかれたバケモノにも映っていた。あのラストシーンを頭の中で再生す
る事を必死に拒んでから小林の眠れない時のアドバイスを思い出していた。
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