上 下
153 / 281
第一章:始まりの世界 ”準備運動編” 

♯53.かけっこバトル⑤ 決着!?

しおりを挟む
 牧村が転ばずに田崎へとバトンを渡す事に成功する
と遅れを取り戻すかのように全速力でタカフミの後を
追った。この時、先程、表示されなかった牧村の前半
の100mのタイムが20秒7と表示されて平均より
も遅い事が分かり、ギャラリーから、ため息が漏れた。
「もっと速いかと思ったけど大丈夫か?」
 牧村は心無いヤジに対して申し訳ない気持ちで顔を
下に向けていたが陸上できたえた丈夫な足腰によって
タカフミとの差は、確実に縮まっており、追いつくの
も時間の問題だと思うような展開になっていた。

 タカフミが転べば逆転も十分に可能な事もあってか
ギャラリーの声援は田崎へと傾きつつあった。

 明らかな差がある展開は、あまりに退屈であるから
して声援が加熱してくれる事に対して嬉しさが込み上
げていたタカフミだった。その時の気のゆるみで足を
交差させてしまい左足首を引っ掛けて派手に転倒して
しまった。残り100mの地点での出来事だった。
 
 油断が招いた事とは言えタカフミはヒザを擦りむい
ていて砂を払い落として傷口と、にらめっこしており
中々、走らないでいた。その間に田崎が快調に飛ばし
てタカフミの横を通り過ぎて行った。あまりにあっけ
ない展開に「あぁ~」と落胆する声が会場全体に広が
った。田崎が先にゴールに着いた時点で牧村はガッツ
ポーズで喜びを爆発させていた。タカフミがゴールに
戻ってくるまで大山&哀川チームを応援していた人達
からは暗い空気が漂っていた。
 
しおりを挟む

処理中です...