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エピローグ

一週間後 (1)

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 勤務態度が真面目である後藤伸幸が三日連続で無断欠勤した事を
受けて携帯に連絡しても通じず。アパートへと出向いて大家に許可
を貰い全ての部屋を見るも痕跡は見当たらなかった。捜索するチー
ムを編成する動きもあったが黒沢は自業自得だと言って人員を割く
事に猛反対を唱えた。相棒である黒沢が行方を知らないと言ってい
る以上、捜査が難航するのは目に見えており、凶悪捜査を最優先す
る方向で落ち着いた。只、二人は不信感を覚えていた。同期の小林
と最後に会っていた交通課の高橋真悠子だ。高橋に関しては合鍵で
入室し、冷蔵庫の中に手付かずのハンバーガーが残っているのを目
撃したからだ。現場に出掛けた捜査員の調書によると冷蔵庫に本来
ある筈のチーズバーガーが無くなっており、しかもゴミ箱には一人
分の包装紙しか入っていないと書いてあった。つまり、誰かが部屋
に侵入して処分した事を意味している。この事により、高橋は署内
に内通者が居ると予想した。もちろん誰か分かるまでは迂闊に相談
する事も出来ないので胸の内にしまう事を決意していた。小林に関
しても実際に危険な匂いのする虻沼の動きも観察していたのでこの
事件とは距離を置きたいと思っていた。

 そして一週間後の9月29日の金曜の正午に黒沢警部宛てに謎の
小包が届いていた。差出人はと書かれており、受け取ったのは
小林だった。昼食から速攻で戻ってきた黒沢に小林は小包がある事
を告げると満面の笑顔で肩に手を回しながら問い質していた。
「小林、中を見たか?」
「黒沢警部、見る訳ないじゃないですかっ」
「そうか。なら良いんだ。パンドラの箱は開けない方が良いからな」
「それ、親父ギャグですか!?」
「そう、それだよ。ビビらせる為のギャグだよ。アハッハッ」
 機嫌良く去って行くと突然、小林の携帯電話がバイブレーション
を起こし電話が来た事が分かる。宛名を見ると法海候からだった。
恐る恐る電話に出ると「連絡もよこさずに、お前、早死にしたいの
か?」
「いえっ。滅相もございません。こちらに不手際があったのは認め
ます」
「俺は謝罪を聞きたい訳じゃない。隆に続いて後藤も失踪したそう
じゃないか? 捜査はしない方針だってのも耳に入ってるぞ。お前
の署は鬼なのか?」
 小林はと恐れられた人物に言われたくないと思いなが
らも自分への被害を最小限に抑える為、黒沢に恨みを持っている粘
着質の危険な匂いのする虻沼の情報を告げた。
「何だ。ちゃんと情報を持ってるんじゃないか。それなら、その男
の家の正確な地図を封筒に入れて来々軒の店主に渡しておいてくれ。
そこまですれば、お前は手を引けば良い。もう関わるなよ。こっか
ら先は裏家業を知り尽くした俺の仕事だ」
「分かりました。そこまでは責任持ってやらさせて貰いますっ!」
 電話越しでも説得力が感じられる凄みを感じて電話を切った。
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