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捜査最終日

115. 十一日目(謹慎三日)、東の質問 

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「目が覚めたかな?」
 東は優しい声色で後藤に話し掛ける。
「こっここは?」
「私専用の特別な部屋だよ」
「あぁ、あの場所か……」
「それよりも首の痛みはどうだい?」
「鈍い痛みはあるがヒビが入っているかまでは分からない」
「心配なら後でレントゲンで見てみよう」
 後藤を気絶させる行為をしたとは微塵も感じさせない程の優しさに
違和感を覚えたが怒らせる事は得策ではないと感じて会話に付き合う。
「痛みが続くようならお願いします。それと隆兄さんは無事ですか?」
「あぁ、その点は心配ないよ。怪我しないように配慮してたしね。今
は風邪薬が効いてぐっすりと眠ってるよ」
(奴は嘘を付いている)
 後藤は隆の額を直接触ったので風邪薬を飲まなきゃならない程の熱
は感じられなかったのだ。

「後藤君。僕を凶暴な奴だと勘違いしているようだけど、それは誤解
だよ。だって君のズボンからはベレッタM92FSのエアガンが出てきた
んだよ。しかもサムライエッジ改ときたもんだ。バイオハザードで、
人気の拳銃だ。つまり、化物扱いされた訳だ」
「それには訳が……」
「どんな訳か知らないけど、まともな刑事がする事じゃないと思うが
ね!?」
「……」
 話に夢中になって現状を確認するのを忘れていた事に気付いて状況
を確認すると隆と同じ車椅子の上に座っており、両手、両足を縛られ
て身動き出来ない事が分かったが尻の左部分に硬い物質が感じられた
ので若干の余裕が出て来る。
「僕の荷物にも危険な物は入っていたかい?」
「確かに君の言う通り、ショルダーバッグには危険物は入っていなか
ったよ。しかしだね。話を戻すけれど安全装置を外したままにしてあ
るエアガンが如何に危険なのか君は全く分かっていない。至近距離で
顔面を撃てば失明も避けられないんだよ! そこを分かってくれない
と困るんだっ」
「???」
 東が何に対して怒っているのか訳が分からずに返事が出来ずにいる
後藤。
「済まない。つい口調が強くなってしまったね。そうそう、僕が攻撃
した時に前のめりに倒れて顔面から落ちる所を心配してたんだけど肩
を入れて着地した行動は賞賛に値するよっ」
「急に褒められるとは思わなかったが罵倒されるよりはマシだね!」
(要するに奴にとって顔が傷付くのがNGなんだな)
 尻の左部分に感じられる護身用の切り札は没収されていないので、
反撃のチャンスを伺う事に決めた後藤だった。

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