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エピローグ

一週間後 (3) (改)

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 黒沢の様子を柱の陰で観ていた法海候は視界から消えたのを確認
すると「俺の感がアイツがクロだと告げる」と呟いて必ず尻尾を掴
んでやると心に誓った。
「トルゥールール」
「はいっ」
「榊だ。状況はどうなってる?」
「未だ証拠は掴んでいませんが元極道に証拠は必要ありません。隙
が出た瞬間に自白させます」
「ほぅ。そいつは頼もしいな。しかし君のラーメンは私には食べら
れそうにないな」
「何を勘違いしてるんです。私は調理には一切関わっていないです
よ。舌には絶対の自信があるんで味を全て記憶する特技があります。
なので味の微調整は得意ですから口出しはしますがねっ」
「こいつは一本やられたな。悪魔のラーメンは無かったって事か!」
「当たり前です。流石に血で汚れすぎた手や返り血を浴びてる男に
仕込みは出来ませんよっ。そうそう、最後に一言だけ言わせて下さ
い」
「改まって何だ?」
「隆と後藤を連れ去った奴らを!」
 榊が電話を切ったのを確認すると通常業務である昼の出前の配達
をする為に西新宿署の玄関へと入った。


 同時刻、ミリタリーショップ中野店に入店してきた男が店長を確
認すると話し始めた。
「よっ店長。元気してたかい。俺だよ俺、虻沼だよ。ちょっと奥の
部屋で大人の話をしようじゃないかっ。俺に黙ってもう一人の依頼
人が居るんじゃあ困っちゃうな~」
「その話はここでは……」
「だから、奥の部屋を案内しろって言ってんだよ。タコっ!!」
「スイマセン。虻沼様、大声を出されると気が弱い従業員が不振に
思いますからっ」
「お前が俺を怒らせるような事したからだろうがっ」
「はいっそれについては言い返す言葉も見付かりません」
「ったり前だっつーの!」
 ロレツが回らなくなっているのか虻沼の口から酒臭い匂いが漂っ
てくる。流石にこのままではマズいので店の看板をcloseにして従業
員を帰らせる事にして対応した。
「まぁ、あんたを100%信用してなかったから良かったものの、
サージカルブレードの偽物を後藤巡査の目の前で、すり替えトリッ
クで渡すとは驚いたね!」
「ど、どうして、それを?」
「庭村とアンタが手を組んで仕掛けた罠だって事は分かってたよ。
この店に3個の盗聴器を仕掛けてたしな」
「そんな事してたんですか? 犯罪ですよっ!」
 素っ頓狂な声を上げる店長だが全く気にせず会話を続ける虻沼。
「何だよ。それなら偽物を売りつけるのは犯罪じゃないのかよ!」
「それは……」
「だろっ。叩けばホコリが出る身分だ。そこで俺は、すり替えする
偽物の商品を盗聴器入りのに、すり替えていたんだよ。だから後藤
ちゃんが可哀想だったんだぞ!!」
「で私は悪い刑事さんに売られるんでしょうか!?」
「あぁ、そんな事も話してたな。まぁ今日は新たな約束をしにきた
んだよ。盗聴器ばかりじゃコソコソし過ぎてお互い気持ち悪いだろ
う? 今後、庭村と話した内容を全てこっちに流せばチャラにして
やるよっ」
「ゴクリっそんな事して大丈夫でしょうか!?」
 額から汗を大量に流しながら本心が漏れた。
「バレなきゃ大丈夫だ。まぁアンタが裏切ったおかげで大金を手に
した男がいる訳だから、カモがネギを背負って来るけどなっ」
「……」
 虻沼は店長の肩を軽く2回叩いて店を出て行った。
(黒沢を麻雀漬けにさせた最初の上がり役が清一色(チンイツ)だ
ったな~。今回も狙ってくるだろうから最初と同様にお膳立てして
勝たせてやるかっ。未だ復讐する時じゃない。必ず法海候が俺に、
接触してくる筈だ。ぶつけなきゃな!)

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