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第一章:始まりの世界 ”準備運動編” 

♯65.かけっこバトル⑰ ラスト勝負1 (改)

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「陸上部の期待の星で有名な陸城君が来てくれてうれし
いよ」
 ニヤニヤした顔で二人を出迎えるタカフミ。
「大山、本当は誰が来るか分かってたんだろ?」
 田崎は大山のニヤニヤ顔が気に入らないので、ぶっき
らぼうに話してイライラを募らせていた。

「まぁね! 田崎君と対戦すると決めた時点で、この展
開は予想していたよ」
「って事は俺はまんまと担ぎ出された訳だ。もちろん、
それが分かったからと言って負けるつもりはないけどな」
「そうだね。あきらかに手抜きをされて勝っても意味は
ないから本気で来てもらうのはありがたいよ」

「話が変わるが城ヶ崎はここに来てるのか?」
  牧村と陸城が同時に質問する。
「気になるの? この会場では未だ見かけてないけど、
さぁどうだろう。手を組んでる訳じゃないし協力してく
れた理由もさっぱり分からないだ」
 分からない時に外国人がジェスチャーをするように、
左右の手のひらを上にかざして困った仕草をする大山。

「まぁ、その件はいいや」
 タカフミがウソを言っていないと確信した牧村が追及
するのを止める。
「おい、お前ら、くっちゃべってるのは、その位にして
おけよ。残り時間一分を切ってるぞ!」
 哀川は、進行してる立花から、さいそくを受けて状況
を説明した。
「あぁ、一分もあれば十分だろ」
 足首を回しながら体をほぐし始める陸城。
「頼もしい限りだ」
 田崎は陸上モードに切り替わったハヤテを見て素直な
感想を述べた。
「……」
 哀川の言葉でタカフミは状況を理解して無言で去って
いき、堀部の肩に手を置いて「頼んだぞ」と耳元でささ
やいた。いよいよ決着の時が始まる。
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