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捜査開始
25. 八日目、自宅作業(手帳の秘密Ⅱ)
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鍵が入手できた事で一歩前進した気持ちになり、もう一つのロール状の紙を広
げて中身を見てみる。端から端まで文字がびっしりと書かれている。おそらく、
暗号の類だろう。 その暗号を見た時に頭の中で一つの考えが浮かび上がった。
(待てよ。ひょっとしたら、目立たない部分に鍵の場所が記入してあるのかも知
れない)
再び、手帳を手に取り、常識を取り払って普段、目にしない背表紙の反対部分
を見詰めてみる。うっすらと文字らしき物が見えた。日焼けで茶色に変色してし
まっているので何と書いてあるのかまでは識別できない。
(昔、これと似た物を見たような気が……。何処で見たんだろう?)
思い出すことが出来ないので一旦手帳をテーブルの上に置いて喉飴専用瓶から
喉飴を取り出して、気分転換の為に口の中に入れる。ミントの香りが鼻から抜け
て、しばらく舐め続けていると濃厚なミルクの味が味覚を占領していく。心地良
い瞬間でもある。その時、記憶が中学生時代の授業風景に戻り、ある一日が再生
される。伸幸は社会の授業が苦手で退屈さを紛らわす為にノートに落書きをして
いた。それを見ていた隣の席の男子が先生にバレない方法があると教科書を使っ
て丁寧に、その技を披露して感心した場面で現実に戻ってくる。
「成程、この方法なら文字が浮かび上がる筈だ」
後藤は手帳にカバーを取り付けてから文字が書かれているであろう面を正面に
向け右側のカバー最上部に右親指を。最下部に左親指を当てて残りの指は背表紙
を押さえる。準備が完了した所で左側へ半分に折るように、力を入れると文字が
鮮明に浮かび上がった。背表紙をしっかりと押さえてアーチ状にするまで曲げれ
ば、はっきりと識別できる事を思い出していた。
「真実は一つしかない」
文字を口に出してみたが期待していたものでは無かった。それでも後藤は諦め
ずに逆側を試してみる。左側のカバー最上部に右親指を。最下部に左親指を当て
て残りの指は背表紙を押さえる。準備が完了した所で右側へ半分に折るように力
を入れると下側に全く別の文字が鮮明に浮かび上がる。そこには”新宿三丁目駅”
と書かれていた。
「地下鉄の駅に設置されているロッカーの鍵に違いない!!」
後藤は上着の内ポケットから自分の警察手帳を出して『丸の内線』と記入する。
思わず笑みが零れて左手で小さくガッツポーズをする。
壁掛け時計を見ると午後五時を過ぎていたのでコンビニへ夕食を買いに行く事
にする。キーケースの余っているリングにロッカーの鍵を装着するとテーブルの
上に置いてあるロール状の紙(暗号が書かれた)を木島課長の手帳のカバーの内
側に入れる。落ちない事を確認してから革靴の中敷の下に隠して部屋を後にする。
貴重品は常日頃から肌に身に付けて外出するように心掛けているので空き巣に
入られても困る事はない。幼少期に過ごした環境の影響であると思いながらも、
何ら悪い事ではないと自負していた。世の中はそんなに甘くないし盗まれた物が
無事に戻ってくるケースは稀である事は施設の生活で嫌という程、学んだ。
げて中身を見てみる。端から端まで文字がびっしりと書かれている。おそらく、
暗号の類だろう。 その暗号を見た時に頭の中で一つの考えが浮かび上がった。
(待てよ。ひょっとしたら、目立たない部分に鍵の場所が記入してあるのかも知
れない)
再び、手帳を手に取り、常識を取り払って普段、目にしない背表紙の反対部分
を見詰めてみる。うっすらと文字らしき物が見えた。日焼けで茶色に変色してし
まっているので何と書いてあるのかまでは識別できない。
(昔、これと似た物を見たような気が……。何処で見たんだろう?)
思い出すことが出来ないので一旦手帳をテーブルの上に置いて喉飴専用瓶から
喉飴を取り出して、気分転換の為に口の中に入れる。ミントの香りが鼻から抜け
て、しばらく舐め続けていると濃厚なミルクの味が味覚を占領していく。心地良
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される。伸幸は社会の授業が苦手で退屈さを紛らわす為にノートに落書きをして
いた。それを見ていた隣の席の男子が先生にバレない方法があると教科書を使っ
て丁寧に、その技を披露して感心した場面で現実に戻ってくる。
「成程、この方法なら文字が浮かび上がる筈だ」
後藤は手帳にカバーを取り付けてから文字が書かれているであろう面を正面に
向け右側のカバー最上部に右親指を。最下部に左親指を当てて残りの指は背表紙
を押さえる。準備が完了した所で左側へ半分に折るように、力を入れると文字が
鮮明に浮かび上がった。背表紙をしっかりと押さえてアーチ状にするまで曲げれ
ば、はっきりと識別できる事を思い出していた。
「真実は一つしかない」
文字を口に出してみたが期待していたものでは無かった。それでも後藤は諦め
ずに逆側を試してみる。左側のカバー最上部に右親指を。最下部に左親指を当て
て残りの指は背表紙を押さえる。準備が完了した所で右側へ半分に折るように力
を入れると下側に全く別の文字が鮮明に浮かび上がる。そこには”新宿三丁目駅”
と書かれていた。
「地下鉄の駅に設置されているロッカーの鍵に違いない!!」
後藤は上着の内ポケットから自分の警察手帳を出して『丸の内線』と記入する。
思わず笑みが零れて左手で小さくガッツポーズをする。
壁掛け時計を見ると午後五時を過ぎていたのでコンビニへ夕食を買いに行く事
にする。キーケースの余っているリングにロッカーの鍵を装着するとテーブルの
上に置いてあるロール状の紙(暗号が書かれた)を木島課長の手帳のカバーの内
側に入れる。落ちない事を確認してから革靴の中敷の下に隠して部屋を後にする。
貴重品は常日頃から肌に身に付けて外出するように心掛けているので空き巣に
入られても困る事はない。幼少期に過ごした環境の影響であると思いながらも、
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