黒庭 ~閉ざされた真実~

五十嵐 昌人

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捜査最終日

118. 十一日目(謹慎三日)、後藤の誘導尋問

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「事件を担当したのは黒沢警部で鑑識官に室木さんが関わっている事
が分かっています。東さんは庭村さんを御存知ですか?」
「随分と珍しい名前ですね。今は思い付きませんね。その庭村さんが
どうかしましたか?」
「この事件に関わっているとしたら室木さんが鑑識官として対応した
理由が明確になるんです」
「何をおっしゃりたいのか私にはさっぱり分かりません」
「分かりにくかったですね。三人は、同じ中学校の同級生である事が
恩師である山城先生の証言から分かっています!」
「それで?」
「室木さんの携帯電話の番号を貰って電話で話しました」
 室木の電話番号というキーワードが出た途端に瞬きの回数が増えた
のを見逃さなかった。今までの余裕の表情も少し陰りが見えてきてい
る位だ。
「で実際に連絡は取れましたか?」
「はい。電話が来る事を予想していたみたいで木島課長が自殺だとい
う事は間違いないという証言を頂いています。しかし、肝心の庭村の
顔写真が手に入らなくて特徴も分からず仕舞いです」
「室木さんに聞いたんだろ?」
「えぇ、でも恩人で仲間だから教える事はできないと拒否されました。
室木鑑識官は義理堅い人な気がしました」
「まぁ、そういう奴はクラスに一人は居るもんですけどね~」
「私が室木さんのフルネームを言ったと思いますが何と言ったか答え
て貰えますか?」
「後藤さん。私をバカにしないで下さいよ。改まって言わなくても、
それ位、簡単に言えますよ。室木真司でしょ!?」

「成程、やはり、あなたが庭村さんでしたか……」
「あぁ!? 何、アヤつけてんだよ。ふざけた事を言ってると只じゃ
おかねぇぞっ!!」
 東の表情が一気に赤面してドスの効いた怒鳴り声を上げる。
「難しい質問ですが変と言えば変です。私は会話中に室木または室木
でしか話していません。つまり私の会話を聞いた人なら正解は
室木けんじで答えなくてはいけないんです。でもあなたは昔から室木
真司としてインプットしていますから、けんじと言えば間違っている
認識になると思ったんでしょう」
 先程の表情とは一転して徐々に青冷めて冷静さを取り戻していく東。
「はっはっはっはっは。成程、こいつは一杯食わされたな。刑事お得
意の誘導尋問って奴か。確かに俺が”庭村”だよ! 真司まで辿り着い
てるなんて情報は黒沢からは貰ってなかったから動揺しちまったじゃ
ねぇかっ」
 後藤はこの時点で誘導尋問を仕掛けた事が果たして吉と出るか凶と
出るか気が気でなかった。

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