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捜査最終日

66. 十一日目(謹慎三日)、サユリ宅にて③ 恩田の過去Ⅰ

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 サユリが恩田のイチモツに触れようとした所で恩田は表情を曇ら
せながら右手を挙げて中断のサインを送った。
「気分が高まってる所、悪いんだが回復にしばらく時間が掛かりそ
うだ。先にシャワーを浴びてリラックスしてて欲しい」
「私を相手に初回から負けない攻防をすれば無理もないかっ。良い
よ。待ってあげる。回復したら教えてね!」
「あぁ、約束する」
 恩田は手を振ってサユリを見送るとそのまま寝落ちしていた。

「おいっ和哉かずや、”お荷物”はどうした?」
 兄貴分の男が恩田に質問を投げ掛ける。
「あぁー。例の彼女さんとシケこんでると思いますけど……」
「恩田、お前は一番下っ端だから、この世界のルールってもんが、
よく分かってないと思うが歌舞伎町を支配してる今のかしらは優しか
ねぁぞっ」
「3回も手出ししてたら、やっぱ半殺しっすかね?」
「仏の顔も三度までを信条にする腕っぷしが自慢の人だから、半殺
しで済めば良いがな。良いか良く聞けよ。俺は一切、ノータッチだ」
 組長であるパンチパーマを当てた藤原は恩田和哉にそう言い切る
と新聞紙を傍らに15分前に当事者である槇野が組員に捕まった情
報を得ており、事務所に連れ戻してトップである法海候がこちらに
て制裁を加える話を幹部から聞かされていた。

「藤原組長、只今、戻りました」
「槇野さんよ。俺を含め何回も頭の女に手を出すなって忠告してた
よな?」
「事が起こらないって事は何人も要るから良いのかななんて勘違い
しちゃいまして。美人でスタイルも良くて品があって、それにあっ
ちの方もご機嫌でして辞めるに辞められない状態でして」
「そうか。こんだけ言ってもダメなんだから、そりゃ他所の組で、
破門されてウチに来るしかなくなったって訳だ。そんなお前さんが
拾ってやった恩を仇で返すような真似して俺は辟易へきえきしてるんだ」
「辟易って何ですか? もっと判りやすい言葉で説明して下さいよ」
「難しいか? そりゃ悪かったな。ひどく迷惑して、うんざりする
って意味だよ。さっき幹部から連絡が入って、ここから先は、俺の
管轄を外れる事になった」
「えっ? どうなるんです俺。藤原組長に断られたら他に行く所が
無いんですよ!!」
「管轄を外れた時点で俺の子分じゃなくなった。お前が野垂れ死に
しようが俺にはもう関係ない。もっと賢い奴かと思ってたけどな!」

 槇野がシドロモドロになっている所で事務所の玄関が開いてカン
フー道着に身を包み、辮髪の男が入ってきた。
「槇野って奴はお前か?」
「えっ。こちらの方は誰ですか!?」
 只ならぬ雰囲気を感じたので自己紹介を終える前に相手の素性を
聞く槇野だった。
「目の前にいる人が頭の法海候さんだ。言い訳は本人の前でしな」
 藤原はそれっきり、最初から二人がそこに居ないかのように新聞
に視線を落としてソファーに深く腰かけていた。
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