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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

♯46.立花マイカの交渉③

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「良い返事だ。無断欠席した場合は師弟関係は無効にす
る事が絶対条件だ。誰かに暴行を受けた場合に休む時も
メールで良いから確実に知らせろ。俺が2倍にして病院
送りにして片付けて置く。しかし、基本は自分で対応し
ろ。これは外出時に常にお守りとして持っておけっ」
 清武はズボンのポケットから無造作に取り出した物を
立花の右の手の平の上に乗せると毎週、水木金の三日間。
朝の5時から一時間の早朝稽古けいこを告げた。
「こっこれは……」
催涙さいるいスプレーだ。男の急所を痛めつけるやり方を女性
にはお薦めしない主義なのもあるが武術に長けた者の中
には金的が通用しない相手も居る。空手と併用して相手
の動きを封じるのが目的だ。不用意に扱う代物では無い
がお前の身を守ってくれる事は間違いない。他にも興味
があれば道場の護身ごしんグッズの中から好きなのを貰ってい
くと良いさ。まぁ、俺には必要が無いけどなっ」
「はい。今度、じっくりと拝見させて貰います」
「そうしてくれ。一応、分かっているとは思うが俺に、
ロリコンの趣味はない」
「はい。存じ上げております」
 立花は清武より、先程の返事を待っていた時の感覚を
問われて実際には一分の出来事ではあった事を知らされ
て奇妙な感覚を体験した事を思い出していた。無音状態
が続く事によって時間の概念がない異世界に飛ばされた
様に感じられて気が遠くなりそうだったのだ。物思いに
ふけっている場合でないと気付いてからは今回の目的が
見事に達成された事を認識してズボンのポケットの中で
宮間に素早くブラインドメールを打って帰宅をうながした
のだった。  

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