56 / 136
捜査開始
56. 十日目(謹慎二日)、動画映像に出てた謎の男の正体
しおりを挟む
再配達までに未だ時間があったので同期の小林の携帯電話に連絡する事に決
めた。今の所、他にやるべき事が見付からないので普通の人の声が聴きたかっ
たのが正直な心境だった。時刻は壁掛け時計で午前11時前を指していた。
6回目のコールで小林が電話に出ると時折、女性の喘ぎ声が聞こえる気がし
たが機嫌を損ねさせて相手にされないのを避ける為に何事も無いようなトーン
で会話するように心掛けた。
「後藤か。今、割と忙しいんだが急ぎの要件か?」
「嫌、急って訳じゃないんだが、腰を痛めたってメールに書いてあったから、
心配で具合を確認したくてさ」
「俺に嘘付いてどうすんだよ。例の映像を観たんだろ!? いつもの明るい声
が形無しになってるぞ。もうすぐフィニッシュだから、終わったら俺から電話
する。あんな映像見て、まともに仕事なんかしてられるかよ。痛み止めの注射
を打ってでもセフレと夢心地にならないと精神が保てないぜ」
最もな意見を言ったかと思うと通話は切られており、五分後、タバコを吸う
息遣いをさせながら小林から電話が掛かってきた。電話だけでは声の認識しか
行う事が出来ないから小林は電話機能を好んでいた。先程まではスクール水着
を着て貰ったコスチュームプレイであったが初恋の相手が小学時代の水泳部の
一年後輩だったのでビート版を嗅ぎながらの合わせ技でもあった。映像として
観られていたのなら、かなりドン引きだったに違いない。
「セフレはもう帰ったよ。だから気兼ねなく話せよ」
「あぁ、そうして貰えると助かる」
「お前は真面目過ぎる所があるから、観終わった後に吐いたんだろ?」
「あぁ、前夜に食べた残りカスも全部だ」
「どう思った?」
「警部はもちろんの事だが暴行を受け続けていた奴の目と表情がイッてる気が
したよ」
「そうか、そこまで感じたなら正直に話すが、あいつが虻沼だ!」
「な、何だって!? 黒沢警部の麻雀仲間として忍び込んでいるのか?」
「そういう事だ。映像を観たお前なら分かったと思うが虻沼の目や鼻までは、
映像に映っていない」
「いや、そうは言っても一年後の映像では頭の輪郭までバッチリ映ってるぜ」
「サユリの話が本当だとすると一年後は後から編集した特別版らしく動画検索
で出回っている種類の物ではなく個人向けらしいんだ」
「それなら余計にタチが悪いぜ!」
「俺は邪魔されたくないのかもしれないと考えるのが普通だと思うがな」
「つまり、戦意喪失を狙った作戦って事かっ」
「詳細は分からないが占い師のアケミなら、何か知ってるかもしれない」
「そう。実は、俺もアケミとコンタクトを取ろうと思っていた所なんだ。でも
住所を知る術が無くて小林に最後の頼みとして教えて貰おうと考えていたんだ」
「随分、大袈裟な最後の頼みだな。分かった。知ってる人数分の情報をお前に
渡す事を約するよ。FAXって送信できたか?」
「偶然なのか必然なのか分からないが今日の昼に使えるようになる」
「そうか。なら利用させて貰うよ。そうそう、あんまり根を詰めんなよ。どう
しても眠れない時は一発抜くに限るぜっ。ちなみに余談だがサユリ嬢を絶頂に
導いた体位は難度高めの”シャチホコ”だ。諸刃の剣なのが欠点だけどな」
「やっぱり、電話して良かったよ。気持ちが楽になった。助かったよ」
「堅苦しいのは無しにしようぜ。下らない話なら、いつでも付き合うぜ」
こういう、さり気ない気遣いと軽妙な下ネタを上手くチョイスするテクニッ
クが両性に受け入れられる気がして少し羨ましい気持ちになっていた。人は、
自分に無い物に憧れて、時に嫉妬する生き物だと改めて感じた後藤だった。
めた。今の所、他にやるべき事が見付からないので普通の人の声が聴きたかっ
たのが正直な心境だった。時刻は壁掛け時計で午前11時前を指していた。
6回目のコールで小林が電話に出ると時折、女性の喘ぎ声が聞こえる気がし
たが機嫌を損ねさせて相手にされないのを避ける為に何事も無いようなトーン
で会話するように心掛けた。
「後藤か。今、割と忙しいんだが急ぎの要件か?」
「嫌、急って訳じゃないんだが、腰を痛めたってメールに書いてあったから、
心配で具合を確認したくてさ」
「俺に嘘付いてどうすんだよ。例の映像を観たんだろ!? いつもの明るい声
が形無しになってるぞ。もうすぐフィニッシュだから、終わったら俺から電話
する。あんな映像見て、まともに仕事なんかしてられるかよ。痛み止めの注射
を打ってでもセフレと夢心地にならないと精神が保てないぜ」
最もな意見を言ったかと思うと通話は切られており、五分後、タバコを吸う
息遣いをさせながら小林から電話が掛かってきた。電話だけでは声の認識しか
行う事が出来ないから小林は電話機能を好んでいた。先程まではスクール水着
を着て貰ったコスチュームプレイであったが初恋の相手が小学時代の水泳部の
一年後輩だったのでビート版を嗅ぎながらの合わせ技でもあった。映像として
観られていたのなら、かなりドン引きだったに違いない。
「セフレはもう帰ったよ。だから気兼ねなく話せよ」
「あぁ、そうして貰えると助かる」
「お前は真面目過ぎる所があるから、観終わった後に吐いたんだろ?」
「あぁ、前夜に食べた残りカスも全部だ」
「どう思った?」
「警部はもちろんの事だが暴行を受け続けていた奴の目と表情がイッてる気が
したよ」
「そうか、そこまで感じたなら正直に話すが、あいつが虻沼だ!」
「な、何だって!? 黒沢警部の麻雀仲間として忍び込んでいるのか?」
「そういう事だ。映像を観たお前なら分かったと思うが虻沼の目や鼻までは、
映像に映っていない」
「いや、そうは言っても一年後の映像では頭の輪郭までバッチリ映ってるぜ」
「サユリの話が本当だとすると一年後は後から編集した特別版らしく動画検索
で出回っている種類の物ではなく個人向けらしいんだ」
「それなら余計にタチが悪いぜ!」
「俺は邪魔されたくないのかもしれないと考えるのが普通だと思うがな」
「つまり、戦意喪失を狙った作戦って事かっ」
「詳細は分からないが占い師のアケミなら、何か知ってるかもしれない」
「そう。実は、俺もアケミとコンタクトを取ろうと思っていた所なんだ。でも
住所を知る術が無くて小林に最後の頼みとして教えて貰おうと考えていたんだ」
「随分、大袈裟な最後の頼みだな。分かった。知ってる人数分の情報をお前に
渡す事を約するよ。FAXって送信できたか?」
「偶然なのか必然なのか分からないが今日の昼に使えるようになる」
「そうか。なら利用させて貰うよ。そうそう、あんまり根を詰めんなよ。どう
しても眠れない時は一発抜くに限るぜっ。ちなみに余談だがサユリ嬢を絶頂に
導いた体位は難度高めの”シャチホコ”だ。諸刃の剣なのが欠点だけどな」
「やっぱり、電話して良かったよ。気持ちが楽になった。助かったよ」
「堅苦しいのは無しにしようぜ。下らない話なら、いつでも付き合うぜ」
こういう、さり気ない気遣いと軽妙な下ネタを上手くチョイスするテクニッ
クが両性に受け入れられる気がして少し羨ましい気持ちになっていた。人は、
自分に無い物に憧れて、時に嫉妬する生き物だと改めて感じた後藤だった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
僕が見た怪物たち1997-2018
サトウ・レン
ホラー
初めて先生と会ったのは、1997年の秋頃のことで、僕は田舎の寂れた村に住む少年だった。
怪物を探す先生と、行動を共にしてきた僕が見てきた世界はどこまでも――。
※作品内の一部エピソードは元々「死を招く写真の話」「或るホラー作家の死」「二流には分からない」として他のサイトに載せていたものを、大幅にリライトしたものになります。
〈参考〉
「廃屋等の取り壊しに係る積極的な行政の関与」
https://www.soumu.go.jp/jitidai/image/pdf/2-160-16hann.pdf
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
これ友達から聞いた話なんだけど──
家紋武範
ホラー
オムニバスホラー短編集です。ゾッとする話、意味怖、人怖などの詰め合わせ。
読みやすいように千文字以下を目指しておりますが、たまに長いのがあるかもしれません。
(*^^*)
タイトルは雰囲気です。誰かから聞いた話ではありません。私の作ったフィクションとなってます。たまにファンタジーものや、中世ものもあります。
女ハッカーのコードネームは @takashi
一宮 沙耶
大衆娯楽
男の子に、子宮と女性の生殖器を移植するとどうなるのか?
その後、かっこよく生きる女性ハッカーの物語です。
守護霊がよく喋るので、聞いてみてください。
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる