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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

93.超能力!?対決 後半戦①

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 運動場の一角に建てられている置き時計の針が12時
40分を指している事を確認した哀川が視線を特設ステ
ージに戻すと三人目が現れていた事が分かる。
「柔道部のあかねさんが来たけど合ってる?」
「えぇ、リストに入ってるわ。どうして彼女だけ”さん付
け”なの?」
「早生まれだし、俺より身長が高いからさ」
「なるほど、確か160cm超えてたわよね」
「それ位はあるな。近くに来たら結構ビビるぜ」
「無駄話は、それ位にして……」
「分かってるよ。俺は未だ勝負を諦めた訳じゃない」
 数秒後、お団子ヘアーをした柔道部のあかねがポスト
手前に来たので合図をした。

(大量のいちごの柄が入ってる下着だ)
 哀川は女子柔道部で筋トレ好きとしても有名だった人
物のこのチョイスは想像できなかったのでOKサインを
出すタイミングが微妙びみょうに遅れた。博士は同じスピードで
書き写しているつもりだったが大好物の苺が出てきた事
でクオリティーを意識し過ぎてツブツブを多く書いてし
まう。博士の手が大事な柄の中心を常に動いているので
全体像が見えてこないあせりからタカフミは両脇から汗が
染み出てしまっている事に気付いた。ようやく博士から
のOKサインが出た所で哀川が先程とは異なる早いタイ
ミングで双眼鏡から目を離してしまった。柄を覚える事
に集中していたタカフミはその変化に気付く訳もなく、
立花からの丸めた紙クズが当たってからの反応となった。

 イレギュラー(不規則)も予想して事前に練習してい
た筈なのだが焦りから窓際の直ぐ近くの照明のスイッチ
を最後に消してしまった為、哀川の視界に不自然な明滅めいめつ
が入った。

 哀川は教室の照明が全て消される前に素早く天井を見
上げて超小型カメラの存在を確認した。
「何だ。そういう事かよっ」
「何がそういう事なのかは私には分からないけど、三番
目に見えた柄を言って貰えるかな。大山クン」
きわどかったけど沢山たくさんの苺柄とみた」
「正解だが、やっと、ほころびを見つけたぜ!」
 哀川の目が自信を覗かせる程にギラついている事で、
背筋に寒気さむけを感じる三人だった。


*明滅=光が 明るくなったり暗くなったりすること
、明かりがついたり、消えたりすること。
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