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捜査開始

22. 八日目、取調室にて処分決定

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 後藤が捜査一課に着いて顔を出すと室内の空気がざわめき始める。それを察知
した黒沢が後藤の上着を抱えながら近づいて来て顎を外へ向けて場所移動を促す。
後藤は黒沢の後を追って先程の取調室に入った。二人の他には誰も居ない。
「何とか謹慎三日間で食い止めておいた」
「そうですか……」
 覚悟はしていたが実際に耳にすると想像以上に気持ちが沈んだ。

「何、お前は未だ若い。遅れは必ず取り戻せる」
「分かりました。俺みたいな新米の為に色々とありがとうございました」
「礼には及ばんさ。きっちりと取り立てるから問題ない」
 黒沢は口元を緩めて微笑みを浮かべていた。滅多に笑わない表情を目の当たり
にすると不気味さが全面に出ていて冗談なのか本気なのかを理解する事ができな
かった。黒沢の話には続きがあった。警察手帳と手錠を預かり、自宅謹慎との事
だった。

 署を出てから駅に乗り込むまでの間、考え事をしていて電柱に頭をぶつけてし
まう。右手で腫れ上がった額を押さえて近くの公園に寄ると急いで手洗い場に近
づいてハンカチに水を染み込ませて額に当てる。公園付近の道路で工事中の看板
が立てられていた事に初めて気付いて、はっとなったが作業中なのかマンホール
の蓋が開いたままになっていた。痛みが和らぐと思考が正常に戻っていくのを感
じ取っていた。改めて注意力が散漫になっている事が分かると移動中は事件の事
を考えないようにしないといけないという結論に達する。水道工事中の穴に現職
の警官が落ちたとあっては自分一人の不注意では済まないからだ。警察は面子を
潰される事を極端に嫌う。仮に落ちたなら新宿の街を歩く事は、できなくなるだ
ろう。

 平常心になった所で東病院に寄る事にする。自宅で缶詰になる前に箱庭を確か
めてみたかったのだ。腕時計を見ると午後二時半を過ぎていた。よく見ると右手
の痣が消えている事が分かったが、これといった感情は湧いて来なかった。残り
時間が限られているので、その事まで頭が回らないのが本当の所だった。

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